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コンフリクトな感情論
学パロです

学校帰りに雨宿りする高校生な2人です




想いが叶って付き合うことになって、好きな奴と一緒に居られるだけで今は十分だ。いつも自分にそう言い聞かせているというのに、欲ばかりがどんどん溢れ出て来てしまう。もっと触れたい。手を繋ぎたい。キスしてみたい。俺の前だけで笑ってくれ。俺のことだけ考えていてくれ。そして俺だけに全てを見せて欲しい。そんな欲が。今だってそうだ。綺麗でも何でもない雨空なんか見上げてねぇで、俺の方だけ見てろよ。思わず喉元まで出掛かった言葉をグッと飲み込んで、俺は少し離れて立っている銀時を見た。もっと近くに来てくれねぇかなと思いながら。俺の好きなふわふわの髪は水分を含んで頬や額にぺたりと張り付いている。銀時は雨に濡れた前髪を摘まんでくるくると指で遊びながら、重い灰色の空をじっと見ていた。



「ほらよ。銀時、これで拭け。」


こいつは見た目の雰囲気通りにどこか抜けた所があるからなのか、普段からハンカチとかタオルとかそういった物なんて何も持ち合わせちゃいない。俺は通学鞄にしている肩掛けのスポーツバッグからタオルを取り出すと、隣に立っている銀時に風邪引いちまうだろ、と手渡した。本当は、少しでもこっちを向かせる為というのが本音だった。


「あんがと、土方。」


銀時は俺の手から水色のスポーツタオルを受け取ると、そのままゆっくりとした動きでしっとり濡れている銀髪を拭い始めた。


「それにしてもさ、突然降って来たよね。天気予報じゃあ、今日は大丈夫って言ってたのに。」

「ああ、そうだな。おかげで酷く濡れちまった。」


銀時は隣で黙々と手を動かしていたが、俺の方に向き直ると、あ、と気付いたようにぱちっと瞬きをした。


「俺ばっか拭いてっけど、お前は大丈夫なの?」

「俺は大丈夫だ。心配しなくていい。」

「けど、土方だって結構濡れてんじゃん。そうだ!代わりに俺が拭いてやるよ。」

「いや、いいって、銀時。」


遠慮すんなよと楽しそうに目を細めると、銀時はタオルを持ったまま悪戯っ子の顔で俺に近付いた。やめろ、それ以上近付くんじゃねーよ。俺は咄嗟に銀時から視線を外そうとした。だけど、俺も男だから結局それは無理だった。下に黒のTシャツを着ている俺とは違って、銀時は着替えが面倒だからと言っていつも制服のシャツ1枚だけなのだ。必死で見ないようにしていたのに。考えないようにしていたのに。濡れたシャツ越しに透けて見える白い肌に俺はくらくらと目眩がした。このまま腕を伸ばして目の前の体を抱き締めて、その唇を奪ってしまいたかった。


「大人しくしてろよー。」

「やめろ。」


これ以上自分の中の欲を抑えていられる自信がなくて、俺は楽しそうに近付いてきた銀時を思わず突き飛ばしていた。勿論力は込めてなかったが、よろめいた銀時は後ろのベンチに足をぶつけた。今俺達が居るのは通学路の途中にある、コンクリートの壁に囲まれた屋根付きのバス停だ。休憩用に古びたベンチも置いてある。銀時はそのベンチにぶつかった訳だった。田舎だからかバスを利用する奴も少なくて、雨宿りをしている俺と銀時以外に誰も居ない。雨音だけが嫌に耳に響く静かな空間だった。


「土方…」


びっくりしている銀時の顔。初めて見るどこか傷付いたようなその表情に俺の中で後悔の波が押し寄せた。傷付けたくなくて、怖がらせたくなくて、幻滅されたくなくて、必死で欲を押し殺してきた結果がこのザマだった。


「…銀…時、悪かった。」


振り絞るようにして出した声は、自分でも驚くくらいに何とも情けない物だった。すまないと謝る俺に銀時はそんなのいいからと慌てた表情になった。


「別に怪我したとかじゃないからね。…ふざけてたのは、俺の方だし、寧ろ謝るのは俺じゃね?気分悪くさせちまって…」

「違う!」


お前は謝らなくたっていいんだ。付き合ったばかりで一緒に居られるだけで幸せなのに、それ以上のことを望んでる俺の方が悪いんだ。


「土方…?どうしたんだよ?」


銀時にそっと両手を握られて、俺は大きく目を見開いた。何か言いたいことがあんなら、ちゃんと聞くから。心配だよと赤い瞳に覗き込まれてしまえば、少し冷えた手に優しく包まれてしまえば、もう駄目だった。こいつがただ愛しくて、大切にしたくて、でも、だからこそもっと先に進みたかった。


「まだ、キスだってしてねぇし、別にそれは、その、いいんだが…俺はお前を傷付けたくねぇし。でも、俺の中には欲みたいなもんがあって…お前をもっと…」

「心配しなくていいよ、土方。俺だっておんなじ。」

「銀時…?」

「付き合ったばかりだからとか、男同士だとか、俺からキスしてもいいのかなとか、そういうことが頭の中でさ、いつもぐるぐる。」

「銀時…」

「がっついたら、土方に嫌われちまうかもって思ってたし、俺からってのもやっぱそれなりに恥ずかしくてさ…だから俺も何も言えなくて…付き合ってるってのに、全然そういうこと、してなかったよな。」


俺だけじゃなかった。銀時も同じように悩んで、その先を望んでくれていた。手を繋いでキスしてひとつになって。俺とのこれからを考えてくれていたことが嬉しくて嬉しくて堪らなかった。


「ありがとな、銀時。」


考えてみたら俺らまだまだ若いんだから、別に自分に素直に生きてもいいんじゃない?銀時は子供っぽく笑うと、俺に応えるように小さく頷いた。そして真っすぐに俺の所に来ると、じゃれるように俺の首元に頬を寄せた。


「ってことだから、後はよろしく、土方くん。」

「ああ、上等だ。」


俺はまずはお前のキスが欲しいんだけど?艶っぽく輝く銀時の瞳は確かにそう告げていて。俺はまだ少しだけ濡れている銀色の髪に指を絡めながら、銀時に口付けた。初めてのキスは甘くもなくて、抱き締めた体は雨のせいでいつもより冷たくて。けれども大好きな銀時の存在を強く感じられて、空は泣き顔だってのに、こんな始まりも悪くねーなと俺の気分は最高だった。






END






あとがき
男子高校生な土方君の頭の中は常に銀ちゃんのことで一杯で、そういうことばかり考えているんじゃなかろうかということで、学校帰りの雨宿りのシチュエーションと絡めて書いてみました。


雨に濡れて髪がぺたっとなってる銀ちゃんは本当に可愛いので、そんな銀ちゃんを妄想できただけで満足です^^


読んで下さってありがとうございました♪

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あきゅろす。
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