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こういうことも時には起こります
第470〜476訓の入れ替わり回にものすごく滾ったので書いてみました(原作通りの展開ではありませんが、ちょっとだけ借りている所もあります)

2人が入れ替わっていた時にこんなことがあったらいいなぁという妄想です





俺とあいつの魂が入れ替わっちまって分かったことがある。


俺は絶対に着ないすげー柄のパジャマ隠し持ってたこと。サラサラストレートな髪質のくせにやっぱり寝癖はつくんだってこと。想像以上に沖田くんからいじられてるってこと。俺のことをツンデレだと思っていやがること。言っとくけど、銀さんツンデレなんかじゃないからね。そこんとこは間違えないでよね。


俺とあいつの魂が入れ替わっちまって分かったことがある。


酷い天パのせいで髪をセットするのにとにかく時間が掛かっちまうこと。予想通り、俺と総悟の関係とは違って子供達からすげー慕われてること。近藤さんが惚れてるあのお妙と意外に距離が遠かったこと。あいつのマネしてみたが、そのことに心底ほっとした。一応俺と付き合ってんだから、そりゃ当たり前なんだがな。





「万事屋っ…!」


こちらに慌てて駆け寄って来る自分の姿にやっぱ慣れねぇなと思いながら、銀時は廃ビルの壁に背中を預けて座り込んだまま小さく片手を挙げた。人気のない路地裏でこのままじっとしていようと思っていたのに、偶然にも土方に見つかってしまった。中身が入れ替わっていてもこういう所はやっぱり変わらないらしい。眉を寄せて近付いて来た自分の顔に苦笑しつつ、銀時はこんくらい大丈夫だよと立ち上がった。


「……他人の体って、やっぱ勝手が違うもんなんだな。いつもより動きづれーっていうか、」

「万事屋、お前…攘夷浪士の奴らに襲われたんだな?」

「あー、まぁね。糖分摂取しようと思って1人で歩いてた俺も悪いとは思うけどさ、昼間っからこんなことになるとはねー。本当に副長さんは女だけじゃなくて男にまでモテモテだな。」

「冗談はいいから傷見せろ。」

「あ、」


右腕に受けた刀傷を隠すように立っていたのに土方にはお見通しのようだった。銀時は腕を通さずに肩に羽織っていた隊服の上着を渋々脱ぐと、別に平気だしと口を尖らせながらも腕の傷を見せた。


「結構ひでーことになってんじゃねぇか。それに…」


土方が不意に腕を伸ばす。指で頬を拭われる感覚がしたので、多分血か砂埃で汚れていたのだろう。銀時がじっとしていると、土方―といってもそれは銀時の顔なのであるが―はいつもより変な表情をしていた。自分の顔をこんな風に拭う日が来るなんて想像もしていなかったのだろう。銀時だって同じだ。真選組の副長として浪士達に襲われる日が来るとは思ってもいなかった。


「よし、屯所に行くぞ。」

「えっ!?ちょ、土方…」


土方は銀時の腰を引き寄せると、怪我をしていない方の銀時の腕を取り、自身の肩に回した。そして肩を貸したまま黙って歩き出した。土方に体を預ける形で銀時は半ば引きずられるように歩いたが、大通りに出る頃にはさすがに見た目的にマズいだろと土方から離れようとした。


「土方、もういいって!」

「いいから大人しくしてろ。無理すんな。」

「……」


他にも怪我してんだろうが。真剣な声でそう言われてしまえば、大人しく従うしかなかった。


「なぁ、今の俺らってどう見えんのかな?…やっぱ、珍しく怪我した真選組の副長さんに万年ニートのプー太郎が肩貸してる風に見えるよね。」

「そうだろうな。」

「即答すんな、俺はプー太郎じゃないからね!」

「お前が自分で言ったんだろうが。つーかほぼニートじゃねーのか?」

「……」

「……」


土方は黙って肩を貸したままだ。銀時は首だけを動かしてそっと土方を見た。自分の横顔は自分でも見たことがないくらいに真剣な表情をしていた。そういえば一緒に飲んで酔っ払った時もこんな風に肩を借りたことがあったなと思い出しながら、銀時は少しだけ土方に体を寄せた。


「……悪ぃな、土方くん。天下の真選組の副長さんにこんな格好悪いことさせちまってよ。」

「…んなこと気にすんな。」

「……うん。」


ぶっきらぼうだが優しさの滲む言葉に銀時の心は温かい物で満たされた気分だった。





銀時と土方が真選組屯所の入り口の門をくぐって敷地内に入ると、隊士達が一様にどうしたのかという顔を向けてきた。どうしたのかはてめーらの格好の方じゃねぇかと思いながら、土方が銀時の様子を気にしつつ足早に自室に向かっていると、廊下で偶然山崎に出くわした。


「ちょうどいいところに…山崎、救急箱持って来い!今すぐにだ!」

「え?旦那…!?」


困惑した表情の山崎を見て、土方は今の自分は坂田銀時であったことを思い出したのだろう、苛ついたように小さく舌打ちをした。そんな土方の様子を見て、銀時は漫画の中の話ならば入れ替わりは面白くて笑える出来事だが、まさか自分達の身にそんなことが降りかかると、こんなにも面倒で大変なことになってしまうのだと改めて思った。そして、まぁそんなこんなで今は俺が土方さんだからな、と心の中で呟くと、土方に肩を借りたままの体勢で山崎を見据えた。


「山崎、万事屋のことは気にすんな。いいから救急箱持って来い。」

「万事屋…」

「早くしろ、山崎。」

「は、はい!了解です、副長。すぐにお持ちしますんで。」


慌てて駆けていく山崎が廊下の向こうに見えなくなると、銀時は土方から離れた。そしてくるりと土方に向き直ると、口角を上げてにやりと笑ってみせた。普段の土方をイメージしながら山崎に命令してみたのだ。我ながら上手くやれている。俺もなかなかのもんだろ、副長さん?そんな風におどけてみたら、目の前の自分の顔は何とも複雑そうだった。





「なんかどっと疲れたわー。」


包帯が静かに腕に巻かれていくのをぼんやりと眺めながら、銀時はぽつりと呟いた。ここ数日間の出来事に加え、今日の襲撃だ。慣れない体はやはり疲れていた。内心でそんなことを思いながら、銀時は土方が手際良く包帯を巻く姿に感心してもいた。小さなかすり傷は自分で絆創膏を貼ることができたが、腕の刀傷は土方に任せるしかなかったからだ。


「万事屋。」


包帯を巻き終わって手当てが済んだと思ったら、土方に呼び掛けられた。


「何?」

「万事屋…」

「だから何、って…わぁ、まっくらー。」


伸ばされた手に目隠しをするように瞼の上を覆われた。視界が闇色に染まって何も見えなくなったが、すぐ近くに土方を感じた。


「…こうでもしねーと、俺は…自分の顔にすんだぞ!」

「ああ、確かに…」


そうだな、と言い終わる前に口付けが降ってきた。確かに土方とキスしているはずなのに、いつもの土方の唇の感触とは違うことが酷くおかしかった。


「やっぱ変だ、コレ。笑える!」


唇がゆっくりと離されたので、銀時は笑い声を上げながら畳の上に寝転んだ。つられるように土方も仰向けになる。銀時は体を横にすると寝転んだまま土方に近付いた。すぐ近くで目と目が合う。銀時は土方を見つめたまま、そっと口を開いた。


「なぁ、土方。…いつになったら元に戻れんのかな。」

「戻れるに決まってんだろ。絶対に戻らなきゃなんねーんだ。そうじゃねーと、お前を抱けねぇままだし、それに…お前が俺のせいで傷付くのなんざもうご免だ。」

「……俺が傷付くとか、そんなの気にしなくていいよ。つーか、元に戻った時、痛いのはお前の方なんだけど。分かってる?」


んなこたァ分かってる。でも今のお前だって痛いのは同じだろ?土方が辛そうな声を出して銀時の頭を撫でた。銀時はしばらくされるがままだったが、小さく笑うとゆっくりと腕を伸ばして土方をぎゅうっと抱き締めた。


「そうだな、土方、お前の言う通り、きっと何とかなる。」


あぁ、自分を抱き締めんのは変な感じだなぁと思いながら、自分の中の土方に伝われと銀時は抱き締める腕に力を込めた。





「副長、怪我したってのに何だか嬉しそうですね。」


土方が万事屋に帰った後、山崎に書類の山を押し付けに言ったらそんな風に言われてしまった。何かあったんですかと訊かれて、銀時は別れ際の土方の言葉を思い出した。


『眼鏡とチャイナのことは心配しなくていい。今は俺が社長だからな。…お前のことももう心配しない。大丈夫だと信じてるからな。あと、俺の部屋はまだ落ち着かねーかもしれねぇが、今日はゆっくり休めよ。』


「俺、あいつのこと好きになって良かった。」

「え?えっ?」


今の発言一体どういうことですかと目を白黒させる山崎に、ンだコラ山崎、と睨みをきかせると、銀時は楽しそうに笑った。自分も土方もきっと元に戻ってまた一緒に笑える。強くそう思えたから。きっと大丈夫だ。



*****
源外とたまの協力を得ながら、自分の魂の半分が暴走して周囲の者達を散々巻き込んだ入れ替わり事件が無事解決した時、銀時は元に戻ることができたことに心の底から感謝した。そして騒動が終息した翌日、かぶき町をぶらぶら歩いていた銀時は仕事中の土方に出会った。素直に認めるしかないが、俺が入ってた時よりもやっぱいい顔してやがるなーと思いながら、銀時は土方に声を掛けた。


「よぉ、土方。」

「万事屋。」

「怪我大丈夫?やっぱいてーだろ?その腕。」

「いや、平気だ。それよりお前は大丈夫か?変なとことかねぇだろうな?」

「そこら辺は大丈夫だって。あ、でもお前の方が手足短かったからなー。銀さん慣れなくて色々大変だったからまだ疲れてるわ。」

「何ぬかしてんだ、てめーは。」


銀時の冗談に対して不満そうに返した土方だったが、元の体に戻れたことに酷く安堵している様子だった。


「あー、自分の実家と自分の体は大切にしなきゃなんねーってことだね。それにしてもお前さ、俺の中に入ってた時、前髪上げてたよね?」

「…ああ、まぁな。」

「俺、基本的に自分の顔カッコいいとか思ったこととかなかったけど、あの時はさ、わー!銀さんカッコいいーって思っちまったからね。恋人のプロデュースもバッチリとかさすがだね、副長さんは。」

「お前はスカーフしなかったり、上着腰巻きにしたり、相変わらずユルかったが、そういうのは入れ替わってもちゃんとしろよな。」

「…っ、なんだよ、土方、おめーだって俺の中に入ってた時、散々煙草吸いやがったくせに。銀さんは心が広いから、そーいうの全部許してやって…」

「おい、銀時…」


銀時の言葉に被せるように土方が真剣な声で銀時の名を呼んだ。


「何?」

「さっきから、俺のナカに入る…とか、お前、昼間からそんな卑猥なこと言うんじゃねーよ。」

「……お前さ、本っ当に馬鹿だよね?お前の頭ん中の方が卑猥なんだよ!」


戻ったらこれか、ああもうこの馬鹿本当にどうにかしてくれ、つーか俺こいつのこと本当に好きでいいのかなと思いながら、銀時は端正な顔を隠すように口元に手を当て照れくさそうにする土方に対して大きな溜め息を零した。そして気になってしまって仕方がなくなったので、入れ替わってる時に変なことしてねぇよなと探りも入れてみたが、土方はそこは最後まで我慢したと真剣だった。


そんな土方と少しの間立ち話をして橋の上で別れた後、銀時はパチンコ店に寄ろうとしてそのまま真っすぐに万事屋へと戻った。少しの間ではあったが、土方の部屋で過ごしていたのでほったらかしだった自分の部屋の片付けでもしようと思ったのだ。居間でお茶を飲みながらのんびりしていた新八から、土方さんは綺麗に使ってましたよと教えてもらったが、たんすを開けてみたら黒のボクサーパンツが出てきた。


「俺、こんなの履かねーんだけど。トランクス派なんだけど。」


ま、いっか、お泊り用にちゃんと取っといてやるよと銀時が小さく笑っていたのと同じ頃。部屋の中に残されていた大量のお菓子の山をこれからどうしようか、まぁあいつらしくて可愛いんだがなと仕事から帰って来た土方も笑っていたことを銀時は知らなかった。そして、そのたくさんのお菓子を手土産に土方が銀時に会いに来るまで、あと数時間。






END






あとがき
銀ちゃんと土方さんの入れ替わりのお話は本っ当にどうしようもなく滾って萌えて仕方がなかったです!!!とりあえずその萌えをぶつけてお話にしてみました。


年末年始にこんな萌えを投下してくるのかと毎回土銀の2人に禿げ萌えでした///入れ替わった時の見た目が個人的にツボで、さらに2人の魅力が広がったなぁと思って読んでいました^^


土銀で一緒にお酒を飲みながら、入れ替わっていた間のことをお互い色々と話していたりしたら可愛いですよね(*´ω`*)


読んで下さいましてありがとうございました!

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