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2人の恋の始め方
カラダだけの関係→恋人へな2人です(30000HITリクエスト)

申し訳ないですが、直接的な裏表現はないです;;




いつからか、そういう関係になっていた。何がきっかけでそんな関係が始まったのか、今では良く覚えていない。けれど。彼とはもう何度も何度も肌を合わせた。それは確かな事実だった。


ねぇ、僕達ってきっと相性ぴったりだと思うんだ。誘ってきたのは向こうからで。気が付けば流される所まで流されて、最早後戻りはできなくなっていた。


怖くて怖くて堪らなかった。彼に組み敷かれて抱かれることではなく。彼を拒めないことが。彼に惹かれていく自分を止められないことが。そんな自分自身が怖くて堪らなかった。


苦しくて苦しくて堪らなかった。この関係に未来などありはしないから。快楽だけを望む彼の心を求めたとしても、全く意味などないから。ただ虚しくなるだけなのだから。


体だけの関係。欲を満たすための都合の良い存在。言葉ではどうとでも言えるそれにひたすら耐えなければならない。耐え続けなければならない。心を隠して。心を押し殺して。彼への気持ちを心の奥に沈めて。


自分が彼に与えられる物は体と快楽のみで。手を伸ばしてはいけない。自分からは。彼の心を求めてはいけない。絶対に。求めてしまえば、この関係は終わってしまうのだ。いともあっさりと簡単に。そうなればもう二度と彼に会えなくなる。それだけは嫌なのに、虚しいだけのこの関係を終わらせるべきだとも思ってしまう。彼のことが好きなくせに。自分はどこまでも矛盾している。


心が壊れてしまいそうだった。痛くて堪らなかった。あぁ、いつになれば、楽になれるのだろうか。



*****
「ほら、もっとイイ声で啼きなよ、骸君。」

「あ…やっ、びゃく…らっ…」


お互いに熱を吐き出して。いつもの決まりきった行為が終わる。骸は浅い呼吸を繰り返すと、痛みや疲れで悲鳴を上げる体をゆっくりと動かして白蘭を見つめた。白蘭は骸の視線を受け止めることなく、ベッド脇でシャツを羽織っている。彼は後処理をして骸に簡単に服を着せると、いつもさっさと着替えてこの寝室から出て行ってしまう。労るような優しい言葉を掛けてくれることなどない。彼は自分の中の欲を吐き出して、満たされればいいのだから。そんなことは痛いくらいに分かっている。それでも骸はベッドの中で白蘭を見つめ続けた。しばらくして白蘭は着替え終わったが、そのままドアへと向かうことなく、何故か骸の目の前に立ったままだった。


「あのさぁ、骸君。」


静かな寝室に白蘭の声が響き渡る。だがそこには骸が期待するような優しさは込められてはいなかった。


「君、何でそんな顔すんのさ。」


明らかに苛ついた声音。苛ついた表情だった。白蘭はベッドに近付き片手をついて座り込むと、骸の顔を覗き込んだ。冷ややかな紫色の瞳が骸を見据える。骸は突然のことに動揺し、口を開くことができなかった。


「僕達は気持ち良ければいい、その時楽しければいい…そういう関係って言ったよね?骸君だって、それでいいって言ったじゃない。そこんとこちゃんと分かってるはずでしょ。なのに終わった途端にさ、何でそんな顔する訳?」

「白、蘭…」


無意識に自分がどんな顔をしていたのか、骸は容易に想像ができた。白蘭に惹かれる気持ち。それなのに想いを伝えられない悲しさ。体を繋げることで彼の温もりに一時でも触れられる嬉しさ。けれどもそれによって気付かされる行為の虚しさ。そんな感情の全てが表れた表情になっていたのだろう。骸は小さく唇を噛んで白蘭の瞳から逃れるように目を伏せた。


「ほんとにイラつくなぁ。骸君、君はセフレ、だよ?」


言葉とは裏腹に涼やかな声が耳朶をくすぐる。白蘭に耳元で囁かれ、その言葉が持つ意味に骸の肩が小さく跳ねた。白蘭は骸からゆっくり離れると、だからさ、と言葉を続けた。


「骸君だって気持ち良ければいいんだし、僕も君を抱いて楽しめればさ、別にそれで…」


白蘭は何故か不意に黙り込んだ。どうしたのだろうか。骸が訝しげな視線を送っていることに気付いたのか、白蘭はハッとすると、別に何でもないよと返した。


「いい?とにかく、今度また僕を不機嫌にさせるようなことしたら、お仕置きだからね?」


白蘭はニコリと笑うと、じゃあねと寝室から出て行った。骸は起き上がるのも億劫で、ベッドに寝たまま白蘭を見送った。白蘭が寝室から去ってしまっても、彼の残り香がまだ僅かに部屋の中に漂っていて。白蘭に優しく包まれている気がして、骸はあり得ない錯覚に泣きそうになるのを我慢するしかなかった。



*****
いつからか、そういう関係になっていた。何がきっかけでそんな関係を始めようと思ったのか、今ではちゃんと覚えていない。けれど。何度も何度も彼を貪るように味わった。それは偽りのない事実だった。


ねぇ、僕達ってきっと相性ぴったりだと思うんだ。誘ったのは自分からで。ほんの気まぐれ。ただのお遊び。そうだったはずなのに、気が付けばこの関係にどっぷりとはまり込んで、彼を知らない頃の自分には最早戻れなくなっていた。


一体どうしたというのだろうか。いつの間にか分からなくなっていた。いつの間にかそう思うようになっていた。彼を何度も何度も抱いて。体だけではなく、彼の全てが欲しくなってしまっていた。何もかも全て奪って、残らず自分の物にしたいと。体も、その心すらも。一体どうしたのだろうか。初めは適度に体を繋げてそれでお互い楽しければ、ただそれだけで良かったはずなのに。


苛ついて苛ついて仕方がなかった。彼に、ではなく、本当は自分自身にだ。体を繋ぎ止めてしまえば、彼の心もそのまま手に入れることができるのだと思った。この関係がいつか変わるのだと思った。けれども、彼はいつも目を伏せて快楽を受け入れるだけで。手を伸ばすことも、自分の心を求めるようなこともしようとしない。だから、どうすることもできない。結局自分は彼の心を求める為に彼を抱くだけだ。それ以外に方法なんて分からない。どうすれば願いが叶うのかも分からない。そんな自分にただ酷く苛つく。


体だけの関係。欲を満たすための都合の良い存在。そんな言葉を散々彼に吐いて、彼の反応を笑って楽しんだ。そうすることで、彼の全てが欲しいのに手に入らないもどかしさを無理矢理誤魔化そうとした。見ないふりをしようとした。


自分が彼に与えられる物はその場限りの快楽のみで。手を伸ばしているはずなのに。精一杯、彼に。彼の心を求めようとしているはずなのに。少しも上手く行かない。この関係を終わらせてしまう訳にはいかないのに、時々悲しくて堪らなくなる。もう終わりにしようか。その一言を彼に告げれば、簡単に終わらせることはできる。けれども。そうなればもう二度と彼に会えなくなる。それだけは嫌なのに、この偽りだらけのどうにもできない関係をもう終わらせなければならないのではないかと思ってしまう。彼との関係が終わることが怖いくせに。自分はどこまでも矛盾している。


彼に向ける笑顔の裏で、本当はどうすればいいのか分からなかった。もどかしくて痛くて苦しくて。あぁ、いつになれば、その先に進めるのだろうか。



*****
今日の骸はいつもと違う。骸を抱きながら、終始白蘭はそんな風に感じていた。いつもならば白蘭が与える快楽の波に溺れて、目を奪われるほどの官能的な表情を見せて喘ぐのだ。けれども骸は行為の最中に白蘭の名前を呼ぶことも、赤と青の瞳に白蘭を映すこともせず、ただひたすら唇を噛んで耐えていた。それなのに白蘭の神経を逆撫でするかのように、時々あの表情を見せた。辛くて悲しくて心が痛い、そう訴えるように。


「骸君…そんなに唇噛んでたら血が出るからやめなよ。そんなんじゃキスできなくて楽しめないでしょ?」

「……」

「あのね、骸君、聞いてるの?」

「…嫌、です。もう…あなたとは…キス、したくない。もう、これ以上は…」


潤んだ瞳が悲しげに白蘭を見つめた。骸は白蘭の熱に浮かされ生理的な涙を浮かべながら、拒むように静かに首を振る。彼の動きに合わせて艶やかな長い髪がシーツの波間を漂った。


「なっ…骸君、君、何言って…」


どうして今さら自分から逃げようとする?自分を拒もうとする?白蘭は静かに骸を見下ろした。そのまま無言で腕を伸ばして抵抗できないように骸の両腕を一纏めにすると、もう片方の手で骸の顎を掴み、こじ開けるように激しく唇を奪った。骸が仰け反るように抵抗しても離す気などなかった。


「んぅ、いや…びゃく…」

「…言うこと聞かない子には…お仕置きって、言ったよね?」


もう何も考えられなかった。分からなかった。自分達の関係も。骸の心も。自分の心も。白蘭は骸が耐えきれずに意識をなくしてしまうまで、その体を抱き続けた。





いつもの自分なら、一頻り楽しんだ後は骸の寝顔を見ることもなくさっさと寝室を出て行くというのに。手に入らないものの側に居てもただ虚しいだけだからだ。けれども着替えを済ませた白蘭はベッドの端に腰掛けて、疲れた顔で眠る骸を黙って見つめていた。ぐったりとした骸に簡単にシャツを羽織らせて、乱れた前髪を丁寧に整える。白蘭の指先が額に触れたからか、骸がそっと瞼を開けた。白蘭は慌てて骸の側から離れると、ベッドから立ち上がった。骸が眠っている間に考えたことを伝える為に。


「骸君、僕達さ…もう終わりにしよっか。」

「びゃくらん…」


骸は大きく目を見開くと、ベッドから半身を起こして白蘭の名前を呼んだ。その声は酷く掠れていて、手酷く彼を抱いたことに白蘭の胸は小さく痛んだ
。骸は思い詰めたような顔で白蘭を見ると、静かに口を開いた。


「…嫌、です。僕は、終わらせたくありません。」

「は?何言ってんの、骸君。君さ、もうこういうの嫌なんでしょ?だからさっき…」

「嫌です。嫌ですよ、虚しいだけの関係など…」

「でしょ?だったら、もうこれで終わりでいいよね?」

「それは、嫌です。終わらせるのだけは…」

「骸君。君さ、僕を怒らせたいの?」


骸が一体何を考えているのか分からず、白蘭は苛立ちを募らせた。全てをくれないくせに、これ以上彼と居ても何もならないではないか。だからもう終わらせる。そう決めたのに。白蘭は骸を見つめた。お互いの視線が静かに絡まる。骸は何かを考えるような表情になって、シーツをきつく握り締めた。


「骸君?」

「このような関係は…もう、嫌なんです。嫌なんですよ。僕は、あなたのことが…好きですから。それなのに、この関係は終わらせたくないとも思うんです。終わってしまったら、あなたに触れることができなくなる。でも心が伴わない関係など虚しいだけで…」

「骸くん…」

「僕は、あなたの心も欲しい。あなたが好きだから。でも…僕はどうすれば…」


シーツを握る骸の手が震えるのと同じように、白蘭の体も震えていた。骸の言葉が嘘ではないのなら、彼も自分と同じようにお互いに目の前の大切な人の心を求めている。心も体も全てが欲しいと願っている。


「骸君っ。」

「白蘭…!?」


カッターシャツ1枚を羽織っただけの細い体を抱き締める。こんな風に骸を優しく抱き締めるのは多分初めてのことだった。


「僕も、君が好きだよ。君の心が欲しい。こんな馬鹿な関係はもうやめにしよう。…もう君を傷付けない。大切にするから。」

「大丈夫です。大丈夫ですよ、白蘭。今から僕達2人の恋を始めれば、良いんです。遅くは…ないですよね?」

「僕達2人の、恋…」


骸の言葉は白蘭の胸にストンと落ちた。お互いの想いが同じ方向で。お互いに欲しかった物を手に入れた。だからもう答えは決まっている。


「骸君、僕達の恋はね、きっとすぐに愛に変わるよ。…ありがとう、骸君。」


骸が頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。あぁ、彼はこんなにも綺麗に笑うのか。あんなに触れていたのに全然知らなかった。これからはもっともっと色々な骸を見ることができるのだろう。心と心が通い合った関係はこんなにも幸せで温かくて嬉しくて。白蘭は想いを込めて再び骸を腕の中に包み込んだ。寄り添ってくる骸がただ愛しくて。愛しくて仕方なかった。






END






あとがき
キーノ様から頂いた「セフレ→相思相愛」のリクエストを基に書かせて頂きました。これが私の精一杯です、すみません(><;)


白(→)(←)骸なのに、体だけの関係ってすごく萌えます!心の中では全てが欲しいと思っているのになかなか伝わらない感じが堪りませんね^^白骸は本当に色々な設定が当てはまるから最高なんですよね!


キーノ様、この度はリクエストして頂きまして本当にありがとうございましたv

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あきゅろす。
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