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銀ちゃんのお誕生日お祝い文です

『0505』と同じ設定でお読み下さいませ

銀ちゃんのお誕生日について少しだけ捏造しております




大切にしたいと思うものは自分には意外とたくさんある。真選組に関することは勿論そうであるが、例えば、そう、土方にとってそれは愛しい恋人の誕生日を祝ってやることだった。


『土方くんは性格的にちゃんとしてっから、銀さんの誕生日は10日だってとっくに知ってると思うんだけど、俺、別にプレゼントいらねーから。』


1週間ほど前、飲み屋で一緒に酒を飲んでいた時に割と真面目な口調で恋人にそんなことを言われてしまった。誕生日は奮発しろよ、期待してるからねと高級な物をねだられたら、望む物を買ってやろうと密かに思っていた土方は、その言葉が信じられなかった。土方は武装警察真選組の副長というそれなりの立場に身を置いている。自分で言うのもあれだが、幕臣という身分になるので高給取りであるのだ。金欠で恋人へ誕生日の贈り物ができないようなみっともない状況になることはない。実際の所、金銭に困るようなことはないので、銀時の欲しがる物なら何でもプレゼントする気でいたのだ。


『変な気とか遣ってんじゃねぇぞ。恋人なんだから遠慮なんざ…』

『別に気ィ遣ってる訳でも遠慮してる訳でもないから。別に何か貰わなくても十分なんだよ。』

『おい、そりゃどういう…』


そのまんまの意味だけど。銀時はけろっとした表情で言葉を紡ぐと、戸惑う土方を気にすることなく美味そうにビールを口に含んだのだった。






「ああは言ってたけどな…」


先ほどまで紫煙を燻らせていた煙草の先端を机の上の灰皿に押し付けると、土方は目の前にある未処理の書類から視線を外して小さく息を吐いた。部屋の障子を閉めてはいるが、月の光がうっすらと射し込んでくる。土方はゆっくり立ち上がると、障子の前まで移動してそのまま左右に開け放った。


「銀時。」


約5ヶ月前、土方は何とも言えないほど幸せな誕生日を過ごした。あの日は翌朝まで一緒に過ごすつもりでいたのに夜になって急に事ができてしまい、一度は銀時に断りの電話を入れたのだった。だがどうしても諦めきれず、土方は必死に仕事を終わらせて万事屋へと向かったのだ。そして鍵の掛かっていない不用心な玄関の戸に少しだけ呆れながらも足早に廊下を進んで。銀時、と呼び掛けようとしたその先には思っていた以上に嬉しい光景が待っていた。夜のかぶき町を走りながら、待っていてくれるかもしれないとは心の中で期待していた。机にうつ伏せて眠っていたが、その期待通りに銀時は土方をちゃんと待っていてくれた。そのことに胸の奥から嬉しさが込み上げて仕方なかった。だがそれ以上に土方の心を震わせたのが、机の上に並べられた料理だった。


「今も忘れられーな、あれは。」


銀時は優しい奴だから、きっと待っていてくれるだろうとどこかで確信があったが、まさかあんなにもたくさんの手料理も一緒だとは思ってもみなかったのだ。街中で偶然会った時に、5日の夜は来いよと言われて馬鹿みたいに舞い上がった。おめでとうと言われるだけで、それだけでもう十分だと思っていたのに。銀時がどんな想いを込めてあのたくさんの料理を作ってくれたのかと考えたら、堪らない気持ちになった。お前のことは絶対にこの手から離さない、ずっと大切にすると強く思ってしまったほどに、土方にとって忘れられない大切な思い出となったのだ。だから今度は自分の番だ。銀時に喜んで欲しい。ただそれだけだ。土方は剣以外に得意なことがないので、ありきたりであろうが誕生日にプレゼントを贈ることで恋人に喜んでもらうしかない。それでも自分ができることで銀時を喜ばせてやりたいのだ。銀時の喜ぶ顔が見たいのに。


「……あそこまで頑なに言われちまったら、やっぱ駄目か。」


土方は見上げていた月から畳に視線を落とすと、腰を下ろしてそのままごろりと仰向けに寝転んだ。攘夷浪士を捕縛する作戦やテロリスト達の拠点に突入する時の作戦は簡単に思いつくというのに、誕生日に恋人を喜ばせる為の名案はなかなか思うように浮かばなかった。


「銀時…」


目を閉じた瞼の裏には照れたように笑う銀時の顔。土方は抱き締めて愛を囁く時のように愛しい恋人の名前をもう一度そっと音に乗せた。



*****
「何?ケーキ買って来てくれちゃったりしたの、お前…」

「当たり前だ。今日はお前の誕生日なんだ。銀時、お前には俺の誕生日祝ってもらってんだぞ。手ぶらで来る訳ねーだろうが。遅い時間になっちまったのは悪ぃが…」


土方は案内されたソファーに腰掛けて手を伸ばすと、ほら、と持って来た紙袋を渡した。思ったよりも重みがあるので、たくさんの種類を買ったのだと分かったのだろう。別に何もいらねーよと言ってはいたが、目の前の恋人はやはり嬉しそうな表情をした。頬が緩んで何とも可愛らしかった。


「昼に新八と神楽が予約してくれたやつ皆で食ったんだけど、糖分は別腹だからね。ありがたく貰うとしますか。」

「ああ。」


土方は結局、江戸で今人気だというケーキを買って銀時に渡した。これはどう考えてもプレゼントにはならないだろうと承知していた。だが、2人分の飲み物を用意し、早速上機嫌でフルーツたっぷりのケーキを食べ始めた銀時を見ていたら、これはこれで嬉しくなってしまう。可愛い銀時は眼福に違いないのだが、けれどもやはり色々と複雑な気分になってしまった。


「何か言いたそうな顔してんね。」


ケーキを食べる手を止めて銀時がまじまじと土方を見つめた。赤い瞳にじっと見つめられてしまえば、黙ったままでいることなどできはしなかった。


「…あの時、結局答えてくれなかっただろ?何で何もいらねーなんて、そんなこと…」

「お前まだそんなこと気にしてたの?」

「当たり前だ。好きな奴には誰より一番喜んでもらいてーし、銀時、お前にはいつも幸せに笑ってて欲しいんだよ、俺は。」


今度は土方が真っすぐな瞳で銀時を見つめ返した。土方の真摯な思いが伝わったのだろう、くそっ、そんな風に言われちまったら、もう逃げ場がねーじゃんと銀時は悔しそうに頭を掻いた。そして、あー、とか、えーと、とか濁していたが、笑うんじゃねーぞと、恥ずかしそうに少しだけ肩を震わせてから小さな声で言葉を紡いだ。


「また来年も…お前が俺の隣で笑ってくれるだけで、俺ァ別にそれだけでいいんだよ。俺にとっちゃそれが幸せなんだ。」

「……」

「……10月10日ってさ、先生が俺を拾ってくれた日なんだ。先生の家族になった日が、そのまま俺の誕生日な訳よ。俺、本当の誕生日なんざ知らねーもん。」

「銀時…」

「大切な人が側に居てくれるってだけで、それだけで俺はもう十分なんだよ。」


銀時の言葉が土方の心に静かに沁み渡っていく。それは土方の胸を甘く甘く疼かせた。


「来年だけじゃねーよ、再来年もその先もずっとお前の隣で笑っててやるから。」

「はは、そっか…じゃあ、俺、ずっとプレゼント貰いっぱなしだなー。」

「ちゃんと受け取ってくれ。これからもずっとな。」

「分かったよ。」


土方の言葉に恥ずかしそうにはにかんだと思ったら、銀時は不意に我に返ったような表情になって頭を抱えた。


「うん。ちょっと待って…」

「どうかしたか?」

「どうしたもこうしたもねーよ!くっそ、すっげーこっぱずかしいこと言っちまったよ、俺!乙女でもないおっさんなのに!」


本当はこんなこと言うつもりなんかなかったんだけど。いや、でもやっぱお前には知っててもらいたかった気がしたし。ああもうとりあえず今俺のこと見んな、あっち向けと銀時は土方から思い切り目を逸らして俯いてしまった。


「銀時。」


土方は銀時の名を甘く呼ぶと、こっち来んなと慌てる銀時の隣に移動して、その身体をぎゅうと抱き締めた。ケーキの甘い香りと銀時の匂いが鼻腔をくすぐる。土方は愛しい恋人を腕に抱いたまま、耳元に唇を寄せた。


「銀時、生まれてきてくれて、そして俺と出会って、俺を選んでくれて感謝してる。おめでとう、銀時。ありがとな。」

「…土方、おめー…色々、反則だからね、そーいうの!」


砂糖菓子のように甘く溶ける言葉に耐え切れず、がばっと顔を上げた銀時の目元は朱に染まっており。そっちのほうがもっと反則じゃねーかと笑って、土方はこれなら少しくらいはプレゼントになるかもしれねーなと思いながら、銀時の唇に自身のそれを重ねた。口付けはどこまでも甘く優しくて、土方は心が満たされていく幸せを感じながら、目を細めて背中に腕を回してくれた銀時をもう一度強く抱き締めた。これからもずっとずっと隣で笑っててやる。変わることのない想いを込めて。






END





あとがき
銀ちゃん、お誕生日おめでとう!!!


ただただ大好きです!!!


4年目の銀誕文はバカップルみたいにお互いのことが大好きな2人で書いてみました^^甘い雰囲気が出ていればいいなと思います。


銀ちゃんが幸せ一杯になってくれることが私の幸せですので、土方さん頑張って下さい!


銀ちゃんが笑っている幸せな土銀は本当に尊いです、大好き!!


読んで下さいましてどうもありがとうございました♪

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あきゅろす。
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