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好きだから頑張ります
白蘭←←骸から始まります

白蘭が好き過ぎて骸の人格崩壊が酷いです




「おはようございます、白蘭!」

「……何で、君が…ここに居るの?」

「何故とは…決まっているではありませんか。仕事に行く前にどうしてもあなたの顔が見たくなってしまいましてね。」

「…あのさ…これって、立派な不法侵入だよ〜、骸君。」


枕元に膝立ちになって大好きな白蘭をじっと見つめていると、眠そうな顔が僕の方をゆっくりと見上げた。朝早くからは勘弁して。僕、まだ寝るんだから。ていうか、どうやって入って来たのさ。僕、ちゃんと鍵掛けてるのに。柔らかそうな布団の中に再び潜り込みながら、白蘭が面倒そうに僕に背を向けた。


「僕の能力も色々便利に使えるんですよ。本当は毎朝でもあなたの顔を見たいのですが。…あぁ、残念です。そろそろ行かなければ。」


広い部屋の中に僕の声が響き渡る。もっともっと白蘭と一緒に居たい。けれども仕事に遅れてしまうとあの童顔の上司に注意されてしまうので、それはそれで面倒だ。僕は腕時計で時間を確認すると、残念で仕方ない気持ちを抱えたまま静かに白蘭の寝室から出ることにした。


「白蘭、あなたの寝顔…あどけなくて可愛くて、とても癒やされましたよ。あなたも仕事、頑張って下さいね。」


ベッドの中から返事はなかった。再び寝てしまったのか、起きているのかは分からないけれど、僕はこれくらいではめげません。寝室のドアを開けてゆっくりと閉めようとした瞬間、男としては寝顔見られるのなんて恥ずかしいからさ、朝には来ないでよ、骸君、と眠そうな白蘭の声が耳に届いた。白蘭は優しい。僕が無理矢理押し掛けても、強く拒絶するようなことはなくて。こんな風に去り際に声だって掛けてくれる。


「…白蘭、大好きです。」


僕は閉めたドアに額を押し付けるようにして、白蘭に聞こえてしまわないように小さく呟いた。



*****
人というのは大きく2種類に分けることができるのではないかと僕は思っている。安心や安定を第一に、自分と似た性格や価値観の相手を求める者。刺激や自分にないものに惹かれて、自分と正反対の相手を求める者。そのどちらかであるのだと。そんな風に考えてはいたけれど、僕は大切な相手など作る気はなかったはずだった。だけど、好きになってしまったのだ。だからもうこの気持ちは止まることはないと思う。それは、僕自身が一番良く分かっていることですから。


彼が、これから新しく仲良くすることになったファミリーのボスの白蘭だから。あるパーティーで沢田綱吉から僕を含めた守護者達に紹介された目の前の彼を見て。たったそれだけで、僕はたちまち彼のことを好きになってしまった。何故かと思うかもしれませんね。でもそれは仕方のないことなんですよ。僕、すごく面食いなのですから。


ボンゴレの守護者達やその他の同盟ファミリーの者達に囲まれてパーティーを楽しんでいる白蘭は、僕とはまるで正反対な人物のように感じられた。僕は少し離れた所から彼を観察してみて、そうなのだということが分かった。黒を好む僕に対して、彼は着ている物からも白が好きなようであったし、僕はどちらかといえば物静かな方だと思うが、彼は陽気でいつも楽しそうに周りに居る誰かと話していて、笑顔がとても綺麗だった。あぁ、どうやら僕は後者の方だったようですね。自分とは正反対の、自分にないものを持つ相手を強く求めてしまう。だから白蘭に惹かれ、彼を好きになるのは僕の中で決まっていたに違いない。


白蘭のことを好きになり、想いは日々募って溢れそうだった。僕は白蘭が大好きだというこの想いを彼に知ってもらいたくて、行動に移すことに決めたのだ。朝早くに彼に会いに行ったこともその1つだったりする。僕は今までこれほどまでに誰かを好きになったことはなく、実際どうすれば良いのか良く分からない部分もある。だから僕自身が白蘭からされたとしたら嬉しいことを実行しようと思っている訳なのです。朝から顔を見に行ったり、仕事で会えば愛を囁いてみたり。もし白蘭が僕にそんなことをしてくれたのならば、とりあえず僕は嬉しくて頭が爆発するでしょうね。



*****
白蘭のことが大好き過ぎて、僕、本当にどうにかなりそうなんです。一体どうすれば良いのでしょう。もういっそのことこちらから白蘭の寝込みに会いに行って、僕を襲って下さいと抱き付くしかないですかね。そうすればきっと白蘭も僕の溢れんばかりの魅力に気付いて、色良い返事をくれるかもしれませんよね。ですが、僕から迫るというのは、やはりどうにも恥ずかしいというか…


「あの〜骸君、さっきから君の心の声がだだ漏れになってるんだけど…」

「えっ?あ…す、すみません、僕としたことが!」

「…骸君、見て分かると思うけどさ、僕一応今仕事中なんだよね。それで、ちょっと近いというか…その椅子もどこから持って来たの?」


書類を片手に革張りの椅子に腰掛けたまま、白蘭は困惑した表情ですぐ横に座っている僕を見る。今現在、僕はアンティーク調の椅子に腰掛けて、白蘭のすぐ横にぴたりと座っていたりする。書類に目を通す白蘭の真剣な横顔はそれはもう格好良くて、僕は胸が甘く締め付けられた。


「うん、その椅子のことはまぁいいや。骸君、今日は綱吉君からの用事で来ただけだよね?だったら…」


白蘭は一旦そこで言葉を切ると、立ち上がって奥の部屋へと消えてしまった。どうしたのだろうと思っていると、白蘭はチョコレートとコーヒーを乗せた小さなトレーを持って戻って来た。


「これ飲んだらさ、もう帰ってもらえるかな?ごめんね、これでも僕、結構忙しくて。」

「白、蘭…」


コーヒーの苦い香りが鼻を掠め、偶然にも僕の好きな店のチョコレートの包みが目に入る。困ったように笑う白蘭を見ていたら、まだここに居たいんですとは言えなかった。側に居たいけれど、白蘭の仕事の邪魔はできないし、そのようなことはしたくなかった。僕はゆっくりと立ち上がると、幻術で作り出していた椅子を瞬時に消し、足元に置いていたスーツケースからある物を取り出して、白蘭の目の前に置いた。


「僕はこれで帰りますが、せめてこれだけは…」

「これは…?」

「愛妻弁当ですよ!勿論手作りです。…僕の想いを込めて作りました。もし良ければ…あなたに食べて頂きたいのです。」

「骸君…」


小さな蘭の花の刺繍が所々に施された包みをズイと前に差し出す。白蘭は僕が作ったお弁当の包みをじっと見つめていた。黙ったままの白蘭に何か言って欲しくてドキドキしながら待っていると、分かったよ、お昼に食べてみるから、と答えが返って来た。


「ありがとうございます。すごく嬉しいです。」

「うん、まぁ、せっかく作ってもらっちゃった訳だし。食べさせてもらうよ。」


嬉しくて思わず泣きそうになっていた。本当に僕はどうすれば良いのでしょうか。白蘭が好きで好きで。どうしようもなくただ好き過ぎて。僕は白蘭の喜ぶ顔が見てみたい。その為にできることは何でもしてあげたいと思うし、これからも僕の気持ちを伝えたい。そしていつか僕の気持ちを分かってもらえる日が来れば良いのに。僕は帰り際に白蘭に精一杯の笑みを向けたのだった。



*****
「え〜と、骸君。これは一体…」

「心配しなくても大丈夫です。食材は全部僕が用意した物ですし、作って持って来ましたから、あなたの部屋の冷蔵庫やキッチンをお借りした訳ではなくて…」


白蘭がリビングの入り口に立ったまま、困惑したような表情で僕を見る。彼のセンスで統一されているリビングのテーブルの上には色々なイタリアの家庭料理が並んでいた。白蘭が好きな料理を調べて、僕なりに一生懸命作って来た物だった。


「骸君。」


静かな白蘭の部屋に彼の声が一際大きく響き、思わず肩が震えた。彼を怒らせてしまったのでしょうか?僕の頭の中はそれだけで一杯になる。僕は白蘭が大好きなだけで。ただ彼に僕の想いを分かってもらいたいだけで。白蘭の為に何かしないと落ち着かなくて。だけどそれは、ただの僕のエゴや押し付けだったのかもしれない。好きな人に何をすれば良いか分からなくて色々と行動してみたけれど、結局僕がやったことは全て白蘭にとっては迷惑に過ぎなかった。最早そうだったのだとしか思えず、僕はまともに白蘭の顔を見れなくなってしまって力なく下を向いた。


「…骸君って、本当に僕のこと好きなんだね。」


どこかのんびりとした声にとっさに顔を上げて白蘭を見た。彼は怒った顔などしておらず、僕の方まで歩いて来ると仕事用のスーツの上着を脱いでソファーに座り、僕にも座るように促した。


「僕の部屋のセキュリティー、色々変えないといけないかなぁ。」

「あの、それは…」

「ふふ、冗談だよ。」


白蘭は本気にしないで大丈夫だよ、と僕に目を細めた。


「僕ね、どちらかというと想うより想われる方が好きなんだ。…考えてみたらさ、骸君は男に見えないくらいとっても美人だし、僕のことが好きって一生懸命な感じで可愛い所あるし。まぁ、ちょっとびっくりするようなこともされたけどね。…だけど、この前のお弁当が…」

「僕が作った…?」

「うん、あの愛妻弁当が決め手になったのかなぁ。すごく美味しくて。骸君の僕を想う気持ちがひしひしと伝わって来たんだよね。…目の前にあるこの料理も君の気持ちが込もってて絶対に美味しいだろうと思うし。だからさ…」


骸君、携帯出して。白蘭が僕の方に手を伸ばす。言われるままに携帯電話を手渡すと、白蘭は僕の携帯に素早く何かを打ち込んでいた。


「骸君の携帯に僕の番号とアドレス登録したからさ、今度からは僕の部屋に来る時は連絡してくれると助かるかな。それと…」


白蘭はソファーから立ち上がるとすぐ側の金属製のラックをゴソゴソと探って、それからまたソファーに座った。


「これでさ、堂々と僕の部屋に入りなよ。ね、骸君。」


僕の手の中でキラリと光る銀色に確かな重みを感じて、僕は手渡された合い鍵を強く握り締めた。


「もう不法侵入しちゃ駄目だからね。」


何度も頷く僕に、分かればよろしいと白蘭が微笑んで、優しい仕草で僕の頭を撫でてくれたのだった。



*****
スースーと寝息を立てている目の前の顔を僕は頬杖をついてうっとりと見つめ続けていた。


「天使のような寝顔とは、まさに白蘭の寝顔のことを言うのでしょうね。…本当に可愛いです。」


白蘭の瞼がピクリと動き、紫色の双眸が僕を映した。どうやら僕の独り言で起こしてしまったようです。


「あれ?…骸君、だから僕…朝、弱いんだって。」


掛け布団の中で目を擦りながら白蘭がむくれた声を出して僕を見上げた。


「おはようございます。今日はちゃんと…合い鍵で入らせてもらいましたのでご心配なく。」

「あ〜、うん。…そうだ、せっかくだし。骸君。」

「はい。何でしょ…」


白蘭に突然腕を掴まれ、座っていたはずの僕は気が付けば白蘭に抱き込まれる形でベッドの中に居た。彼の着ている白いコットンの上着が僕の頬に優しく触れて、心臓が早鐘を打った。


「へ〜、骸君って抱き心地いいんだね。僕の腕にぴったりだよ。」

「びゃく…」

「そういえば、僕、今日仕事って休みだったんだよね。だからもう少しこのままでもいいかな?骸君も少しくらい遅刻したっていいでしょ?…あ、コート脱がないと皺になるかな?」

「コートのことはお気になさらず。それに、僕も…まだあなたと一緒に居たいです。」


僕の顔を覗き込んできた白蘭と目が合う。僕は恥ずかしさから白蘭の胸に頬を擦り寄せるようにして顔を隠した。白蘭が小さく笑う気配がして、それから僕を包む腕の力が強くなったように感じた。そのままそっと間近にある顔を見上げてみると、白蘭はどこか満足そうな顔をしていた。それは僕が望んでいた幸せの形そのもので。心が静かに満たされていく気がして、僕は白蘭の背中に腕を回した。


「骸君、僕あともう少しだけ寝たいからさ、骸君も一緒に寝ちゃおうよ。」

「はい。」


白蘭が起きたら美味しい朝食を作ってあげましょう。僕は優しい温もりをくれる腕の中で、いつまでも幸せな時間に浸っていた。






END






あとがき
骸君好き好きな白蘭とは反対に、白蘭好き好きな骸を書いてみたくなりまして、書いたら危ない美人になりました(´`)これも1つの白骸と思ってさらっと読んで頂けると嬉しいです。白蘭が大好きなあまり、変な所ですごく積極的な骸も可愛いと思いますv


読んで下さいましてありがとうございました!

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あきゅろす。
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