ボクの周りは敵だらけ やきもち妬きなジーノです ボクの恋人は、自分の魅力を全くといっていいほど理解していない。無意識に周りを惹き付けていることに全く無自覚なんだ。 今日はDVD見ないでごろごろするつもりだから、ジーノも俺の部屋でのんびりしない?練習終わりに大好きな恋人からそう誘われてしまえば、当然行かない訳にはいかないよね。ボクはタッツミーに誘われるままに、今現在彼の部屋でゆっくりと寛いでいる。本当におかしなもので、ボクの部屋よりずっとずっと狭い場所なのにタッツミーが居るだけで居心地が良くなってしまう。 こんな風に2人でゆっくり過ごす時は大抵色々な話をする。ボクのお気に入りの椅子のことだったり、新しく見付けた料理の美味しいお店のことだったり。タッツミーはふ〜んと聞いているけど、絶対ボクのすぐ隣に居てくれるんだ。彼の方といえば、分かるとは思うけどそのほとんどがフットボールの話ばかりだね。でもボクは全然嫌ではないよ。フットボールの話をしている時のタッツミーは、少年みたいに目を輝かせていてとても可愛いし、何よりボクは彼のフットボールが好きなんだから。タッツミーは監督であるし、ボクも選手だから、一通りの話題の後は今日もフットボールの話題になった。彼と話している内に、そういえば…とボクはあることを思い出した。 「ねぇ、タッツミー。少し小耳に挟んだんだけど…この前の川崎戦の後の監督会見で、タッツミーったらボク達のチームのあの河童と一緒だったんだって?」 「パッカ君のこと?うん、一緒に会見したよ。答えづらい質問はあいつに助けてもらおうかなぁ〜って思ってさ。」 「ちょっとタッツミー!…まさか見返りとかで、裏で変なことされてないよね?」 「はぁ?…あいつはただのマスコットじゃん。ジーノ、頭大丈夫?」 タッツミーが心配そうな顔でボクの額に手を当てて、よし、平熱だなと確認した。そんな確認しなくても勿論ボクは大丈夫だよ。 「だってタッツミー、何やかんやで彼と仲良しじゃない。ベタベタ触られてるタッツを見る度、ボクすごくイライラするんだよ。」 「あのね〜、お前気にし過ぎ。…やっぱ監督とチームのマスコットが仲良い方が、イメージいいじゃん。」 まぁ確かにそれはそうだとは思うけれど。どこかまだ釈然としないボクは、そのまま自分の中にあった日頃のモヤモヤを口にしていた。 「フットボールの話のせいで、色々思い出してしまったんだけど。…あの山形の監督だって…」 「サックラー?」 「そう、それだよ。ずっと気になってて。何で彼をそんな風に呼ぶんだい?まるで特別みたいでボク、嫌だよ。」 「サックラーは何か俺に憧れてたみたいでさ。まぁ別に呼び名くらい…」 ボクだけじゃなくて、彼にもタッツミーって呼ばせているじゃない。タッツミーって呼んでいいのはボクだけにしてよ。それが無理ならタッツミーも何か特別な名でボクを呼んでよ。そうお願いしたら、何?俺だけお前のこと別に呼べばいいの?と彼はボクの隣で考え込んだ。 「じゃあ、吉田で。」 「絶対に嫌だ。」 「誰も呼ばないから、俺だけ呼んだらある意味特別じゃん。…ん〜、後はルイジーノ?」 「タッツミーなりに面白く捻ったつもりなのかもしれないけど、そういう名前の通貨があるんだよね。」 「え〜、んじゃあ…吉田王子。」 「どうして敢えてその2つをくっつけるんだい?」 も〜ジーノでいいじゃん。何かお前ジーノっぽい顔だし。それはどういう意味かな、とタッツミーに訊ねてみたら、格好良い顔なんだから、片仮名の方が合ってると言われてしまった。本当にタッツミーは狡いなぁ。褒められたし、もう名前はジーノのままでいいよ。 「あとそれとさ、東京ヴィクトリーの監督とか10番の彼も、何だかタッツミーに馴れ馴れしいよね。」 「えっ?…そうかなぁ。何?ジーノ、お前、今日はそういう日なの?何か俺をチクチク責める日な訳?」 「別に責めているつもりは…ただボクはもっと気を付けて欲しいというか…だってタッツミーはボクの…」 「恋人だもんな。」 すぐ側に座っていたタッツミーがボクの方に体を寄せて、悪戯っぽい笑顔でボクを見上げた。 「心配しなくても大丈夫だよ。だって、我が儘聞いて欲しいと思ったり、やきもち妬いて欲しいとか思ったり…それにずっと一緒に居たいって思うのはジーノ、お前だけだからさ。」 タッツミーが笑って、それからそっと目を閉じた。多分これは、キスしてもいいってことだよね。ボクはタッツミーの顎に手を添えて、そっと唇を覆った。彼とのキスを味わいながら、ボクはタッツミーには敵わないと改めて感じた。周りに魅力を振り撒いていることには気付かないで、ボクにはたっぷりの愛情をくれて。本当に質が悪い人だよ。 「…まぁ、ジーノがやきもち妬いてくれるのは嬉しいんだけど、絶対間違ってるからね。分かった?」 「ボクは間違ってないと思うけどね。タッツミーは魅力溢れる人なんだから、これからもボクが周りに目を光らせなきゃいけないね。」 大袈裟だなぁとタッツミーがボクの腕の中で笑った。その笑顔までもボクを惹き付けて離してくれなくて。ボクは絶対に周りにタッツミーを渡すものかと決意して、腕の中の愛しい恋人を優しく抱き締めた。 END あとがき 甘々なジノタツも、一定の距離感のあるジノタツも、とにかくどんなジノタツも大好きですが、心が狭いジーノと、結局彼を甘やかすタッツミーなジノタツも好きですv マスコットや他のチームの監督までにもジェラシーを感じるジーノはすごく可愛いと思います(*´∀`*)タッツミーもそんなジーノが子供っぽくて可愛いなと思ってくれると良いです。 読んで下さいまして、ありがとうございました♪ [*前へ][次へ#] [戻る] |