sweet sweet tea time
大学生×会社員
白蘭がカフェで早朝アルバイトをしています
僕はこの瞬間をずっと待ってたんだ。君が僕に触れて、そして――
シンプルだけどすっきりとしたデザインがオシャレなテーブルと椅子。耳に心地良い音楽の流れるゆったりとした空間。コーヒーやラテを美味しそうに飲んでいるお客さん達のほっとした表情。そのどれもが好きだから、僕は今のバイトが割とお気に入りだった。
僕は朝の7時から9時まで、アパートから近い最寄り駅にある小さなカフェでバイトしてるんだ。大学の講義が始まるまでのちょっとした時間の有効活用って所かな。最初は慣れないこともあったけど、朝から働くのって案外悪くなくて、僕は毎日楽しく働いていた。だけど、まさかそこで運命の出会いが待っていたなんて全然思いもしなかったんだよ。あ、ほら、彼だよ、彼。僕は白いカッターシャツの襟を正して、それから腰に巻いている黒いエプロンを軽くはたいた。ガラス窓の向こうに艶やかな長い髪が見える。今日も君に会えて嬉しいな、と僕はによによしてしまった。
『好きです!』
『は?』
『大好きです!』
『…えっと、あの、そういうのは困るのですが…』
一目惚れだったんだ。だってさ、仕方なかったんだよ、こればっかりは。綺麗な顔は思いっきり僕の好みだったし、脚を組んでコーヒーを飲んでる姿はすっごく絵になってたし、仕事できそうな感じでカッコ良かったし、とにかく彼は僕の理想だったんだ。だから名前も知らない彼が会計を済ませてお店を出て行くのを見送る時に勢いで告白しちゃったんだよ。初めて会ったばかりのその日に。
『…すみません。僕、急いでいますので。』
あの日の彼は最後まで困惑した表情だった。そりゃそうだよね。初めて入ったカフェでコーヒー飲んだ後に年下の男に告白されるなんてこと、まずないからね。僕だってこんな日が来るなんて思ってもみなかったんだし。でもさ、簡単に諦めることなんかできなくて。それからね、1人用の小さなテーブル席に座ってコーヒーを飲む彼の側まで行って、好き好き大好き構ってよとまとわりついてみたら、こんなはずではなかったのに、僕の朝のひとときが…って恨めしげな瞳を向けられてしまった。それでも彼は毎日ここに来て仕事に行く前にコーヒーを飲んでいく。僕と目が合うと困った顔になるのに、僕のことを酷く邪険に扱うことはなかった。だから、僕は、そんな優しい君のことが好きで好きで堪らなかった。
「いらっしゃいませ。おはようございます♪」
「…おはようございます。」
彼はいつもの時間に店内へと入って来た。僕はさっきまでのにやけていた表情を正すと、メニュー表と温かいおしぼりを持って彼を席へと案内した。今日も黒のスーツが似合っていて、ストイックな雰囲気の彼の美しさを引き立たせていた。そういえば告白してから今日で1週間が過ぎたから、もうそろそろ名前教えてくれないかなぁと思ってしまう。いい加減、「お客様」から卒業したい。
「名前、教えてくれませんか?」
「……」
「多分もう5回くらい訊いたとは思うんですけど、僕、やっぱり好きな人の名前くらいは…」
「……仕方ありませんね。」
小さな溜め息と共に細い指がテーブルに置かれている紙ナプキンの入った小瓶へと伸ばされた。彼はそこから丁寧な動作で1枚抜き取ると、そのままさらさらとボールペンを走らせた。そして黙って僕を見上げると、テーブルの上の紙ナプキンの端をトントンと人差し指で軽くつついた。
「六道骸君!…骸君かぁ。うん。君、キレーな字だね、やっぱり。ほーんと僕の理想過ぎて言うことないよ♪」
もう知ってると思うけど、僕は白蘭だよ。骸君に向けてにこっと笑ったら、あなたは本当に馴れ馴れしいですね、最近の若者は皆そんな風なのですか、と呆れた声が返って来た。ちょっと最近の若い子って…。骸君も僕とそんなに年齢変わらないでしょ。それにこれは馴れ馴れしいんじゃなくて、君へのアピールなの!君のことを知りたいっていう僕の真剣な想いなんだよ。僕はね、君が好きなんだ。好きなんだよ。
「骸君、また明日も来てね。」
短い逢瀬はいつもびっくりするくらいあっという間で。僕はレジのカウンター越しに骸君に小さく手を振った。
「待ってるからね。」
「あなたに会うことはもう仕方がないので目を瞑るしかないとしても、そうですね…ここに通うことは、僕の中では…大切な習慣ですから。」
「…そっか。うん。お仕事頑張ってね。いってらっしゃい!」
今までは、ありがとうございました、その挨拶で骸君との時間は終わってたんだけど、今日初めていつもと違うことを言ってみた。骸君が僅かに目を見開いたような気もしたけど、彼はいつものちょっとツンとした表情で、仕事を頑張るのは当たり前ですよ、と僕を見た。骸君はそのままカフェの出入り口のドアを開けて出て行こうとする。どうしてもあともう少しだけ一緒に居たくなってしまって、僕は近くに居たバイト仲間の正チャンにレジを頼むと、骸君の背中を追い掛けた。
「骸君!」
「白、蘭。」
何をやっているのですか、早く戻りなさいと骸君は明らかに困った表情だった。だけど僕はそんな骸君に笑みを浮かべて、いってらっしゃいと、もう一度言葉にした。
「…いって、きます。」
「うん。気を付けてね♪」
少しだけ秋めいた風がどこからかふわりと吹いて、僕と骸君の髪を優しく揺らして駆けていった。
*****
ほらやっぱり僕達は運命で結ばれてるんだよ。絶対そうに決まってる。僕は骸君を好きになる運命だったんだ。
「骸クーン♪」
「白……蘭!?」
最寄り駅の改札口から少し歩いた駅の構内。週末の夜だからか、たくさんの人が楽しそうに行き交っている。そんな風に人で溢れ返っている改札を出た所で何と偶然にも骸君と出会ったんだ。昨日の朝も会って今日も会うなんてさ、もう絶対運命だよね、これ。街に出掛けてた帰りで、バイト中じゃないんだよ!僕は嬉しさを隠せない表情のまま、飼い主に甘える仔犬のように骸君に駆け寄った。骸君は困った顔をしたけど、僕はお構いなしに骸君に笑顔を振り撒いた。
「バイト中じゃないのに骸君に出会うなんて、やっぱり僕達は運命の赤い糸で「違います。」
「相変わらずだなぁ、君は。でも会えて嬉しいよ!」
当たり前なんだけどさ、僕も骸君も私服姿で、いつもと違う彼の雰囲気にドキドキそわそわしてしまった。だって、骸君は黒のレザージャケットに細身のスキニーパンツですっごく素敵だったんだよ。
「っていうか、骸君、眼鏡掛けてんじゃん!うわぁ、美人に眼鏡は…ヤバい!」
骸君は仕事中はコンタクトだけど、休日は眼鏡掛けてるんだって。眼鏡だよ眼鏡!銀縁の、細いフレームの!眼鏡も掛けるとかポイント高過ぎだよ、骸君!
「カフェで働いているというより、バンド活動でもしていそうな格好ですね。」
骸君が僕をまじまじと見つめた。バイト中はギャルソン姿だから、僕の私服を見るのはこれが初めてなんだよね。今日の僕の服装はブーツにダメージジーンズ、上は白いシンプルなカットソーだけど、所々ビリビリしちゃってる。で、ちょっと肌寒いから、首に白と黒のチェック柄のアフガンストールを巻いていた。骸君に上から下までじっと見つめられちゃって、何だかくすぐったいというか、恥ずかしかった。
「まぁ、よく言われるよ。僕、こーゆーのが好きなんだ。変、かな…?」
「似合っていると思いますよ。」
「骸クン!」
別にそこには深い意味なんかないのにさ、好きな人から似合ってるって言われて嬉しくて堪らなかった。うん、分かってる。僕も大概だ。
「骸君さー、ウチのカフェに通い出したのって、何か理由でもあるの?」
僕達は2人並んで駅通りの道を歩いていた。さっきからさ、奇跡の連続なんだけど!駅で偶然会って、こうして一緒に歩いて。誰かを好きになってこんなに幸せな気持ちになるのは初めてかもしれない。お店の照明に照らされる骸君はやっぱりすごく綺麗な横顔で、夜だっていうのに眩しくて直視できそうになかった。
「理由ですか。…大した理由はありませんが、仕事に行く前にコーヒーを飲んで心を落ち着けたいと思い立ったんですよ。」
「確かに仕事前に1杯、っていいよね。」
「ですが、まさかあなたに…告白されて、毎日話し掛けられることになるとは思っていませんでしたよ。こんなはずではなかったんですがね。」
「えー!だって、好きな人とは毎日会って話したいに決まってるじゃん。骸君には……迷惑、だった?」
いつも見ないふりをしているだけで、骸君が僕の行動に困っていることはちゃんと分かってるんだ。それでも、僕は。
「……迷惑だよね。」
「…迷惑、という訳、では…」
僕は骸君のことが好きだけど、彼を困らせたい訳じゃないんだ。僕が今にも泣きそうな顔になったからか、骸君はおろおろした表情になると、大学2年生にもなってそんな顔をするんじゃありません、迷惑だと思うのならさっさと店を変えています、と僕にとってどうしようもなく嬉しい言葉をくれた。
「ありがとう。うん。あっ、そうだ!骸君、このまま送ってあげるよ。夜も遅いし、美人さんの一人歩きは危ないから。」
「は?何言ってるんですか。僕は女性ではないのですから結構です。」
「つれないなぁ。」
優しい言葉をくれたからって、やっぱりそう上手くはいかないよね。僕の申し出に面食らった表情になった可愛い君が見れただけでも十分か。今のは冗談だよ、何か骸君は強そうだしね。僕はそんな風におどけてみせた。
「あの、僕、この道ですので…」
飲食店やコンビニなんかが並ぶ駅通りの道から住宅街へと続く道の前で骸君が立ち止まった。骸君と一緒に歩いていたけど、僕の住んでいるアパートとは反対の方角だった。骸君とお別れするのつらいなぁ。もう少しだけ君を感じていたいのに。
「白蘭。」
「なーに?」
「おやすみなさい。」
「…っ、うん。おやすみ、骸君。」
いらっしゃいませとおはようといってらっしゃいと仕事頑張ってね、それだけだと思ってた。これからもずっと。だけど今日、「おやすみ」が増えた。僕は朝早くにしか骸君に会えないから、きっとこれが最初で最後のおやすみなさいなんだろうなと思う。そんなこと嫌というほど分かってるけど、それでもやっぱり嬉しくてどうにかなりそうで。遠ざかる彼の背中を見送りながら、僕の胸はきゅっとした。
*****
今日の骸君は何だか焦ってるというか、イライラしてるというか、雰囲気がいつもよりもピリピリとしていた。そういう雰囲気でもさ、とにかく骸君は綺麗だった。同僚の子達が気を回してくれるからか、すっかり暗黙の了解みたいに骸君の接客は僕の担当になっている。今日はどうしたのかなーと思いながら、僕は骸君に近付いた。
「骸クーン!おはよ♪」
「おはよう、ございます。」
あれれ?ピリピリしてるんじゃなくて、これは沈んでるな。他の人には分かんないだろうけど、骸君大好きな僕にはその小さな違いが分かった。
「どうしたの?今日、元気ないね。大丈夫?」
僕の言葉に席に座った骸君の肩が小さく跳ねた。
「別に無理に話さなくていいよ。あ、注文はいつものコーヒーでいいよね、僕が淹れてるやつ♪」
骸君が小さく頷いたから、すぐに淹れてくるねーと微笑んで、僕は一旦奥に引っ込んだ。そして彼のことを想いながら丁寧にコーヒーを淹れた後、ケーキやお茶菓子が並べられてるショーケースに立ち寄ってからもう一度テーブル席に向かった。
「骸君、お待たせしました♪」
「…昨日…」
骸君が不意に口を開いた。だから思わず手が止まっちゃって、僕はカップとお皿の乗ったアルミ製のお盆を持ったままの体勢で骸君を見つめた。
「うん。」
別に無理に話さなくてもいいよとは言ったけど、骸君が僕に話そうとしてくれることがただ嬉しかった。
「骸君…」
「仕事で、大きなミスをしてしまったんです。大切なプロジェクトでして、僕のせいで同僚達に迷惑を掛けてしまった。」
不甲斐ないです、と瞳を曇らせる骸君に大丈夫!と僕は笑顔を向けた。
「はい♪いつものコーヒーと、それからこれもどうぞ。僕からってことで。」
「これは…」
僕の行動に驚いたような戸惑ってるような表情の骸君はそりゃもう可愛くて可愛くて仕方なかった。ふふ、美味しそうでしょ?と僕は目を細めて、カップの隣に置いたドット柄のお皿を指差した。
「チョコブラウニーだよ。すっごく美味しくて、ウチのお店のオススメなんだ。…こんなことくらいじゃ意味ないかもしれないけどさ、甘い物食べて元気出してよ、骸君。」
「白蘭。」
「あっ、代金とかそんなの気にしなくていいからね。君に元気になってもらいたくて、僕が勝手にやってることだから。」
ね?僕のバイト代のことは気にしなくていいから、と強い瞳で訴えたら、骸君は眉を寄せて僕に何か言いたそうな顔をしたけど、それ以上言葉を紡ぐことはなかった。黙って僕を見つめる骸君の赤と青の瞳を見つめ返して、代わりに僕が言葉を紡いだ。僕の想いを込めて。
「ねぇ、骸君。大丈夫だよ。失敗しちゃったら、次また頑張ればいいんだよ。僕もバイト中に普通に失敗しちゃうし。あ、僕のバイトと骸君の仕事を一緒にするのはアレかもしれないけど。でもね、骸君なら、絶対に大丈夫。」
僕はにっこりと笑った。僕の気持ちが少しでも伝わるようにと。君のことがこんなにも大切でこんなにも好きなんだよと。僕の想いが届くことを願って。
「…ありがとうございます。」
「えへへ、どういたしましてー♪」
骸君は俯いたままカップに口を付けた後、僕の出したブラウニーを美味しいですと言って食べてくれた。
「いってらっしゃい、骸君。ファイトだよ!」
僕にはこんなことくらいしかできないけど、骸君、君にはいつでも笑ってて欲しいんだ。
*****
こんなに走るのはものすごく久しぶりのことだった。えーと、僕、こんなに必死で走ったことなんて今まであったっけ?高校の授業でも大学の教養の体育でもここまで焦って走ったことなんてない気がする。違う違う今はそんなこと考えてる場合じゃないって!
「ヤバいヤバいマズい!遅刻ーっ!」
朝起きたらさ、目覚まし時計の電池が切れてたんだよ、見事にね。僕は一人暮らしだから当然誰かが起こしてくれるはずもなくて。本来お店で開店前の準備してなきゃいけない時間に起きちゃったんだ。うん、もう完全に遅刻だよ。昨日夜遅くまで課題のレポート書いてなかったらもう少し早く起きれたかもしれなかったけど。
「あーあ、今日は最悪だなぁ。」
僕は息を弾ませながら腕時計の時刻を確認した。バイトには完全に遅刻だけど、この時間ならお店に着いてもまだ骸君コーヒー飲んでるかも。いや、やっぱりギリギリ間に合わないかな。明日、怒られちゃうかもね。遅刻するなんてたるんでますよ、って。
「ふふ、骸君なら言いそうだな。」
骸君のことを考えたら、全速力で走ってるのにまだまだ速く走れそうだった。骸君とは相変わらず朝のほんの少しの時間しか会えないけど、一緒の時間を過ごしてきて前よりずっと仲良くなれてる気がするんだ。嬉しい気持ちとほんの少しの切ない気持ちを胸に抱えながら、僕は真っすぐにカフェを目指した。
いつもはのんびりとギャルソンの制服に着替えるんだけど、今日はとにかく急いで着替えて、慌ててお店のロッカールームを出た。店長やバイトの仲間の子達に謝ると、僕はホールのテーブル席へと目を向けた。良かった、何とか間に合った。本当に良かったよ。骸君はちょうど会計を済ませる所で、いつも僕に気を遣って接客やレジを代わってくれる正チャンが骸君にお釣りを渡そうとしていた。本気で走って慌てて着替えたばかりの僕はまだ息が切れていたけど、そのまま骸君へと駆け寄った。ほんの少しでいいから。骸君の顔を見て言葉を交わしたかった。骸君の背中越しに気が付いたんだろう、正チャンはお釣りを手渡した後も、あの、とか、えーと、と骸君を引き留めようとしてくれていた。
「骸君!」
「…白、蘭。」
振り返った骸君は驚いた顔を見せた。僕は彼におはようと笑い掛けて、見送る時にいつもするのと同じようにお店のドアを開けた。外に出てドアを閉める時にさ、白蘭サン頑張って下さいと正チャンに小さな声で応援されちゃったんだ。ありがとう、今度何か奢るね、と可愛い後輩にアイコンタクトで返して、僕は骸君の背中を追い掛けた。
「遅刻するなんて気が緩んでいる証拠ですよ。たるんでいるのではないですか。」
ああやっぱり僕の好きな君だ。僕はぺこってお辞儀して、はい、ごめんなさいと素直に謝った。まだ時間に余裕があるのかな、骸君はお店から少し歩いた所で立ち止まった。そして向かい合うように立っている僕を見つめると、不意にフッと微笑んで、ゆっくりとその腕を伸ばした。
「寝癖がついていますよ。」
「骸君…」
僕はこの瞬間をずっと待ってたんだ。君が僕に触れて、そして僕に微笑んでくれるのを。出会った時からずっとずっと望んでいたんだ。
「骸くん…」
「…っ、」
僕の髪から指先を離すと、骸君は複雑そうな顔になって、きゅっと眉を寄せた。
「いつもいつも…毎日仔犬みたいに馬鹿みたいにまとわりついてくるくせに、今日はあなたの姿が見えなくて……そういうの、調子が狂うんですよ。」
「骸、君。」
「…気が付いたらいつの間にか、あなたの笑顔に元気をもらって頑張ろうという気持ちになれたり、励まされていたり…毎朝あなたにいってらっしゃいと言われて、その……嬉しい、かもしれないなどと…」
駄目だ駄目だもう駄目だ。嬉しすぎてどうにかなっちゃう。僕は急激に頬が熱くなっていくのを感じた。これは夢じゃないんだよね。僕はまだ自分の部屋で寝てるとかじゃないよね。そうだよ、夢じゃないんだ。骸君が僕の髪を優しく撫でるように触れた時の指先の感覚を思い出して、甘い疼きが僕の胸にふわりと広がったんだから。今すぐにでも彼を抱き締めたくて堪らなくなっちゃって。この腕の中でその温もりを感じたくて堪らなかったけど、ここは人通りなんだと何とか我慢した。うん、今は駄目だけど、今度タイミングを見計らって実行しちゃおう♪それがいいや。可愛い君をもっともっと近くで見たいからね。僕があり得ないくらいにまにましてたからかな、骸君は我に返ったような顔になると、小さく咳払いをした。
「いいですね、明日は遅れてはいけませんよ。」
「はーい、分かってるよ♪」
「…ここであなたに淹れてもらったコーヒーを飲まないと、仕事に行けませんから。」
「骸クン!」
僕はこれで失礼します。仕事に遅れてしまいますから。慌てたように背を向けた骸君の首筋がうっすら赤くなっている気がして。僕は、ただ幸せだった。
「いってらっしゃい!明日もあったかいコーヒーと、とびっきりの笑顔を用意して待ってるからね♪」
一度だけ振り返った骸君の微笑みがあまりにも綺麗で。それは甘く幸せな気持ちを僕にくれた。僕は骸君に微笑み返すと、大好きだからねと彼に手を振った。
END
あとがき
タイトルの割に骸が朝のティータイムしてなくてすみません;;そして、白蘭が仕事よりも骸クン!ですみません;;あ、白蘭は通常運転ですね^^
カフェで出会って仲良くなる設定のパロが大好きですので、大学生×会社員で書いてみました。あまり捻りのない展開ですが、とにかく白蘭が骸大好きな気持ちを書きたかったので楽しく書けました(*´ω`*)早朝のカフェでコーヒーを飲むリーマンな骸なんて想像しただけで優雅過ぎると思うんです!
あの後さらに距離が縮まって、白蘭が寒くなってきたからラテがオススメだよ♪とか言って、骸の為に頑張って練習したラテアートでも披露して、悔しいですが、年下はやっぱり可愛いですねと骸をきゅんとさせればいいと思いますvあと、作中で白蘭が最初で最後のおやすみなさいとか言ってますけど、何回も聞ける仲になるので問題ないですね(*^^*)
読んで下さいましてどうもありがとうございました!
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