[携帯モード] [URL送信]
チョコレートホリック
白蘭が骸のお世話を頑張っています

骸のキャラ崩壊が激しいです;;




あれは同盟を組んでるボンゴレファミリーとの定期的な会合でのことだったと思う。あの時は会合が終わっても、僕は席を立つことなく綱吉君と他愛もない世間話をしていた。そのままの流れで何故か好きな人の話になって。僕はずっと胸の中に秘めていた想いを隣に座っている彼に思い切って話したんだ。


「僕、実は、綱吉君の所の霧の守護者の…六道骸君のことが好きなんだよね。…驚いたでしょ?」

「いや、別に驚かないよ。」

「えっ…!?」

「だって骸って白蘭の好きそうな感じだしなぁ。そっか、骸のことをね。…白蘭にだったら、骸のことは任せられるよ。」

「本当にっ!?」


僕は思わず椅子から立ち上がりそうになっていた。綱吉君は何かと骸君のお世話をしているとよく話していたから、お母さん的な彼が認めてくれるということはチャンスはあるのかも、と僕は嬉しくなった。そんな僕に、だけど、と綱吉君は複雑そうな声を出すと、隣で馬鹿みたいに舞い上がっていた僕を見た。


「1つだけ問題があってさ。…白蘭の中の骸ってどんなイメージ?」

「え…?骸君の?」


突然の綱吉君の質問の意図が掴めないままに、僕はう〜んと顎に手を当てた。僕の中の彼のイメージかぁ。


「僕は骸君のプライベートはあんまりよく知らないけど…仕事もプライベートも完璧な感じはするよ。何でもクールにこなしちゃうってイメージがあるなぁ。」

「やっぱり、白蘭もそう思うよな。骸のあの雰囲気じゃ…」


何故かうっすらと遠くを見るように綱吉君は話した。僕、何かおかしいこと言ったかな?だって骸君って美人だし、何でもできそうな見た目じゃん。現に仕事は完璧みたいだし。


「白蘭の言うように仕事は文句なしに完璧だよ。だけどさ、私生活は壊滅的っていうか…本当に何もできないんだよ。」

「…そう、なの?」


驚いちゃった。骸君は何でも完璧だと思っていたのに。仕事以外は生活能力皆無ってこと?意外過ぎるよね、これは。


「でさ、俺がこんなこと言うのも…って思うんだけど…白蘭にさ、骸のこと任せるから、色々と気にして欲しいんだ。俺も白蘭になら、信頼できる俺の友人だし、骸を幸せにしてもらえると思ってる。」


時間のある時でいいから、これからよろしく頼むよ。俺も2人のこと応援するから。実年齢より幼く見えるつぶらな茶色の瞳で頼まれてしまえば、僕も黙って頷くしかなかった。というより、骸君のお世話なら例え頼まれなくても進んでするけど。


「安心して僕に任せてよ!僕は骸君が大好きだから。彼の為なら何でもするよ♪」


こんな風に骸君の知らない所で、僕は骸君に近付きたい一心から彼専用のお世話係になったんだ。



*****
玄関のドアを開けて出て来た骸君は、何故あなたがここに…っていうような顔で、じとりと僕を見た。だけど僕はそんなことくらいじゃめげないもん。片手にマーケットで買い込んだ食材が入った紙袋を抱えたまま、僕は骸君に笑顔を向けた。


「やっほ〜♪骸君、今日お仕事お休みなんだって?実は僕もたまたま休みでさー。それでね、せっかくだから君にご馳走でも作ってあげようかなぁって思って来ちゃった♪」

「だから白蘭、何故あなたが…」


骸君が戸惑うのも無理ないよね。でも僕は骸君のお世話をするって決めたんだ。そして骸君に喜んで欲しいし、少しずつでいいから僕を必要だと思って欲しい。まだ玄関先で困惑している骸君に悪いと思いながらも、僕はおじゃましまーす♪と靴を脱ぎ、リビングを抜けてキッチンに向かった。ついでに部屋の中の全体をチラッと見てみたけど、別に物が散乱してたりゴミで溢れてるなんてことはなかった。どちらかというと、必要な物以外は全く何も置かれていない感じの極端にシンプルな部屋だった。良かった、骸君、とりあえず掃除はちゃんとできるみたい。僕はホッとしながら、買って来た野菜やデザートなんかを冷蔵庫の中に入れようとドアを開けて、目の前の光景に思い切り目を丸くしてしまった。


「うそ!…チョコレートしか入ってないんだけど。」


冷蔵庫の中には、様々な高級店のチョコレートの箱が詰まっていた。あとはミネラルウォーターのペットボトルと、数種類のサプリメントの袋、味気ない固形の栄養機能食品だけ。チョコレート以外のまともな食べ物は全然見当たらなかった。以前聞いた綱吉君の言葉が僕の頭の中に浮かぶ。うん、これは本格的にマズいよね。


「骸君、これは駄目だよ…」

「何が駄目なのですか?」


返事がした方を振り返ると、キッチンの壁に体を預けるように骸君が立っていて、不思議そうに僕を見ていた。僕は急いで買って来た物を冷蔵庫に押し込めると、骸君の側に歩いて行った。


「骸クン!冷蔵庫の中、ほぼチョコレートしか入ってないんだけど…ちゃんとしっかり色んな物食べないと。」


僕もお菓子は大好きな方だけど、そればっかりじゃなくて三食きちんと食べている。僕の場合は食べること自体が好きだから、食事は大切な時間なんだ。それに自分でもそこそこ料理もできちゃうし。


「僕にはチョコレートさえあれば、それで十分です。チョコレートだけで生きていけますよ。」

「えーと…」


骸君は大真面目な顔で、すごいことを言い出した。確かに骸君、肌はツヤツヤだし、栄養が足りてないようには見えないけど、さすがにチョコレートだけじゃ…あれ?もしかして、チョコレートだけで大丈夫!ってことは、僕と何か体の構造が違ったりするとか…?いやいや、さすがにそれはないよね。そんな風にあり得ない想像をしていると、横に立っている骸君が黒いパンツのポケットからチョコレートを取り出して丁寧に包みを開くと、ぽいっと可愛い仕草でそのまま口の中に入れた。


「ちょっ、骸君!何食べてるの!」

「もう夕方も過ぎているでしょう?お腹が減りましたのでチョコレートを…」

「駄目!チョコレートは駄目だよ。待ってて、僕が今すぐご飯作るから。」


2個目を食べようとした骸君の手を握ると、僕は真っすぐに骸君を見た。


「骸君。あのね、これから時間のある時にだけど、こんな風に君のお世話をさせて欲しいんだ。これは僕が勝手にしたいだけだから、骸君は全然気にしなくていいんだからね。それから僕、料理はできる方だから、期待してくれると嬉しいな♪」

「白蘭…」


僕は骸君にウインクすると、彼の手を再び強く握り締めた。思った以上に僕が真剣な瞳を向けたからなのか、それともそのままキスできちゃうくらいに僕の顔が近かったからなのか、骸君は恥ずかしそうに顔を逸らした。その顔がすごく可愛くて、僕は胸がきゅんとした。


「…そこまで言うのでしたら、まぁ、その…悪い話ではないですし。そうですね、よろしくお願いします。」

「うん、ありがとう、骸クン!」


そんなの余計なお世話です。結構ですよ。そう言われたらどうしようって一瞬思っちゃたりしたけど、骸君が受け入れてくれて良かったよ。よーし、これから僕、頑張っちゃうもんね。僕は骸君の手を引っ張ってシックなダイニングテーブルの椅子に座らせると、骸君に笑い掛けて夕食の準備に取り掛かった。絶対に骸君に振り向いてもらうんだ。そして骸君のお世話係から恋人へと華麗に昇格してみせる。そんな風に心の中で強く決意しながら。



*****
僕は骸君の部屋で鼻歌を歌いながらのんびりと掃除機を動かしていた。今日は少しだけ帰りが遅くなりますから、とちょっと前に連絡を貰っていたから、夕食の準備の前に掃除をすることにしたんだよね。


「骸君ったら、またチョコレート…本当に困った子だよねー。」


多分チョコレートを食べたいだけ食べて幸せな気分になっちゃって、ゴミを捨てるの忘れちゃったままなんだろうなぁ。まぁ、そこが骸君の意外性っていうか、可愛い所なんだけどね。僕はテーブルの上の隅の方に積まれていたチョコレートの包みを手で掴むと、リビングのゴミ箱に捨てた。


「ん〜と、掃除はこれで終わりかな。」


僕は掃除機のスイッチを切ると、ほとんど何もない部屋を見渡した。以前骸君が食事中に言ってたんだけど、部屋に物を置き過ぎてしまうと、全然片付けられなくなっちゃうんだって。だから必要最低限の物しかこの部屋にはないらしい。何だか小さな子供みたいで可愛くて愛しいなぁ。僕は思わず笑みを零した。


「それに…」


僕はスーツのポケットからある物を取り出すと、そっと手のひらに乗せた。携帯の番号とアドレスが書かれた紙と一緒に貰った骸君の部屋の合い鍵。ないと色々と不便だと思いますから。そう言って少しだけぶっきらぼうに手渡されたけど、僕は胸が熱くなったんだ。これって、まるで僕、骸君の恋人みたいだよね?仕事で綱吉君に会った時に話してみたら、骸がそこまでするなんて珍しいな、白蘭、もしかしたらこれはいけるんじゃ…と嬉しそうに励ましてくれたんだ。綱吉君にそんな風に言われて僕も自信が湧いちゃってさ、僕って単純だから。そのまま鍵をポケットに入れると、夕食の準備をしようかな、と上着を脱いでカッターシャツの袖を捲った。あ、でもよく考えてみたらさ、僕がやってることって普通は彼女がすることなんだよね。僕は骸君の部屋に来て自分がしていることを思い出した。洗濯は骸君がコインランドリーを使ってるから違うとして、料理に掃除…あれ?ちょっと、僕は骸君の彼女じゃなくて彼氏になる予定だからね!お世話は好きでしてるから別にいいけど、そこだけは譲れない。


「まぁ、楽しいから今は目を瞑ろうかな。」


骸君、早く帰って来ないかなぁ。僕は骸君を待ちわびながらキッチンへと向かうと、今日の夕食はどうしようかなと弾んだ気分で冷蔵庫のドアを開けた。


それからほどなくして、僕の愛しの骸君が帰って来た。骸君はスーツからラフな服に着替えると、キッチンに居る僕のすぐ近くまで来た。そして僕の顔を覗き込むようにして顔を近付けてくる。眩しいくらいに綺麗な顔が間近にあって、僕はくらくらと目眩がしそうだった。


「今日は何を作ってくれるのですか?」

「僕も何にしようかなって考えてて…冷蔵庫の中を確認したんだけど、今日はオムライスにしようかなぁと。」

「オムライスですか?…それくらいなら僕にだってできます。」

「骸君?」

「いつもあなたに任せてばかりでしょう?たまには僕も手伝います。」

「えっと、大丈夫だよ。僕1人でできるから。」


僕は骸君の申し出をやんわりと断ろうとした。骸君と一緒に料理できるのは勿論嬉しいに決まってるけど、何か危ない気がするんだもん。


「僕だって料理くらいできます。…そこにある玉ねぎは僕が切りますから、あなたは挽き肉でも炒めていて下さいよ。」


みじん切りにしようと皮を向いてまな板の上に置いてあった玉ねぎを指差すと、骸君は真剣な顔で包丁を握った。まぁ、玉ねぎを切るくらいなら、さすがに骸君でもできるか。僕は骸君の隣に立って、とりあえずそっと見守ることにした。黙って包丁を握り締める骸君を見ていたけど、玉ねぎを切ろうとして振り上げた包丁がそのまま骸君の綺麗な指に深く突き刺さるのが僕の目に映った。


「骸君!」

「血が、出ていますね…痛いです。」

「そんなの痛いに決まってるじゃん!指切っちゃったんだから、骸君。」


おろおろしている僕とは正反対に淡々と呟く骸君の左手を勢い良く取ると、僕は傷付いた人差し指をそのまま口に含んだ。躊躇いのない僕の行動に骸君は驚いて目を見開いていたが、僕は気にすることなく骸君の指に舌を這わせた。


「白、蘭…ちょっと、何やって…」

「しょ〜どく♪」


僕の舌の動きに感じそうになったのか、骸君の目尻にはうっすらと生理的な涙が浮かんでいた。耐えるようにきつく目を閉じている骸君の顔は赤く染まっていて、僕の方がどうにかなりそうだった。


「やめ…、びゃく、ら…」


流れる血を舌で舐め取った後も、僕は我慢できずに細くて長い指を舌の上で丁寧に味わった。骸君をちらりと見ると、赤く染まった顔で耐えるように肩を震わせていて。駄目だ、これ以上はやり過ぎだよね。僕は骸君の指に小さく口付けてからそっと離した。骸君は我に返ると恥ずかしそうに俯いて、絆創膏を貼ってきますから、と慌ててリビングを出て行った。


「…甘かったな。」


骸君の指を舐めていた時に、すごく甘いと感じたんだ。勿論口の中は鉄の味が広がっていたんだけど、確かに骸君の指は甘かった。僕が注意してもいつもチョコレートばかり食べているから、骸君自身もチョコレートみたいに甘くなっちゃったんだろうか。僕は骸君に感じた甘さを思い出して酷く胸が震えて仕方なかった。



*****
僕が骸君のお世話をするようになって数ヶ月。ここ最近、僕と骸君の中で小さな変化が起こっている。その変化は僕にとっては嬉しくて堪らない歓迎すべき物で。他人にとっては大したことじゃないんだろうけど、僕には人生が薔薇色に感じられちゃうくらいに幸せなことだった。


今までずっと僕が食材を買って骸君の部屋を訪れていたんだ。だけどね、最近になってお互いの都合の合う時は一緒に買い物に行くようになった。しかも骸君の方から誘ってくれるんだよ。嬉しくて舞い上がっちゃっても仕方ないよね。骸君に美味しい野菜の選び方なんかを教えてあげると、僕の隣で嬉しそうに頷いてくれる。それに少しずつだけど、一緒に料理もするようになったんだ。相変わらず骸君は包丁が上手く使えないから、簡単なことしか手伝ってもらわないようにはしているけど、2人で作るのって本当に楽しいんだ。あ、そういえば、あの時のオムライスは結局全部僕が作ったんだよ。指を舐めたのはやり過ぎって後で怒られちゃったけど、やっぱり美味しかったですって、骸君は優しく笑ってくれたんだ。


今日も主に僕なんだけど、2人で作った夕食を囲んでいた。あぁ美味しーいと僕がおかずを食べていると、骸君が、あの…と躊躇いがちに声を掛けてきた。


「僕、この前仕事中にお弁当を買って食べてみたんです。」

「へ〜、チョコレート以外もちゃんと食べてるみたいで偉いよ。最近は冷蔵庫の中も色んな物が入ってるし、僕もほんとに安心してるんだよ。」

「…全然美味しくなかったんです。」

「まぁ、売ってるお弁当ってのは大体そんな物だよ。」

「あなたが心を込めて僕に作ってくれる物の方が…何倍も何倍も美味しくて…」

「っ、骸君…」

「ずっと僕だけの為に料理を作って欲しいです。…いえ、それだけではなくて…僕には、白蘭、あなたが必要なのだと思います。僕に一生懸命なあなたを見ている内に、これからもこんな風に一緒に居たいと思うようになりました。」

「…骸、くん。」

「……僕は仕事以外何もできない人間です。ですから、責任取って最後まで面倒見て下さいね。」


骸君の言葉が僕の心にじわりと沁み渡る。僕の都合のいい夢なんかじゃないんだよね?骸君が僕を必要としてくれるなら。僕が君と一緒に居てもいいのなら。


「うん、僕でいいなら…喜んで君の隣に居るよ。」

「あなたが…良いんです。」


最後まで面倒見てもらわなければ困ります。途中で投げ出すなど僕が許しませんからね。綺麗に微笑むと、骸君は身を乗り出すようにして僕に口付けた。やっぱり骸君とのキスは、彼がいつも食べているチョコレートみたいに甘くて。僕はその甘さに酔いしれながら、伸ばした腕の中でいつまでも骸君を感じていた。






END






あとがき
何でも完璧にできてしまう骸も素敵ですが、仕事以外駄目なのも可愛いなぁと思いまして、こんな骸にしてみました。大好きな骸を甲斐甲斐しくお世話する白蘭も可愛いと思います♪


タイトルのチョコレートホリックは骸のことですが、チョコレート=甘い物=白蘭にとっての骸と考えて、白蘭も骸中毒のようなものなので、チョコレートホリックに当てはまるかなぁと。まぁ白蘭の場合はマシマロホリックですよね(><;)


読んで下さいまして、ありがとうございました!

[*前へ][次へ#]

88/123ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!