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Washing,Sunny day
りょう様から頂いた3周年記念リクエストで『銀ちゃんが土方さんの服を洗濯する』お話です




「おはようございます!銀さん。」

「…はよ。新八、お前、相変わらず早いし、テンション高けーな。朝からどこにそんな元気あんの?」

「今日はいいお天気なんですよ。だからもっとシャキっとして下さい。」


銀時は座っていたソファーからのそりと立ち上がると、居間に入って来るなり明るい声で挨拶をした新八を気だるそうに出迎えた。家事をさぼりがちな銀時と神楽に代わって新八が掃除や洗濯、買い物など万事屋の家事の大部分を引き受けており、そのせいで彼がこんな風に朝早くから来ることは最早当たり前の日常だった。


「眠そうな顔してますけど、そう言う銀さんだって今日は早起きですね。」

「…まあ、ね。神楽ならいつものことだけどまだ寝てっから。あ、それと、今日俺…洗濯するから。」


洗濯をするという銀時の言葉に新八はどういう風の吹き回しだと驚いた表情を見せた。


「いつも僕がやるのに、っていうかやらされてるんですけど。でも銀さんが自分で洗濯するって言うなんて珍しいですね。」

「は?新八君、何言ってんの?お前もいつものように洗濯すんだよ。」


お前は万事屋の一員なんだから当たり前だと銀時は腕を組んで頷いた。


「えっ?結局いつも通り僕がやるんですか?じゃあ銀さんは何で…あー、なるほど。そういうことですか。だから銀さんが…」


新八は小さく息を吐いた後、納得したような表情を見せた。


「うっせーな。俺だって別に、好き好んであいつの服…あっ、…」


自分からうっかり失言してしまったことに気が付いて、銀時は慌てて口を噤むとバツの悪そうな顔になった。銀さんも色々と大変ですね。新八に何とも言えない生温かい目で見られてしまい、居心地の悪さを感じた銀時は俺が終わったらお前は俺が溜めてた分洗っとけよと新八に命令して、洗濯機が置かれている風呂場へと足早に向かった。





「…ったく、何で俺が自分の家で居心地悪い思いしなきゃなんねーの。」


銀時は不満そうに呟きながら、洗濯機の横の洗濯かごの中に綺麗に折り畳まれている自分の物ではない着物を掴んだ。


「土方の奴…」


銀時は手に取った土方の私服をまじまじと見つめた。これからこの着物を洗濯する訳だが、洗濯物が隊服でなくて良かったと思う。あれはどう考えても絶対にクリーニング行きだろう。あんなかちっとした隊服は家の洗濯機で適当に洗ったら大変なことになるに決まっている。ヨレヨレにしてしまって何やってんだよと文句を言われたくはない。勿論クリーニング代だって出したくない。それに比べて普段着の黒の着流しならば、そこまで気にしなくて大丈夫だろう。そんな風に考えながら銀時は土方の着流しを洗濯機の中に入れようとして、その手を止めた。


「…うっわー、いつも思ってたけどさ、やっぱ煙草くせーんだけど。この柔軟剤入りのフローラル?の香りの洗剤使っとくか。」


新八が特売で安く買えたと喜んでいた液体洗剤。銀時は手を伸ばして可愛らしいキャラクターが描かれたボトルを備え付けの棚から取り出した。花の香りがする鬼の副長を想像すると笑えるなと楽しそうに忍び笑いを浮かべながら。そして目盛りのついたキャップにピンク色の洗剤を注ぐと、銀時は昨日土方が身に着けていた物をぽいぽいと無造作に洗濯機の中に入れていった。


「下着まで洗ってやるとか夫婦かよ。つーか俺は別にあいつのパンツとか触るの全然恥ずかしくないからね。新婚じゃねーんだし。……いやいや何考えてんの、俺。新婚、とか…」


自分で口にした言葉に急に恥ずかしくなってしまい、銀時は土方の黒のボクサーパンツを洗濯機の中に勢い良く突っ込むと、スタートボタンを連打するように押してその場にしゃがみ込んだ。洗濯機の稼働音が狭い空間に静かに響き始める。銀時はその音を聴きながらゆっくりと立ち上がった。


「朝から何やってんだか…」


数時間前で一緒に過ごした恋人は、これからは俺の着替え、ここに少し置かせてもらうからなと以前銀時の部屋に置いていた予備の隊服に着替えて朝早くに万事屋を出て行った。昨日着ていた着流しやら下着やらは当然お前が洗濯してくれるだろ?と思っているのだろう。一緒に暮らしている訳ではないのに何でわざわざ俺が…と心の中で文句を言いながらも、大切な人の服を洗濯するのは存外悪くないのかも思ってしまった自分には苦笑するしかなかった。


「銀さーん、僕、これから買い物行って来るんで。土方さんの分の洗濯が終わったら、銀さんの分、やっておきますから。」


廊下の向こうから新八の声が耳に届き、先ほどまで頭の中を占領していた恋人の顔が薄らいでいった。銀時は新八に分かったと返事をすると、今ここには居ない恋人に向かって小さく言葉を紡いだ。


「感謝しろよな、土方。」


銀さんのありがたみがちゃんと分かってんのかな、と銀時は不満そうな口振りであったが、その眼差しは木漏れ陽のような温かい優しさに溢れていた。



*****
ベランダで土方の洗濯物が穏やかな風に揺れている。綺麗にしわを伸ばして洗濯バサミで留めて、青空が近いベランダに洗い終わった物を干せば、土方の為の洗濯は終わりだった。銀時はベランダの入り口に寄り掛かり、自分のすぐ隣でたった今洗濯物を干し終えた新八を見やった。


「真面目に洗濯したの久しぶりかもな。」

「銀さん、これからはもう少しちゃんとして下さいよ。いい大人なんですから。」


当番制の意味がないですよ、と呆れた顔を見せる新八を適当にあしらっていると、おはようアルと、神楽が洗濯かごを脇に抱えてベランダに出て来た。


「2人共騒いで何やってるアルか?」

「騒いでたんじゃなくて洗濯物干してたんだよ、神楽ちゃん。神楽ちゃんも今から干す?」


新八の手によって銀時の分の洗濯が終わった後、神楽は自分の洗濯物を入れて洗濯機を回していたのだ。いくら神楽が家族のような身近な存在であったとしても、さすがに新八も年頃の女の子の下着を洗濯することは無理であった。つまるところ、万事屋の洗濯事情はそんな風になっていた。


「私も自分の分干すネ!」

「おー、干せ干せ。」


銀時に頷くと、神楽は洗濯かごを下に置いて何かの鼻歌を歌いながら洗濯物を干し始めた。


「それにしても、土方さんの服が干してあるなんて、不思議な感じですね。」

「そのまま放置する訳にもいかねーだろ。俺が洗濯するしかないじゃん。」

「そりゃそうですけど。でも銀さん、嬉しいくせに。」

「はぁ?」


突然の新八の言葉に動揺したせいで声が裏返ってしまい、銀時は誤魔化すように咳払いをした。


「ちょっと新八くーん、朝から何言って…」

「何だか土方さんがこの場所も大切してくれてるみたいじゃないですか。生活感が出せる所だ、っていうか、銀さんに任せとけば大丈夫だって思ってる感じですし。」

「銀ちゃん、頑張って嫁の仕事したアルか?」

「神楽、違うからね!俺は嫁じゃないからね!」

「嬉しいアルな、銀ちゃん。」


そうでしょ?と子供達から楽しそうに言われてしまえば、逃れようもない。銀時は頭を掻いてそっぽを向きつつも、小さく頷いていた。


「うっ……そう、だな。確かにこういうの、悪くねーかも。」


銀時と神楽、そして土方の洗濯物が並んで風に揺れている。まるで1つの家族みたいに。新八と神楽は嬉しそうな顔で銀時を見た。だが神楽はニヤリと悪い笑顔になると、お前だけ仲間外れネ、と隣に立っていた新八をからかい始めた。銀時はそんな2人のやり取りに笑みを洩らすと、風にはためく黒の着流しに視線を移した。あいつがいいって言うんなら、次は隊服が汚れた時に綺麗に手洗いでもしてやろうかな。土方が聞いたら大喜びしそうなことを考えながら、一仕事終わったなー、朝ご飯食べるか、と銀時は青空に向かって大きく伸びをした。





END






あとがき
りょう様のリクエストを基にお洗濯する銀ちゃんのお話を書いてみました。土方さんが全く登場しなくて万事屋親子の日常っぽくなってしまいましたが、どこか少しでも気に入って頂けると嬉しいです(*^^*)


今回は銀ちゃんに土方さんの私服を洗ってもらいました(洗える着物な設定ということで;)土方さんのあの隊服は普通にお洗濯するのは難しいのかなと思いまして。色々と捏造しながら書いていましたら、万事屋と真選組の洗濯事情がすごく気になってしまいました^^


銀ちゃんが途中でお花の匂いの副長さんを想像して笑っていましたが、あの時は自分も同じ匂いの服だと気付いていないんですよ。そんな銀ちゃん可愛いなぁと思って入れてみました。神楽ちゃんは10代の女の子なので、自分の分は自分で洗っている設定にしてみました。とりあえず土方さんが万事屋親子にナチュラルに受け入れられているのっていいですよねvということが伝わればいいなと思います。


りょう様、この度はリクエストして下さいまして本当にありがとうございました!

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