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黄色い薔薇
原作寄りの10代の2人です
捏造度合いが酷いです
(10000HITリクエスト)




僕は、白蘭…あなたのことが好きです。


明るくてあどけない笑顔も、アメジストみたいに光り輝く紫色の瞳も、少し高めの甘い声も。そう、あなたの何もかも全てが。


好きで好きで堪らないのに。好き過ぎて、もう心がどうにかなってしまいそうなくらいなのに。


どうしてあなたは、僕に会いに来てくれないのですか?僕が隣に居ないのに平気なのですか?僕は悲しくて苦しくて、こんなに心乱れているのに。どうしてそんな僕に気付いてくれないのですか?どうして、どうして…あの子が、ユニがあなたの隣に居ることを許しているのですか?


あなたには、僕が居るではありませんか。


なのに僕ではなく、ユニを選ぶというのならば。僕を遠ざけようとするのならば…



僕は、あなたのことを壊してしまうかもしれませんよ。



*****
並盛町のとあるホテルの屋上。その屋上にある柵に腰掛けて、僕は星屑を散りばめたような夜の街を静かに眺めていた。そのまま目を閉じて周囲の気配を探る。これから初めて会うのに、どこか懐かしい気配を確かに感じた。僕の調べた通り、やはり白蘭はこのホテルに居るようですね。


「白蘭、僕から会いに来てあげたのですから…分かっていますよね。」


僕はゆっくりと口の端を釣り上げると、そのまま夜の闇にその身を投げ出した。瞬間幻術を使ったので、今ここに誰かが居たら突然僕が消えてしまったように見えたかもしれなかった。





それからほどなくして、ホテルの最上階にあるスイートルームの部屋の中に僕は悠然と立っていた。僕のすぐ目の前には会いたくて会いたくて堪らなかった少年と、視界に入れたくもない少女がテーブルを挟んで上質なソファーに座っていた。僕が音もなくこの部屋に現れたことに少しは驚いたんでしょうね、白蘭が瞳を瞬かせて僕を見た。彼の向かいに座るユニは僕が来ることが分かっていたとでもいうように、ふわりと微笑んでいた。僕は彼女から視線を逸らすと、まだ僕を見つめている白蘭に、突然で驚かせてしまいましたか、と笑顔を向けた。


「はじめまして、こんばんは、白蘭。知っているとは思いますが、僕は六道骸です。……僕は煩わしいことが嫌いなので、すぐ済むように単刀直入に聞きます。…どうして今まで僕のことを放っておいたのですか?僕は、あなたをずっと待っていたのですよ。」

「骸君!?本当に本当に骸君だ……あ、あのね、骸君…僕にも、その…立場とか色々あって。」


白蘭がソファーから立ち上がって、僕の所まで歩いてきた。ほぅ、立場ですか?ミルフィオーレファミリーのボスで居ることの方が、僕よりずっと大切ということですか。そうでしたね、確か白蘭、あなたは…


「僕よりそこに居る少女の方が、ベストパートナーなんでしたよね。」

「え?骸君、君…何でそれ…」

「僕のことを甘く見てもらっては心外ですね。…白蘭、あなたはやはり僕より、ユニを選ぶという訳ですか。今もこんな風に2人で会っていたみたいですし。」

「骸君、僕がユニちゃんと一緒に居るのは、彼女の母親に色々頼まれちゃったからで…それに今はこれからの戦いのことを話してただけだよ。」


ね、ユニちゃん?白蘭が後ろを振り向いてソファーに座ったままのユニの方を見る。ユニも白蘭に同意するように小さく頷いた。2人が視線を合わせただけでも、僕は吐き気がするくらい嫌な気持ちになった。もう我慢できそうになかった。白蘭が僕から離れていくのならば。白蘭が僕の隣に居てくれないのならば。僕の白蘭で居てくれないのならば。



「そうですか…あなたが僕のもので居てくれないのならば、僕より優先するものがあるのならば…そんなあなたなど…僕は要りません。ですから…」


僕は白蘭に艶やかな笑みを向けると、虚空から取り出した三叉槍を彼の喉元に突き付けた。僕に間合いを詰められて動けなくなった白蘭の喉が小さく動いたが、僕は構うことなく切っ先をさらに押し付けた。


「ちょ、ちょっと落ち着こうよ!ね、骸君。」

「僕は落ち着いてますよ。…さようなら、白蘭。」

「六道さん、これ以上あなたの心を傷付けては駄目です。」


突然響いた声に、僕の手が止まった。意識はそのまま白蘭の向こう側に居る少女に向けられる。ユニは、僕の行動に心を痛めたような表情で立っていた。


「黙っていて頂けますか?…僕は本気です。邪魔するというのなら、あなたも…」

「六道さんの、悲しくて辛いという気持ちが私にすごく伝わってきます。白蘭のことが大切で、大好きで、だからこそ今の状態がもどかしくて切ないと。」

「小娘は黙っていなさい!」


僕は白蘭に三叉槍を突き付けたまま、ユニに声を荒げた。ユニに嫉妬している不様な姿を晒そうが、今の僕は構っていられなかった。


「…六道さんを悲しませてしまったことは、私も悲しいです。だけど2人が傷付け合うのは、もっともっと悲しいです。…だから白蘭の話も聞いてあげて下さい。きっと分かり合えます。」


ユニが優しさをたたえた瞳で僕に頷く。その吸い込まれそうな瞳に見つめられて、僕は言葉に詰まってしまった。何か言い返さなければ。動揺していた僕の手に、何かがそっと触れる感覚がした。驚いて視線を手元に戻そうとすると、僕の手を愛おしむように包み込む白蘭と目が合った。


「骸君…」

「びゃく、ら…」


不意のことに僕は動揺が隠せず、その手から三叉槍は消えていた。白蘭に隙を付かれ、気が付けば彼に腕を引かれるように歩き出していた。白蘭はそのまま部屋のドアを開けて出て行こうとする。僕がその手を離そうとしても、固く掴まれたままだった。力では白蘭に負けてしまうことを悟った僕は、大人しく彼の後を歩いた。部屋を出て行く時にニコリと笑うユニが見えたが、僕は先ほどの彼女への非礼にいたたまれなさを感じ、俯くしかなかった。



*****
白蘭は僕を連れたまま、すぐ隣の部屋に入った。その部屋も高級なスイートルームだったが、先ほどの部屋よりも随分と広かった。



「ここは今、僕が泊まってる部屋だよ。……骸君。」


白蘭が振り向いて、僕の頬に手を当てる。そのまま白蘭の顔が近付いてきたかと思った瞬間、僕は彼に唇を奪われていた。不意打ちのようなその口付けに、流されそうになった。だけど、こんなもので僕は誤魔化されたりなどしない。あなたを許す訳にはいかないんです。


「やめて、下さい…こんなことで…僕は…」

「骸君、ごめん。…ごめんね。僕が君のことを好きで、君も僕のことが好きだから、それでいいんだって思ってた。…でも、だからって、骸君のことを放っておいていいことにはならないのに。」


ごめんね、本当にごめん。白蘭は何度もそう呟いた。僕を抱き締める白蘭の肩が小さく震えていることに気付いて、僕は彼に抱き締められたまま動けなかった。


「白蘭、謝るのはやめて下さい。…もう十分あなたの気持ちは分かりましたから。だから謝るのは…」

「骸君、ありがとう。」


白蘭がそっと僕の体から離れて、僕に笑い掛けた。僕は胸が締め付けられて、苦しくて仕方なかった。僕は結局、白蘭から離れることができない。僕を放っておいて、ユニと居た彼を壊してしまいたいほど憎らしく思っても、結局は彼のことが好きで好きで。



「…骸君さ、まるでそこにある黄色い薔薇の花と同じだね。」


今気付いたというように、白蘭は部屋のテーブルの上にあった花瓶を指差した。その先には黄色い薔薇が数本生けられた花瓶があった。


「黄色い薔薇の花言葉は『嫉妬』なんだ。骸君は嫉妬したから、あんなに取り乱したんだよね?」

「…嫉妬して何が悪いのです?僕はあなたが好きで堪らないのですから、嫉妬して当然ではありませんか。」

「む、骸君!不謹慎かもしれないけど、僕…すっごく嬉しいよ。骸君がそんなに僕のこと好きだったなんて。…ユニちゃんのことは本当にごめんね。僕と一緒に戦う子の中にさ、すごく青い子が居て。彼をからかおうとしただけだったんだ…僕には骸君だけなのに。」

「僕の気持ちを理解して頂けたのならば、もう…良いですよ。」


あれだけ荒ぶっていた心は、白蘭が僕の側に居てくれるだけで、穏やかになっていた。白蘭はそうだ、と突然ひらめいたような顔になると、僕の手を取った。

「骸君、仲直りするなら…これが1番だよね♪」


耳元で甘い声が響き、僕の体は背後にあったキングサイズのベッドの上に押し倒されていた。白蘭が僕に覆い被さってこようとするのを、ベッドに沈んだまま腕を伸ばして制止した。


「白蘭、その前に1つ良いですか?」

「うん、な〜に?」

「今回はこれで許してあげますが、もし今後ユニと親しげな素振りを見せたり、僕をないがしろにするようなことがあれば…喉元に喰らいついてやりますからね。」


僕は、白蘭が着ているノースリーブのベストの襟元を掴むと、彼の首筋に思い切り歯を立てた。


「…骸君の愛情表現は、本当に…刺激的だね。」


首元を押さえて白蘭が嬉しそうに目を細める。僕も白蘭を見上げながら、静かに微笑み返した。白蘭が僕の体を抱き締めるように再び覆い被さってくるのを、今度は僕も止めることはなかった。






END






あとがき
骸が白蘭とユニの関係を殺したいと思うほど嫉妬するというリクエストを拍手で頂いていたのですが、骸が中途半端な感じですみません(><;) 少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


白蘭のことが好き過ぎて、独占欲の強い骸も良いですよね^^白蘭もそんな骸が可愛くて仕方なければ良いと思います(*^^*)


この度は素敵なリクエストありがとうございました♪

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あきゅろす。
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