優しい手の温もり 4(完結)
銀時は居間の机の上に置かれたリボンをじっと見つめていた。
土方の部屋から万事屋に戻って1日が経った。銀時は土方から貰ったリボンをそっと手の平に乗せる。彼が、猫であったとはいえ、自分の為に用意してくれたものだ。だから結局あの時持ち帰ってしまった。そして今でも大切に手元に置いている。
銀時はそのままリボンを左手首に結び付けた。少しでも土方に関わるものを身に付けていたいと思ったからだ。それに、今度彼に会ったら自分の気持ちを伝えたいとも思っていた。良くも悪くも猫になって、自分の気持ちが分かった。猫の姿の銀時が土方に勇気を与えたように、このリボンが銀時には、土方に自分の気持ちを伝えるよう促していると感じられた。
俺も踏み出さなくちゃなと思いながら、銀時はリボンをそっと一撫でした。
*****
「うぅ、あちぃ〜。本当にあいつら人使い荒いよな。」
銀時はあのまま部屋でごろごろしていたのだが、暇なら買い物にでも行ってこいと、新八達に言われて、渋々出掛けていた。買い物が終わってスーパーを出ると、大分日は傾いていたが、まだまだ暑さは残っていた。
ゆっくり通りを歩いていると、銀時が会いたくて、でも会ったらどうしようと思っている人物が近付いてきた。昨日の今日で会うとかって土方、こういう時だけタイミングいいのな。土方も銀時に気付いたようで、こちらによぅ、と挨拶してきた。
「万事屋、…久しぶりだな。」
「あ、うん…。」
本当は今までずっと一緒に居たとは言う訳にもいかず、銀時は曖昧に笑った。
「買い物か。大変だ…」
言いかけて、土方の視線が自分の左手首で止まったことに銀時は慌てた。やばい。土方のリボン、そのままだった。
「そのリボン…お前、何でそれを持ってるんだ?だってそれは俺が…」
土方が訳が分からないといった様子で銀時を問い詰める。銀時の方もこの場をやり過ごすことのできるような上手い言い訳を見付けることができず、土方に本当のことを話すしかないと腹を括った。だって俺はお前にこの気持ちも伝えなきゃいけないんだ。銀時はまっすぐ土方を見つめると、この1週間の出来事を話し始めた。
*****
「おい、じゃあ、白銀はお前だったってこと…だよな。」
「まぁ、うん。」
「じゃあ、俺があいつに喋ってたことは全部、お前…」
「うん、聞いてた。」
まじかよ〜と土方は頭を抱えた。今までの自分の言動を思い出したらしく、その顔は真っ赤に染まっていた。土方が落ち着くのを待って、銀時は左手首を彼に見せた。
「これ、ありがとう。俺にとって大切なものだから、こうして身に付けてるんだぜ。」
「万事屋、それって…」
「俺さ、猫になってお前に撫でられてさ、お前の手の温もりが心地よくて、すごく安心できたんだ。お前の優しさが伝わってきた。だから元に戻ったら言おうって思ってた。…俺、土方のこと好きみたいなんだよね。」
土方の表情が嬉しそうに歪む。そして銀時を優しく抱き締めた。
「俺もだ。…お前が好きだ。ありがとう。」
自分の気持ちをを伝えて良かった。猫になってこれは良かったってことなのかな。銀時は土方の腕の中でそんな風に思った。
2人はここが往来であることも忘れて、いつまでも抱き合っていた。
*****
「万事屋、俺このまま上がりだから、今から甘いもんでも奢ってやるよ。」
「やった〜、嬉しい。土方愛してる!」
愛してるの言葉に土方は再び顔を赤くしていた。
「ねぇ土方。俺達もう恋人だよね?だったらさ、その、名前で呼んで欲しいんだけど。いつまでも万事屋だとさ…。」
銀時の言葉に土方は慌てていた。名前を呼ぶのはやはりまだ照れくさいのだろう。
「お前、俺が猫の時、普通に呼んでたじゃんよ。あ、それか…白銀でもいいぜ。」
そう言って銀時はにやりと笑った。土方の顔は若干引きつっていたが、分かったよと溜め息を吐くと銀時の耳元に唇を寄せた。
「銀時。」
耳元で響く土方の甘い低音の声と息遣い。思わず耳を押さえそうになった銀時の手を掴むと、これでいいだろと言って土方は銀時の手を握って先を歩き出した。銀時には彼の表情は窺えなかったが、赤くなっている耳が目に入った。
好きな人と同じ目線で、同じ歩幅で、こうして一緒に歩いていける。
これが幸せなんだな。
銀時は温かい気持ちがじんわりと胸に溢れてくるのを感じた。
「お前、何か嬉しそうだな。」
「うん。土方のおかげだよ。」
銀時は土方に優しく微笑むと、そっと彼の手を握り返した。
END
あとがき
ぬこ銀ちゃんのお話完結です。
原作でも銀ちゃんが猫になっちゃうものがありますので、何番煎じだよって感じですが…
最近春になってテレビでも動物特集が多いですが、その影響と勢いで書いちゃいました(^ε^)
私は銀ちゃんは猫になったら、とても美人さんだと思っているので、土方さんが誘拐…じゃなかった、連れて帰ってしまうのも無理ないと思ってます。
あとネーミングセンスの無さは笑ってやって下さい(^^;)全然いいのが浮かびませんでした。
読んでいて気付いた方も多いと思うのですが、銀ちゃんが元の姿に戻ったのは、土方さんにキスしたからです。最初は1週間したら戻るようにしようかとも思ったのですが、自分から好きな人に口付ければ戻ることができる方にしました^^やっぱりこういうのが好きなので。
ぐだぐだ設定ですが、ここまで読んで下さり、ありがとうございました(=^▽^=)
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