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伝えたいこの気持ち 1
土←銀です




(銀時視点)




お前のことが好きだ――


なぁ、土方。そう言ったらお前は一体どんな顔するんだろう。



お前は決して知らない俺の気持ち。早く早く気付いてよ…



*****
俺の最近の日課、それはパチンコに行くことでもコンビニに行くことでもない。



「土方〜、今暇ぁ?」

「…暇な訳ねぇだろうが。俺は今書類整理してんだよ。万事屋、テメェに付き合ってる暇なんてねぇ。」



こうして土方の部屋に遊びに行くことが、最近の俺の日課とも呼べる行動だった。



いつものように土方の部屋の前の縁側に腰掛け、手を伸ばして部屋の障子を開ける。そして今暇?と、毎回お決まりの台詞を口にする。土方は部屋に居る時は大概書類仕事で手が離せないので、勿論断られてしまうんだけど。


俺が来ると嫌そうな顔をするのに、土方はいつも俺を無視することなく、ちゃんと会話をしてくれる。本当に良い奴なんだよな…



「ねぇねぇ、いちごパフェ奢ってよ。俺今、甘味食いたい。」

「テメェ、俺の話聞いてたのかよ…俺は今忙しいんだ。」

「え〜、じゃあチョコレートパフェでもいいよ。」

「どっちもパフェじゃねぇかよ。…ったく、分かったよ。あと少しでキリがつくから、そこで大人しくしてろ。」

「え?まじでか?やったぁ。」

「但し、今日奢ってやる代わりにもう俺の所には来るな。鬱陶しいんだよ、気が散るし。」


土方にパフェをご馳走してもらえる嬉しさが、その一言で一気に急降下した。土方のことが好きだから少しでも一緒に居たくて、こうして部屋に来ていたけど、やっぱりもう無理みたいだな。


「……分かった。甘味奢ってくれるならもう来ねぇよ。ちゃんと美味しいパフェじゃないと俺、怒るからな。甘味にはうるさいからね、俺。」


自分の気持ちに蓋をして、俺は無理矢理軽口を叩いた。奢ってもらう身だってこと忘れてるだろ、と呆れている土方を、つきりと痛む胸を押さえて見つめることしかできずにいた。


「おら、そこで待ってろよ。」


土方は俺をせき立てるようにそう言うと、障子をパタンと閉めた。1人残された俺は縁側で大人しくしているしかなかった。あいつ、絶対俺がここに来る意味なんて分かってねぇんだろうな。俺がどんな気持ちでいるのかも。


「あ〜あ、せつねぇ。」


そっと呟いた言葉は、急に強く吹いた風にさらわれていった。



*****
俺の目の前で土方はメニューに目を走らせている。少し伏し目がちになったその顔をそっと窺った。



いつ見ても本当に格好いいんだよな。俺とは違う艶やかな緑の黒髪。涼しげで切れ長の瞳。メニューを捲る細く男らしい指。…確かにモテるはずだ。それに外見だけじゃない。ぶっきらぼうな優しさだって土方の魅力なのだ。



あれから30分ほど経って、仕事終わったから行くぞ、と土方に連れられてファミレスへと向かった。夕方近くだったので、店内はそこそこ客で賑わっていた。今、俺達は店員からメニューを渡され、ちょうど選んでいる所だ。


「…何見てんだよ。それより決まったのか?」


「え、えっと…このDXいちごパフェとチョコバナナパフェがいいんだけど。」


まずい、土方のこと見過ぎだった。俺は慌ててメニューを指差した。これか、分かった、と土方は店員を呼び、俺のパフェを注文した。その後で自分用にとコーヒーも付け加えていた。



少ししてパフェとコーヒーが運ばれてきた。クリームやフルーツが盛られたパフェに、俺は目を輝かせて食べ始めた。


「美味しい!…土方、奢ってもらってわりぃな。」

「お前、本当に甘い物好きなんだな。いつもより目がキラキラしてやがる。」


ククっと土方は喉を鳴らした。そんな顔見たことなくて、俺は思わず見入ってしまった。


「…好きだなぁ。」

「あ?何か言ったか?」

「べ、別に、何も。あっ、パフェがすげ〜って言ったんだよ。土方も食べる?」

「いらねぇよ。俺は甘い物は苦手だ。」


そう言って土方はコーヒーを啜った。


あぁ、駄目だ。思わず好きって言うなんて。土方にばれなかったから良かったけど。だけど本当はもうずっと苦しかった。この気持ちを抱え続けることは。…土方に伝えたい。俺の気持ちを知って欲しい。



土方と過ごせるこの瞬間をとても幸せに感じていたのに、それと同じくらい苦しくて切なかった。


*****
パフェを食べ終えて店を出ると、辺りは大分薄暗くなっていた。俺は再びお礼を言おうとしたが、それを遮るように土方が告げた。


「奢ってやったんだから、もう来るなよ。分かったな?」


土方の言葉に俺はうんと言うしかなかった。約束してしまった以上、どうにもできないことは分かっていることだった。


じゃあな、そう言って帰ろうした土方を俺は引き止めた。ある決心をして。


「何だよ。まだ何かあるのかよ。」

「あのさ、もし…もしもだけどさ、俺がお前のこと……好きだって言ったら、どうする?」


言ってしまった、とうとう。…もう駄目だったんだ、このまま隠しておけなかった。


「何冗談ぬかしてんだ、テメェ。」


土方は思い切り眉をしかめた。土方のその言葉は冷たく俺の体に響いた。


「そうそう、冗談だって。冗談に決まってんじゃん。」


冗談なんかじゃないんだよ。


「俺が土方のこと好きな訳ないじゃん。もしかして本気だと思った?」


好きだよ。大好きなんだ、土方。お前のことが。


「ちょっとからかっただけだって……だから。」

「おい、万事屋、お前…何泣いてんだよ。」


ぎょっとしたような土方の声に俺は自分の頬に手を当てようとして、温かいものが伝ったことに気が付いた。俺、泣いてる?それはあとからあとから溢れてきて、止まることはなかった。


土方に背を向けて、俺は来た道を走り出した。背後から俺を呼ぶ土方の声が聞こえたが、振り返ることなく走り続けた。



ー―俺の恋は、終わった。



もう、終わったんだ。

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あきゅろす。
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