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今日は一緒に
銀ちゃんが土方さんの部屋にお泊まりしていますが、相変わらずほのぼのです




あ〜さっぱりした。それは良かったですね、旦那。閉め切った障子の向こう側から俺の可愛い恋人と、ミントンやあんぱんに傾倒してるのは問題だが総悟よりは余程使える部下の声が響いてきて、俺は書類を読むのをやめて座ったまま後ろを振り返った。次いで勢い良く障子が左右に開かれ、風呂上がりで気持ち良さそうな顔の銀時と来客用の布団一式を抱えた山崎が俺の部屋の前に立っていた。


「ただいま〜、土方。何か貸し切り風呂みたいにしてもらっちまって悪ぃと思ったんだけど…でも、おかげでのんびりできて良かったわ。」

「そうか、ゆっくりできたか。」

「副長、遅くまでお疲れ様です。旦那の布団、ここに敷いておきますんで。」

「すまねーな、山崎。それが終わったらもう下がって構わねぇぞ。」


俺が仕事で使う書き物机から少し離れた畳の上にしゃがみ込んで、山崎が敷布団を丁寧に敷いていく。俺の布団はさっき俺が自分で敷いておいたから、山崎はそのすぐ横に銀時用の布団を整えてくれた。銀時は山崎の隣でその様子を黙って見ていたのだが、じっとしていられなくなったのか山崎が掛け布団を敷き終える前にごろんと白い布団の上に寝転がった。そしてうつ伏せになって頬杖をつくと、寝そべった体勢のまま山崎を見上げた。


「わざわざ布団まで敷いてもらっちゃって、ありがとね、ジミー。」

「いえいえ、気にしないで下さいよ。ゆっくり休んで下さいね、旦那。」

「あーこの布団、すっげぇふかふかじゃん。俺の家のと全然違うわ。うぅ、屯所に住みてぇかも。」


おい、銀時、そんな風に頬杖ついて寝そべるんじゃねぇぞ。襟元の合わせから、その…あれだ、お前の綺麗な白い肌が見えてんじゃねぇか。色気がだだ漏れになってんだよ。それに山崎、お前も用が済んだならさっさと帰れ。いつまで俺の銀時のことじろじろ見てんだよ。銀時はいつもの服装と違って薄物の白い着物を羽織っているだけだ。寝巻き用の着物の隙間から覗く風呂上がりの上気した桜色の肌は、いつも以上に艶めかしく見えてしまって俺の心は落ち着かなくて仕方なかった。今ここに居る山崎にもそれ以外の人間にも誰にも無防備で艶めく恋人の姿など見せたくなかった。


「あの、副長?どうかしましたか?何か怖い顔してますよ。」

「あ?」


不安げな山崎の声にハッと我に返る。いけねぇ、何考えてんだよ、俺は。愛しくて大切な銀時を誰にも渡したくない、独占したいという気持ちはいつも俺の心の中にあって。些細なことでも簡単にその気持ちは表に現れちまう。


「何でもねぇよ。…ただの考え事だ。」

「そうですか。あ、それじゃあ俺、そろそろ失礼しますね。」

「おやすみ、ジミー。」


銀時に小さく手を振ってもらいながら山崎は静かに俺の部屋の障子を閉めた。部屋には俺と銀時の2人だけ。本来ならば周囲に気を配りつつも、2人だけの幸せな時間を楽しむことができるはずなんだ。俺は机の上に置かれている書類の山を横目で見やると小さく溜め息を吐いた。それと同時に頭の中に小生意気な総悟の顔が浮かぶ。


『俺が溜めてる書類仕事を土方さんが全部代わってくれるってんなら、今夜は邪魔しませんぜ。』


今日の朝、今夜銀時が泊まりに来るから大人しくしてろと言いに行ったら、ニヤリと笑った顔でそんな風に持ち掛けられた。総悟は邪魔する時は徹底的にやる奴だ。性格に問題があるからな。俺は言うまでもなく銀時との2人きりの時間を絶対に邪魔されたくなかった。だから総悟が出してきた条件をこうして一応飲んだ訳だったのだが。


「…チッ、総悟の奴、どっちにしろ邪魔する気だったんじゃねぇかよ。」


机の上に積まれた未処理の書類は締め切りが明日までの物がそのほとんどであり、ここまでどうやって溜めたのかと思うくらいに大量だった。これはどう考えても徹夜は必至だ。それはつまり今から銀時を可愛がれない訳で。俺は心の中にふつふつと湧き上がる総悟への軽い殺意を無理矢理押し込めると、寝そべったままの銀時に向き直った。銀時は俺がいつも仕事で忙しいことをちゃんと分かってくれてるみたいで、ちらっと机の上を見た。


「土方、今日も仕事たくさん残ってんだろ?副長さんは大変だね。俺、お前のこと尊敬するわ、ほんとに。」


江戸の街を護ってんだもんな。偉いよね、土方は。仕事していいよと銀時は綺麗に微笑むと、頬杖をついた格好のままで俺を見上げた。そんな風に言われたら。そんな風に分かってもらえたら。嬉しくて嬉しくて堪らない。抱き合うだけが全てじゃねぇんだな。勿論銀時を俺の腕の中で思いっ切り愛してやりてぇと思う。だけどその笑顔を見たら。いつもちゃんと心で繋がってるって思える。ただ安心できる。


「…なるべく早く終わらせる。」

「いいよ、気にすんなって。…仕事してる土方って男っぽいから、見てて飽きねぇし。」


銀時は嬉しそうに呟くと、寝そべって立てていた両足をぱたぱたと動かした。くそっ、何なんだよ。すげぇ可愛い。銀時の奴、無意識に誘ってんじゃねぇだろうな。俺とそう歳も変わらないはずだっていうのに、俺の恋人は一々仕草が可愛い。今だって頬杖ついて足ぱたぱたさせてんだぜ。本当に可愛くて目が離せない。銀時に触れたい気持ちが俺の心の中で一杯になる。だが今は、理性を働かせて何よりも先に仕事をしなければならない。俺は落ち着けと深呼吸をすると、銀時に悪ぃなと謝って残りの仕事に取り掛かった。



*****
愛しい銀時と一緒に居る訳だから、どうしても途中で顔が見たくなったり話したくなったりする。それはもう仕方がねぇよな。振り返る度に銀時も俺の気持ちに応えて返事をくれるから、なかなか思うように仕事は進まなかった。恋人に触れることを我慢して時間外に仕事をしている自分は本当に良くやってると、俺は自分を褒めたくなった。


「なぁ、土方。」


不意に銀時が俺の名前を呼んだ。俺は筆を動かしていた手を止めると、どうかしたかと銀時の方へ体を向けた。銀時はいつの間にか布団から起き上がって静かにその上に座っていた。そしてすぐ隣に敷かれてある俺の布団の近くまで移動すると、俺の掛け布団をぽんぽんと叩いた。


「…布団の中で仕事ってできねぇの?やっぱ俺、せっかくここに来たんだし、もっと…お前の近くに……居たいっつーか。」

「銀時…」

「自分でも何言ってんのって思うけど…だけどさ。」


恥ずかしくなったんだろう、そのまま俯いて口ごもってしまった銀時を俺はそっと腕の中に包み込んだ。突然のことに銀時の肩が小さく揺れたが、すぐに安心したように俺の胸に顔を寄せてきた。こんな風に甘えられると幸せ過ぎてどうにかなりそうになる。銀時にはこんな風にもっともっと俺に甘えて欲しい。俺は銀時の背中に回した腕にもう一度力を込めると、それからゆっくりと腕を解いた。そして机の上にあった書類の束を畳に置き、そのままゆっくりと布団の中に入った。俺が自分の布団に入ったのを見て、銀時も少し照れくさそうにしながら掛け布団を引っ張った。お互い自分の枕に腕を乗せてうつ伏せになると、すぐ側に愛しい人を感じられた。


「…やっぱ…こっちのがいい。」

「そうだな。俺も同じだ。…なぁ、銀時。今が冬だったらもっと良かったのにな。」

「え…?何で?」

「だってよ、もっと寒けりゃお前を湯たんぽ代わりに抱き締めて、俺の布団の中で一緒に寝られたじゃねぇか。」

「…冗談言ってねーでさっさと仕事しろよ。」


ほんと今が冬じゃなくて良かった。銀時は仕事を再開した俺を見つめながら呟いたが、うっすら赤くなっている顔が可愛くて愛おしかった。


それから布団に入ったままで俺は黙々と仕事を続けた。書類に目を通した後、必要事項を記入したり署名や捺印を押している俺を銀時は隣で物珍しそうに見つめ、この書類って何書いてんの〜とじゃれてきては、時々俺の手から書類を取り上げようともした。銀時の部屋やホテルに泊まったりする時はすぐに体を重ねるけれど、今日みたいに寄り添い合って温もりを感じるのもいいもんだと思えた。


「ひじかた…」


再び名前を呼ばれて、集中していた俺は書類から目を上げた。隣に居る銀時に視線を移した俺の口元に自然に笑みが浮かぶ。銀時は布団からはみ出している俺の着物の裾を掴んで、いつの間にやら静かに目を閉じていた。


「ひじ、かた…」


俺は幸せそうな寝顔に口付けを落とすと、起こしてしまわないように銀時の指を解いた。そしてそっと立ち上がって部屋の灯りを落とした。それから書類と一緒に机から持って来たスタンドライトの電源を点けると、再び布団の中に入った。書類から視線を移すと、すぐ隣には仄かな灯りに照らされる銀時が居て。俺は心の中で幸せを噛みしめるように目を細めると、おやすみと耳元で優しく囁いた。






END






あとがき
土銀は真選組公認の仲だとすごくいいなぁと思います♪皆フレンドリーで銀ちゃんが頻繁に土方さんの部屋に泊まるのも大丈夫な感じだと萌えます^^まぁそうなると、余計な心配をした土方さんが周りに目を光らせなければならなくなりますが。


今回は布団の上でごろごろする可愛い銀ちゃんが書きたかったので、書くことができて楽しかったです。銀ちゃんの頬杖上目遣いは正義です!


読んで下さいましてありがとうございました。

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あきゅろす。
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