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0505
土方さんのお誕生日お祝い文です

付き合ったばかりの2人の設定です

何番煎じなお祝いの仕方になっています、すみません…;




今さら訊くに訊けないことは世の中に意外とごろごろ転がっていたりする。例えばそう、銀時にとってそれは恋人の誕生日がいつであるのかということだった。


「ちょっと待て!え!?…3日後!?まじで?」


買い物から帰って来た新八を出迎えた銀時は、買った物を冷蔵庫にしまい込んで居間に戻って来た彼から聞かされた単語に驚いて、思わず居間の壁に掛かっているカレンダーを二度見した。そして無理矢理心を落ち着かせながらもう一度視線を向ける。だが、カレンダーを何度も見た所でどうにかなる訳もなく、銀時はその事実にどうしようと頭を抱えた。


「サボってた沖田さんに偶然会ったんで訊いてみたら教えてくれましたよ。土方さんの誕生日は5日だって。あ、あと銀さんによろしく伝えるようにって。」


銀時の脳裏にドSな青年の顔が浮かぶ。いつも街中で会う度に土方とのことをからかわれたりするのだが、それは彼なりの気遣いのような物であることは銀時も理解していた。土方と付き合う前には真剣に相談に乗ってもらってもいた。だから土方の誕生日は彼の言う通り、5月5日で間違いないのだろう。


「……それにしてもなんで僕が訊かなきゃならないんですか。土方さんと付き合ってるのは銀さんなんですよ。」

「それは、そうなんだけど…」


今さら土方に、なぁ、お前って誕生日いつなの?とそんな風に訊ける訳がなかった。そんなことを土方に訊こうものなら、お前、恋人の誕生日も知らなかったのかよ、と呆れて怒られるに決まっている。それはどう考えても格好悪い。だがそれ以上に無神経な質問をして土方の傷付いたような悲しい顔を見たくないというのが正直な気持ちだった。


「まぁ、別にもういいですけど。とりあえず土方さんの誕生日が分かって良かったじゃないですか。」

「……なぁ、新八くんよ、俺、土方に何あげればいいと思う?」

「は?ちょっと、銀さん!それを僕に訊きますか?」


本当に困った人だなぁと呆れた声を出しながら、新八が銀時に湯飲みを渡した。買い物の片付けのついでにお茶の準備もしていてくれたようだ。銀時は手渡された湯飲みを居間の木製の長机の上に置くと、小さな吐息を洩らした。


「…こーいうの、もうお前くらいにしか頼めねーじゃん。神楽はやっぱ色々マズいし…」

「銀さん…」


神楽は遊びに出掛けているので、現在万事屋には銀時と新八の2人だけだ。神楽も新八と同様に銀時と土方の関係は知っている。だが銀時としては、まだ幼い彼女に色恋の話は早いだろと思っているのだ。だから男2人きりの今しかない。そして、現在進行形で発生している悩み事は1人で抱えているよりも話して解決した方がいいに決まっている。


「頼むよ、新八。」


銀時は土方の恋人であるが、付き合ってそれほど時間が経っている訳ではないので彼が誕生日に何が欲しいのかさっぱり見当がつかなかった。好物のマヨネーズや嗜好品の煙草をあげてもありきたりすぎて、それは誕生日プレゼントにはならないと思うのだ。思った以上に銀時の声が情けなさを含んでいたことに新八は驚いて目を丸くしたが、悩んでいる銀時の力になりたいと思ったのだろう、分かりましたと頷いて彼も銀時と一緒に考え込んだ。


「うーん、そうですね。…あ、こんなのは?……恋人の銀さんにしかできないことをプレゼントにするってのはどうです?それってすごく特別なことじゃないですか?」

「……俺にしかできない、土方にとって特別なこと、か。」


銀時は何かを考えるような仕草を見せた後、こんなのはどうよ、とそっと口を開いた。


「誕生日だから、例えば…豪華な手料理を食わせるのとかって、アリじゃね?俺、こう見えて料理得意だし、すげーの作ったら、喜んで食ってくれるかもしれねぇよな?これってプレゼントになるんじゃねーの?お前ら、俺が作る飯は美味いっていつも言ってくれるだろ?……それに、美味そうに食うあいつの顔、ちょっと見てみてーし。」


我ながらこれは名案ではないかと銀時は思った。銀時はファミレスや甘味処、居酒屋や料亭などでいつも土方にご馳走になっており、2人で過ごす時には基本的に外食が常なのだ。だから彼の為に手料理を振る舞ったことは一度もなかった。これ全部銀さんがお前の為に作ったんだよ、すげーじゃねぇか、ありがとな、そんなやり取りを想像してみたら悪い気はしなかった。それどころか嬉しくていい気分になった。


「いいじゃないですか、銀さん!恋人の手料理なんて特別感いっぱいだし、銀さんが愛情込めて土方さんの為に作るんだから、それは立派なプレゼントですよ。僕だって、もしもお通ちゃんの手料理が食べられるなら、すごく嬉しいです。」

「そうだよな!」

「そうですよ!」


新八の賛同の声が銀時の背中を押した。恋人の初めての誕生日のお祝いに初めて手料理を作って美味いなと喜んでもらう。3日後に現実となるであろう温かな光景が目に浮かんだが、銀時は新八の手前、にやけそうになるのを何とか堪えた。


「よし、銀さん、頑張ってケーキも作っちゃおっかなー!」

「頑張って下さいね、銀さん。」


いっちょやってやるぜと意気込む銀時に普段もこれくらいやる気があればいいのにと新八は自分の上司の姿に苦笑したが、当の本人は何作ってやろっかなと土方へのプレゼントのことで頭がいっぱいになっていたのだった。



*****
土方の誕生日を迎えるまでのわずかな時間で、銀時はいつもより随分と奮発してスーパーで買い物をした。当然支出が増えてしまうことになったが、万事屋の仕事を多く入れてその分を取り戻せばいいと決めて、土方が喜んでくれることだけを考えた。料理も種類が多い方がいいので、大通りに出る時に料理の本を探して立ち読んだりもした。ここまでやる自分に笑いそうになったが、それくらい土方のことが好きなんだと思うとどうにも堪らない気持ちになって、心がふわふわと満たされた。


どこかそわそわした気分で迎えた5月5日。銀時は使い慣れたピンク色のエプロンに身を包んで午前中から準備を始めた。楽しそうに鼻歌を歌いながら包丁を握る銀時の後姿を新八と神楽がそっと見守った。時々台所に入って来た神楽に私が毒見してやるネと作ったばかりのポテトサラダを味見されたり、新八にホールのショートケーキのいちごの盛り付けを手伝ってもらったりしながら、銀時は土方へのプレゼントを完成させた。


「ビーフシチューにポテトサラダ、鶏のからあげ、ボロネーゼパスタにコンソメスープも作ったんだぜ。あいつの好きなマヨネーズもちゃんと用意した。こんだけありゃ、あいつも満足するだろ。」

「銀さん、どの料理もすごく美味しそうですよ!これなら絶対に土方さんも喜んでくれますよ。ね、神楽ちゃん。」

「美味しい洋食で胃袋を掴んで離さないんだから作戦、その頭でよく考えたアルな、銀ちゃん。」

「まぁね。俺だってやる時はやる男だからね!…っていうか、その頭でってちょっと酷くね?」

「そんなことよりマヨばっかずるいネ!これからは私の誕生日の時もこんな風に作って欲しいアル!」

「神楽…」


恋人とはまた違った想いで大切にしている家族から何とも可愛いお願いをされてしまった。銀時は神楽の頭を優しく撫でると、じゃまずは土方で腕試しだな、銀さんの本気の手料理はすげーってことを教えてやるよと楽しそうに微笑んだ。





夜になって神楽は定春と共に万事屋を出て新八とお妙の所に行った。玄関先で見送る時に、銀ちゃん、ちゃんと戸締りしろヨと注意されてしまった。銀時は分かってるよと適当に頷き返したが、彼女に気を遣ってもらったことに心の中で素直に感謝したのだった。神楽が恒道館へ出掛けて1人になった銀時は、土方との約束の時間までジャンプでも読んで過ごそうかなと考えた。居間の机の上には自信作の手料理が並び、冷蔵庫にはケーキも入っている。後は主役が来るのを待つだけだった。土方が来たら温める必要のある料理をもう一度温め直して、2人分の皿を用意して。これ全部さ、お前の為に作ったんだよと言ったら、土方はどんな顔をするのだろうか。自分が想像した以上の照れくさそうな表情になるのだろうか。その時は男前が台無しじゃねーのとからかってやろう。楽しみだなと心躍らせていると、部屋の中の黒電話が鳴り響いた。


「はーい、万事屋銀…あ、やっぱ土方だった。この時間だし、もしかしたらと思ったんだよね。」

『……銀時、』

「ん?どうしたんだよ?」

『仕事が入っちまって、そっちに行けそうにねぇんだ。』

「……そう、そうなんだ。」

『本当にすまねーと思ってる。約束破っちまって…』

「そっか…別に気にすんなって。誕生日なのに大変だなー、お前も。じゃ、仕事頑張れよ、副長さん。」


黒電話の受話器を元の位置に戻すと、銀時はソファーの前に移動したが、その足取りは頼りないもので、ずるずると床にしゃがみ込んでしまった。


「あーあ、こんなにたくさん作ったのにな。」


土方が来ないのであれば意味がない。銀時は机に突っ伏すと、そのまま黙って目を閉じた。





何だか誰かが隣に居るような気配を感じた。その感覚に慌てて飛び起きた銀時は、これは夢なんじゃないのかと目の前の光景がすぐには信じられなかった。願ったけれどそれは叶うことはないはずだったのに。


「ひじ、かた…」


土方が銀時の隣に座り込んで机の上の料理を食べていたのだ。嬉しそうに目を細めながら銀時の手料理を頬ばっている。作ってから何時間も経っており、しかも放置したままで電子レンジで温め直してもいないのだから冷めてしまっているはずだ。そんなの美味くなんかねぇだろ。銀時が心の中で呟いたことに気が付いたように小皿を置いた土方が柔らかな眼差しを向けた。


「冷めちまってようが、お前が作ったんだから美味いに決まってる。」

「土、方…」


起きたか、と目を細めて伸ばされた手にくしゃりと頭を撫でられた。そのまま頬を滑る指にくすぐったさを覚えて銀時は小さく笑った。その表情に満足してからゆっくりと離れた指を追い掛けるように見つめれば、すぐ側に居る土方と視線が絡まった。


「土方、お前さ、いつ来たんだよ。」

「少し前だ。お前から祝ってやるよって電話貰った日から、ずっと楽しみにしてたんだ、俺は今日この日をな。だから何とか仕事終わらせて走って来た。」

「……もうすぐ日付け変わっちまうとこだったね。ギリギリセーフだったじゃん。」

「ああ、本当に良かった。約束したのにお前と過ごせねーとかそんなのあり得ねーだろうが。」

「…あのさ、」

「おう。」

「おめでと、土方。あと、来てくれてありがと。冷めちまってんのに料理も食ってくれて。」


今日この日に一番伝えたい言葉を贈ることができた。それはぶっきらぼうな言い方だったに違いないが、銀時はその中に自身の想いを込めたのだ。土方が小さく息を飲んで、それから嬉しそうに笑った。仕事中の気難しい顔とは違う、照れたようなその表情が銀時は何よりも好きだった。


「ありがとな、銀時。誕生日がこんなに幸せだと思ったのはこれが初めてだ。お前に祝ってもらえたからだな。」

「俺、別に…ただ料理作っただけだし。」

「俺の為にお前が何かしてくれただけで、もうそれだけで俺ァ幸せすぎてどうしようもねーんだよ。」

「…あー、そうですか。お前、単純過ぎじゃね?」


嬉しい言葉を貰うと、やはり照れくさくてどうしても最後はつっけんどんな返事になってしまう。だがそんな銀時のことをちゃんと理解しているようで、俺はお前限定で単純だからなと土方はフッと目を細めた。


「…それとさ、えーと、実は…ケーキも作ってみたりした訳よ。…そんなに甘くねーし。」

「そうか、ケーキ作ってくれたのか。勿論食うに決まってるだろ。ああそうだ、せっかくだから、できればお前があーんって食わせてくれ。」

「はあ?おめーな、誕生日だからって調子乗んじゃねーぞ、土方!」


そんな風に怒ってはみても、きっと自分は嬉しさを隠せない顔をしているのだろう。大切で仕方ない土方の生まれた日を祝えるのだから。俺は絶対にそんなことしねーからなと反発しつつも、銀時は土方の首に両腕を回して温もりを確かめるようにその身を寄せた。






END






あとがき
お誕生日おめでとうしろうさん!!


サイト4年目にして初めての土方さん誕お祝い文です。土方さん、今までごめんなさい^^;勿論土方さんのお誕生日をお祝いする気持ちを込めたのですが、土方さんをお祝いする為に頑張る銀ちゃんが書きたかった訳です^^


銀ちゃんは土方さんの誕生日にわざわざ贈り物はしないだろうなと思ったので、手料理を振る舞ってもらいましたv家事全般をこなせるお嫁さん能力の高い銀ちゃんが個人的に好きです!


読んで下さいましてありがとうございました!

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