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所有の証に
短いですが白骸記念日文として書いてみました




それは、突然の彼の言葉。


「…タトゥー、ですか?」


先ほどまでベッドの中で微睡んでいた骸は、気だるげな体を動かして隣に寝そべる白蘭を見た。昨日の夜は白蘭の部屋で一緒に過ごし、そのままいつもの如くなだれ込むように体を重ねたのだった。


気が付けば自分は真新しいシャツを着ており、仄かにボディソープの香りもしていて、白蘭が自分を清めてくれたのだと、骸は酒やら何やらでぼんやりとしている頭で理解した。


「…うん、タトゥー。骸君は蘭の花、僕は睡蓮の花。」


いきなりどうしたのだろうかと、骸は思った。白蘭の考えや行動は普段からも読めないことが多いのだが、今回は特にそうだと感じた。


「骸君はさ、ボンゴレの人間で、今だって気まぐれで僕に付き合ってくれてるんだろうけど。…でも、僕は本気だから、これからも君を離したくないんだよ。そう考えたらさ、強引にでも僕のものだっていう印っていうか、証を刻みたいって思ったんだ。」


同じようにベッドに寝転んでいた白蘭は、骸のすぐ近くで両肘をついたまま弾んだ声でそう言った。しかしその声とは裏腹に、彼の瞳の奥は不安でゆらゆらと揺れており、心なしかその肩が小さく震えているように骸には感じられた。いつも自信たっぷりな彼は見る影もなく、初めて見るような白蘭の姿に骸は戸惑ってすぐに言葉が出て来なかった。だがそれ以上に骸を困惑させたのは、自分が気まぐれでこんなことをしていると白蘭に思われていることだった。気まぐれな訳がないじゃないですか。僕が誰かに簡単に肌を許す訳がない。白蘭、あなただからなんですよ。骸は白蘭を見つめたまま心の中で静かに呟いていた。


「…分かりました。一応考えておきましょう。それで、そのタトゥーはどの部分に?」


骸が了承したことがよほど嬉しかったのか、骸君、いいの?と白蘭は明るい表情を浮かべて骸に向き合った。


「色々考えたんだけど、やっぱり僕達しか分からない所がいいと思うんだ。」


その囁きと共に白蘭は、シャツの上から骸の背中のラインをそっと指で辿り始めた。優しく触れてくる白蘭の指の動きは骸に甘い疼きをもたらし、昨夜のことが一気に蘇りそうになって顔が熱くなった。そのまま背中を辿っていた白蘭の細い指がある所でぴたりと止まる。それはちょうど右の腰骨の辺りだった。


「ここら辺なんてどうかなぁ。後ろから座ってる君を抱き締めて、服を脱がせた時にちょうど見える位置。ねぇ、どう思う、骸クン?」


ふふっと笑いながら尋ねてくる白蘭の甘い雰囲気に、骸は何も考えられなくなっていた。勿論昨夜の疲れも影響していただろうが。


「……別に、良いのではないですか。僕達にぴったりだと思いますよ。」

「ありがとう、骸君。…うん、嬉しいなぁ。あ、でも今すぐじゃなくていいからね。準備とかもあると思うし。」


だからさ、今は。白蘭の声が耳元で響いたと思った瞬間、骸は白蘭の腕の中にいた。背中からそっと抱き締められていたので、白蘭の表情は窺い知れなかった。しかし白蘭からは嬉しそうで温かな雰囲気が伝わってきて、骸はほっと安堵の息を吐いた。もう先ほどのように不安で揺れている訳ではないようだ。良かったと思わずにはいられなかった。


「これで我慢するよ。」


何がですか、骸は白蘭にそう問い掛けようとした。しかし首筋に温かなものを感じ、それは不可能になった。


「…あぅ……ちょっ、白…蘭。あっ、止めて下さい…」


骸の制止など聞こえないとでもいうように、白蘭は骸の首筋を再び強く吸った。自分が骸をどれだけ想っているか、それを分かって欲しいとでもいうように。白蘭の口付けは長い時間のようで一瞬のことだった。そっと白蘭の唇が離れる。骸の白い首筋には、赤い赤い花が咲いていた。


「骸君…君はずっと僕のものだからね。これからも、ずっとだよ。」


優しい微笑みが骸のすぐ目の前にあった。恥ずかしさは最早感じず、白蘭に抱き締められている幸福だけが骸を満たしていた。白蘭に抱き締められながら、骸はそっと首筋の所有の証に触れた。


白蘭、何を言ってるんですか。当たり前でしょう、本当はタトゥーやこんなものなどなくても、僕はとっくにあなたのものなんですから。あなたがそうであるように、僕もあなたが好きなのだと伝えなければいけませんね。僕はただあなたの喜ぶ顔が見たいのですから。


「白蘭…あなたに今すぐ伝えなければならないことがあるんです。」

「うん、な〜に?」

「白蘭、僕は…」


あぁ、早く伝えなければ。僕はあなたのものなのだと。あなたが好きなのだと。幸せそうな白蘭の顔がもうすぐ見られることに骸の心は嬉しさで満ち溢れていた。






END





あとがき
11月12日は白骸記念日ですし、せっかくなので大人な2人を書いてみました。お互いに大切な証として、消えないタトゥーを入れようとする白骸いいなぁと思いましてv


2人が出会って恋に落ちて幸せになるのは必然だったんだなーといつも思ってます^^これからも2人には幸せでいて欲しいです!


読んで下さいましてありがとうございました。

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あきゅろす。
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