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つぼみの花
まどろみの中の誘惑
たまに胸が急に苦しくなって、動悸も激しく、息ができなくなる。


そう言うと、何かの病気による発作かもしれない!と母さんが騒ぎ立てて、並盛病院に来た。

正直病院は苦手だ。(得意な人はいないと思うけど…)
過去何回とリボーンたちのせいでいろんな怪我を負い、世話になったことは数知れず。
時には雲雀さんの餌食になったりと兎にも角にも、良い思い出というものがない。

俺は大きなため息をつきながら、待合室で週間雑誌をペラリと捲った。
いつも混みあっているはずのこの空間は、今日は珍しく人気がない。
"他の病気を貰ってこないように"と無理やり母さんにつけられたマスクをずらし、息苦しさからやっと解放された。
アルコールの匂いが混じった空気が肺に取り込まれる。


「沢田さーん!沢田綱吉さーん!!」

扉の向こうからどこかで聞いたことのある声が響いた。
俺は自分の記憶からその"誰か"を探り出そうとしたが、靄がかかったように思い出そうにも上手く思い出せない。

もう一度名前を呼ばれたので、慌てて雑誌を元の場所に押し戻し、返事をして立ち上がった。

ひんやりとしたドアノブを捻り、手前に引くと一層アルコールの匂いが強くなった部屋へと身を乗り出した。

「では、荷物はそこのカゴに入れてくださーい!」

甲高い声、揺れる黒いポニーテール。
そう、その看護師は俺のよく知る人物だった。

「ハル…!?こんなとこで何やってんだよ!?」

「はひ?ハルはこの病院のナースさんですよ!いて当たり前じゃないですかぁ!!」

さぁさぁ、座ってください!
そう言って無理やり座らされると、鞄を奪われた。

「せんせーい!診察、お願いしまぁーす!!」

何が何だか理解ができない。
俺は頭の上にクエッションマークをたくさん浮かべていると、先程から背を向けていた医者が急に振り返った。

「じゃあ、診察するのなー」

「やっ、山本!?」

何の悪い冗談なのか。
野球一筋のはずの山本が何故かバットではなく、聴診器を手に取っている。(でも部屋のあちこちには野球選手のフィギュアだったり、ボールが飾られている)

「どこが悪いんだ、ツナ?」

うん、これは夢だ。
夢に違いない。

必死になって頬を抓ったり、手の甲に爪をたててみたけど、一向に夢から覚める雰囲気はない。

「おーい、ツナ?大丈夫か??」

…どうやら俺はこの夢の中の"寸劇"に付き合わなければならないらしい。
どうしてこうも、現実でも夢の中でも何かにつけて巻き込まれる運命なのだろうか。


「あ、いや、うん。大丈夫、もう元気になったから…!!」

とりあえずこの場を逃げ出したい一心で、急いで椅子から立ち上がったが、急に肩を抑えつけられて再び座り付けられた。
驚いて振り返ると、そこには…白衣の天使がいた。

「ダメだよっツナくん!具合が悪いなら、先生に診てもらわきゃ!!」

心配そうに眉を顰め、俺を叱りつけるのは他でもない、京子ちゃんだ。
ナース服、すっごく似合ってる!!…って何考えてるんだっ俺!!

結局、山本の何だかよく分からない問診に付き合わされ、最終的に彼は首を傾げた。

「んー、原因イマイチよく分からねぇし、とりあえず検査でもしとくかー」

なんて適当な…!!
そう思ったけど、山本らしいと言えば山本らしい。
俺はガックリ肩を落とし、その指示に従った。


「10代目!まずはレントゲン撮りますねー!!」

レントゲンと言い張る獄寺くんはが持つ物は、どう見てもデジタルカメラで、"俺がじっくり原因を探りますからね!"とデカデカと拡大印刷した俺のレントゲン図(という名のただの写真)を額縁に飾り始めた。


その後の検査については省略させてもらう。(思い出すだけでも疲れるような内容の検査とだけ言っておく)

最後の一つだと言われた検査は触診らしい。
俺は真っ白なシーツの敷かれたベッドの上に転がされ、待っているように言われた。
辺りを見回すと、この部屋だけが他の部屋と違って小ざっぱりとしてあまり物が置かれていない。
淡い水色のカーテンだけが、風で揺れていた。

(あ、眠たくなってきたかも…)

夢の中でも眠くなるという感覚は不思議である。
瞼がとろんと重くなり、意識を手放そうとした時だ。

「お待たせ、綱吉。これから最後の検査をするわね」

そう、この声は俺が一番待ち望んでいた声。
愛しい人の声。

俺は思い瞼をそっと開けると、飛び込んできたモノに思わず眠気なんてぶっ飛んだ。
もう、シェベルカーが全速力で俺の脳天に突っ込んできたような衝撃である。

「マヒロっっ!!??」

「…何?」

彼女が身にまとっていたのは、シーツと同じくらい真っ白な白衣。
極度に短いスカート。
胸元が大胆に開いたトップス。

「なんて恰好をしてるんだよ!?」

「女医なんだから、白衣くらい着るでしょ?」

そう言ってかけていたメガネを持ち上げ(狙っているようにしか思えない!)、俺の今までの検査結果が書いてあるであろう、ファイルに目を通した。

「脳の異状や感染症の疑いもなし。異常なのは脈の速さだけね」

彼女はそう言うと、ファイルを置いて俺のいるベッドに近づいてきた。

「ななななな…っっ!!何ぅを!?」

最後は声が裏返ってしまった。

けして俺を責めないでほしい。
好きな女の子がこんな大胆な格好をし、二人きりの空間で迫ってきたら、齢14の中学生には刺激が強すぎるってものだ。

「何って…触診よ?聞いてなかったの?最後の検査なんだから我慢しなさい」

そう言って伸ばされる細い腕。
近づくすべすべした脚。
柔らかそうな胸元。


―もう限界だぁぁあ!!!!


『情けねぇな。マフィアのボスになろうヤツがこんなことで動揺してどうすんだ』


…そう、意識が途切れる前にリボーンの声が聞こえた。


***


―ピピピ ピピピ

目覚ましの音が聞こえる。
下から母さんが作っているであろう、朝食の芳しい香り。
あぁ、やっと夢から覚めたのか。

俺はまだ開かない目をこすり、唸ってゆっくり瞼を開けるとそこには――。

「あ、綱吉おはよう。今日一緒に出かけるって約束したんだからもう少し早く起きてくれなきゃ困るわ」


開襟シャツのの隙間から見える、夢で見たカーテンと同じ色の下着のものと見られるレース。
シーツを思わせるような白い柔肌。


うん……、しばらく起き上がれそうにないんだけど、どうすればいいかな!!?(大泣)


【まどろみの中の誘惑】


(…いい夢見れただろ、性少年?)

(リボーン!!おまえっまさか俺に何かしでかしただろ!?)


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5万打記念作品で、リクエストの多かった「ナース、白衣モノ」です。
たたたたたた大変遅くなりましたぁあああ!!(スーパー土下座タイム

作中でツナがかかっている病気は"恋の病"ということで、いろんなキャラクターにお医者さんやら看護師さんをやっていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
今回も今回で、ツナには大変苦労をかける結果となりましたね←
いや、あれです、可愛い子ほどいじめたくなる…という素敵な言い訳です\(^o^)/

本当はイラストも描きたかったのですが、頭の悪い管理人が予定を詰めすぎたため、描く暇がありませんでした。
また今度こそリベンジをば…!!

それでは、これからもPispis*をどうぞよろしくお願いいたします^^*

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あきゅろす。
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