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ご褒美をアゲル
サンタって信じてた?白蘭は、自身の背丈の半分ほどの高さのホワイトツリーを飾り付けながら、すぐ横のソファーに座っていた骸に問い掛けた。誰もがおそらく1回は問い掛けられたことのある質問に僕が信じていた訳がないでしょう、と即答された。


「ま、そうだよね。骸君って子供の頃からリアリストっぽいもんね。」

「あなたは今でも信じていそうに見えますけどね。」

「えぇ〜、それって僕がまだ子供だって言いたいの?酷いなぁ、骸君。」


サンタからのプレゼントを楽しみに待つ子供のように、僕からのプレゼントを心待ちにしている顔に見えますから。クスクス笑っている骸に頬を膨らませつつ、白蘭はツリーの飾り付けを終わらせた。仕事が忙しくて自分の部屋に置きっぱなしのままにしていて、結局クリスマスイブ当日になってしまっていた。たくさんのゴールドのリボンで飾られたツリーがあるだけで、部屋の中の雰囲気は随分と華やいだ物になり、イブを2人で過ごすのにぴったりだった。



*****
白蘭は骸をソファーに座らせたまま、次々とディナーの準備を進めていった。リビングのガラスのテーブルにはたくさんの料理やケーキが並んでいく。今日この日の為に腕によりをかけて作った物ばかりだった。骸がチョコレートケーキに嬉しそうに目を輝かせる姿が可愛らしくて、白蘭は悶えそうになるのを我慢した。


いつもよりも豪華なディナーの準備が終わったが、白蘭は食べる前に骸にプレゼントを渡したくなってしまい、そのまま骸の隣に座ると、先ほど準備中にこっそりリビングに持って来たプレゼントの箱を手渡した。


「はい、骸君。僕からのプレゼントだよ♪」

「せっかくなので今開けても良いですか?」

「どうぞどうぞ。」


骸は赤いリボンがあしらわれたシックな包装紙を丁寧に開いていった。そして包装紙の中から現れた中身に一瞬だけ嬉しそうにしたが、すぐに憮然としたような表情になった。


「この程度で僕が満足するとでも?」


白蘭があげたプレゼントは高級店のクリスマス限定のチョコレートのアソートだった。白蘭は普段でも骸に高級なチョコレートをプレゼントしていたので、骸にとってチョコレートはクリスマスのプレゼントには入らないのだろう。それは白蘭も分かっている。


「勿論、これくらいじゃ骸君は満足しないって知ってるよ。」


白蘭は骸に微笑むと、そのまま骸の腕を引いて優しくキスをした。そして包み込むようにその体を抱き締めた。


「…っ、まだまだですよ。」


白蘭に抱き締められたまま、骸がまだ足りないと声を出す。それでも口にした言葉にはどこか嬉しそうな響きがあって、もう少しかな、と白蘭はパンツのポケットからこれまた綺麗にラッピングが施された箱を取り出した。そして骸君、見て見て、とその小さな箱を骸の目の前に翳した。


「一応、これが本当にあげたかった物なんだけど…」


チョコレートやキスの演出など僕は別に要らなかったんですがね。そう言いながら骸が白蘭の手からプレゼントの箱を受け取る。そんなこと言ってるけど、骸君、チョコレートもキスも嬉しそうにしてたけどね。白蘭は心の中でそんな風に思ったが、口に出せば怒った骸に殴られるか叩かれるか頬を抓られるかなので黙っておいた。隣でそっと箱を開けた骸が、これは…と呟くのが耳に入り、どう?気に入ってくれた?と白蘭は再び骸の肩を抱き寄せて顔を覗き込んだ。


「見て分かるだろうけど、ネクタイピンだよ。骸君も僕と一緒で仕事柄スーツを着るからいいかなぁと思って。指輪はもうあげちゃってたし…」


「これ、アメジストですか?」


骸がネクタイピンの飾りとしてあしらわれている小さなアメジストを指差した。骸の手の中で紫色の宝石が淡く輝いて綺麗だった。


「うん。紫ってさ…僕達の色だと思うんだ。僕の瞳の色だし、骸君の赤と青の瞳が溶けた色だから。」

「白蘭…」


骸は手の中のネクタイピンと白蘭を見比べるように視線を向けると、そのまま黙り込んでしまった。あれ?もしかして気に入らなかったのかな。骸君に喜んでもらいたかったのに。少しだけ残念な気持ちが胸に広がりかけた時、骸が不意に悠然と微笑んだ。


「あなたへの僕のプレゼントは、僕自身だと言ったら…どうします?」

「え?骸君、今…」


骸の言葉の意味を理解するより早く、白蘭はソファーに押し倒されていた。白蘭を押し倒した骸は、そのまま体を押し付けるようにして楽しそうに上から見下ろしている。骸の瞳の中に確かに自分を求める炎が揺らめいているのが分かって、心臓が大きく跳ねた。今すぐ口付け合えるほどに近い距離に、最早理性が崩壊しそうだった。白蘭が骸に応えようと顔を近付けると、骸はフイと顔を逸らして代わりに白蘭の唇に人差し指を押し当てた。


「駄目です。まだケーキも料理も食べていませんよ。…お楽しみは最後まで取っておくものでしょう?」


そうですよね、白蘭?誘うように小首を傾げる骸に本当にもう色々と限界だった。骸君は可愛くて、ズルいなぁと思う。逃げ道を塞いで追い詰めて、僕を煽るのが上手くて。


「骸君、無理。待てない。」

「せっかくあなたが作った料理が冷めてしまいますのに。」


仕方ありませんね。咎める声がそれでも優しく降って来る。骸の腰に手を回して体を入れ替えても、彼は小さな笑みを浮かべて大人しいままで、その先を望むかのように瞳は静かに艶めいていた。


「いつも僕を愛してくれるご褒美ですよ。返品は不可ですからね。」


冷めてしまった料理はまた温め直せばいい。今は恋人からの甘いプレゼントをじっくりと味わうことが先だった。白蘭は骸の頬を撫でて、そっと唇を近付けた。とろけるような恋人の顔と白いクリスマスツリーが見えて、どちらも綺麗にキラキラと光っていた。





END






あとがき
クリスマス×白骸のお話です♪


クリスマスなどのイベントになると、普段よりも白蘭にデレる骸って可愛いなぁと思いまして、ちょっと誘い受けっぽい骸にしてみました(・ω・)/


読んで頂きましてありがとうございましたv

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あきゅろす。
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