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Because I love U
バレンタイン×白骸な小ネタです




部屋に帰ってみると、恋人がソファーに座ってゆったりと寛いでいた。付き合い始めてすぐの頃にいつでも入れるようにと合い鍵は渡してあったので、白蘭は別段驚きもせずに骸の側まで行こうとした。けれどもガラスのテーブルの上に綺麗にラッピングされた箱が置かれているのが目に入り、思わずその足が止まってしまった。朝早く出掛ける前にカレンダーで何度も何度も確認したのだ。今日が何の日であるのかを。自分達にとって今日がどれほど大切な日であるのかを。


「骸クン!それって、もしかして…」

「白蘭、お帰りなさい。…あぁ、これですか?」

「うん♪それそれ!」


嬉しい気持ちが胸一杯に広がっていく。白蘭は骸の隣に腰掛けると、赤いリボンが巻かれた箱を指差した。チョコレートを渡す為にこうして自分の帰りを待っていてくれたのだと思うと骸のことがいじらしくて堪らず、白蘭は骸を思い切り抱き締めようとした。だが骸は白蘭が体を近付けようとする寸前にテーブルに置かれた箱を手に持つと、これは僕のですが…と淡々と呟いた。


「今日は世間に最もチョコレートが溢れる日でしょう?ですから、日頃頑張っている自分へのご褒美にと買って来たのですよ。」

「え?えぇ〜?ウソ、そんなのってないよ!酷いよ、骸君!…だったら何で今日、僕の部屋に…」

「……どこで何を食べようが、僕の自由ではないですか。」

「それはそうかもしれないけどさ、でも今日は…」


絶対に自分へのバレンタインチョコだと思ったのに。白蘭、どうぞ受け取って下さいと恥ずかしそうに頬を染める骸を仕事中に何度も想像していたというのに。リボンを解いて嬉しそうにチョコレートの箱を開けようとする骸の横で、白蘭はソファーに座ったまま動くことができなかった。つれない恋人の態度に今にも心が泣いてしまいそうだった。


「むくろく〜ん、僕へのバレンタインチョコは…ないってことなの?」

「おや、このチョコレートは一生懸命探した甲斐がありましたね。想像以上に美味しいです。」

「き、聞いてない…」


白蘭は骸からチョコレートを貰い、そのチョコレートに負けないくらいの甘い夜を彼と一緒に過ごそうと考えていた。しかしながらそれが今まさに目の前で儚く散ってしまおうとしている。これならば自分が高級店のチョコレートを買って骸に渡した方がまだ良かったのかもしれない。そうすれば、嬉しそうに微笑む骸を独り占めできただろうから。だが白蘭は、あくまでバレンタインデーは骸からチョコレートを貰う日なのだと考えていた。骸の愛情がたくさん詰まったチョコレートのお返しを1ヶ月後のホワイトデーでたっぷりとしてあげたい。そんな風に考えていたので、チョコレートを用意しているはずもなかった。骸との初めてのバレンタインデーがこんな形で終わってしまうなんてどう考えても悲し過ぎる。だが今の自分にはどうすることもできず、白蘭は大きな溜め息を吐くしかなかった。


「白蘭…」

「へ?何?むく…」


突然名前を呼ばれ、隣を振り返った瞬間、白蘭はふわりと骸に口付けられていた。骸からのキスは考えてみればこれが初めてのことであり、嬉しさや驚きにただ目を丸くしていると、骸が舌を使って白蘭の口内に何かを入れた。すぐさま口の中に甘い味が広がっていき、考えるまでもなくチョコレートだと分かった。骸に口付けられたままチョコレートをそっと噛んでみると、フニフニとした感触がした。どうやらマシュマロ入りのチョコレートのようだった。このチョコは…とパチリと瞬きをした白蘭をどこか楽しそうに見つめながら、骸が静かに唇を離した。


「チョコレートが入っているマシュマロは簡単に手に入りますが、マシュマロが入っているチョコレートを探すのは少し手間が掛かりましたよ。」

「骸君、このチョコって…」

「今日は特別な日なのですから、普通に渡してしまってはつまらないでしょう?…それに僕はいつもあなたに振り回されてばかりですから…やられっぱなしというのは性に合わないので、あなたを驚かせてあげようと思ったんですよ。」

「じゃあ、このチョコはやっぱり…」

「……あなたの為に、用意した物に決まっているでしょう。」


骸の耳がほんのりと桜色に色付いていくのが目に入って。先ほどまでと打って変わって恥ずかしそうにする骸に白蘭は目を奪われていた。自分の好物が入ったチョコレートをしかも口移しで渡してくれるなんて、本当に嬉しくて幸せで。骸は日頃の仕返しだと言っていたが、こんな可愛いことをされても仕返しになどなるはずがない。ただ自分をこれでもかというくらいに喜ばせるだけなのに。


「…まぁでも、骸君からチョコ貰えないのかもって思ってちょっと泣きそうにはなったけど。」

「おやおや、少しやり過ぎてしまいましたか。…ですがこのようなことをするのは…あなたが好きだから、ですよ。」

「骸君!僕も大好き!」


今度こそ骸の体に腕を回して優しく抱き締めると、甘えたように顔を寄せてきた。骸の温もりを目一杯感じていると、もう1つどうぞと唇にチョコレートをそっと押し付けられた。それじゃあいただきますと口の中でチョコレートの甘さを味わうと、そんな自分を見て骸は嬉しそうに目を細めた。


「ふふ、骸君、ホワイトデーは楽しみにしててね♪僕、絶対君を満足させてあげるから。…でも僕は、今日の骸君みたいに変に不安にさせるようなサプライズはしないから。あくまで王道でお返しするからね!」

「あまり根に持たないで下さいよ。」

「大丈夫だよ。だってちゃんと骸君からチョコ貰えたんだもん。しかも口移しだなんて、すっごくいい思い出になっちゃったし♪あぁ、僕、今信じられないくらい幸せ。」

「そうですか。それは、良かった…です。」


耳だけではなく顔まで赤くなってしまった骸を本当に可愛いなぁもう、と思いながら、白蘭はもう1粒チョコレートを口に放り込むと、骸君の愛が感じられて本当に幸せなんだからねと、綺麗に微笑んだ。






END






あとがき
バレンタインデーの白骸のお話ですが、毎回のごとく最後は甘くしました^^


骸は白蘭にちょっと意地悪しちゃいましたが、本人も言っているように好きだからこそです(・ω・)それから私、口移しネタ大好きなもので、白骸の2人にやってもらいました!書けて満足ですv

読んで下さいましてありがとうございました♪

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