[携帯モード] [URL送信]
君が大好きだよ♪
原作寄りの現代の2人です
色々無理矢理設定です
代理戦争終了後の白骸妄想になっております




すぐ近くで大きく響いた溜め息にどうしたのだろうと、骸は目の前にある白蘭の顔を見つめた。見舞い客用の丸椅子にちょこんと座っている白い彼は、ベッド脇に脚を組んで腰掛けている骸と全く同じ格好をしていた。この飾り気のない服装でいることも彼の溜め息の原因の1つなのかもしれない。病院で大人しく入院していることが退屈なのではないだろうか。骸はそんな風に思いながら、黙って白蘭の言葉を待った。つい先ほどまでは、遊びに来たよー、骸クン♪と楽しそうにしていたというのに。俯いて溜め息を零した白蘭はおずおずと顔を上げると、どこか困ったような笑い顔で口を開いた。


「考えてみたらさー、僕って結局怪我ばっかりしちゃって、ほとんど入院してたような気がするんだよね。」

「…白蘭?」


今し方頭の中で考えていた予想とは違う言葉が返って来てしまい、骸は白蘭をまじまじと見つめた。小さな個室の中で2人の視線が緩く絡み合う。骸と間近で見つめ合っている状況であるというのに、白蘭は嬉しそうにする所かキュッと眉根を寄せた表情になった。


「…僕、全然カッコ良くなかったよね。骸君と一緒に戦って、僕のすっごくカッコ良い所を君に見せようって思ってたのになぁ。ボロボロにやられちゃうなんて、ほんとカッコ悪い。」


白蘭の瞳には自分自身の情けなさを悔やむ色が浮かんでいた。その色が藤色の瞳の奥にはっきりと見て取れて、骸はそれは違いますよと静かに首を振った。


「そんなことはありませんよ。僕も…こうして入院している訳ですから。」

「そうだよ、君だよ!骸クン!僕なんかより…骸君の方こそ大丈夫なの?怪我した所はもう、痛まない?傷痕とか残ったりしないよね?骸君の肌はすごく綺麗なんだから。僕、それが一番心配だよ。」


もう大丈夫だよね?白蘭は心配そうな表情になると、骸の顔を覗き込むようにさらに近付いた。好きな人からこんな風に本気で心配されて嬉しくない訳がない。嬉しさに心が震えるのが分かった。骸は白蘭との距離の近さに馬鹿みたいに鼓動が速くなるのを感じたが、白蘭の鎖骨の下辺りから白い包帯が覗いていることに気付いて、思わず唇を噛んだ。


「僕は…大丈夫ですよ。白蘭、あなたの方が僕よりよほど…」


あの時の光景を思い出しただけで、骸は今でも心臓を強く掴まれたように胸が痛くなる。白蘭が最強の復讐者の攻撃を受けて倒れ伏した後も骸は特に表情を変えることなく戦闘を続けたのだが、心の中では今ここで取り乱してはいけないと必死に自分に言い聞かせていたのだ。酷く傷付き意識のない彼の姿に耐えられず、本当はすぐにでも駆け寄って抱き締めたかった。だが骸は自分の気持ちをグッと抑えて目の前の状況を打開することを優先した。綱吉達と共に一刻も早くこの戦争に終止符を打つべきだと判断したのだ。早く終わらせて白蘭を助けたい。その一心だった。だから今、柔らかな午後の光の射し込む中でこんな風に白蘭と話していられる、ただそれだけで十分なのだ。ただもうそれだけで幸せで、切なさに胸が苦しかった。


「僕?僕はね、もう全っ然平気だよ♪」


心配してくれてありがとう。白蘭が綺麗な笑顔を骸に向けた。白蘭の花のような笑顔はいつも自分を惹き付けて離さない。狂おしいほどに強く。骸にはそう思えてならなかった。今この世界を生きる自分も、未来を生きる別の自分も、白蘭の笑顔に温かな幸せを貰っていたのだ。いつもいつも。骸は白蘭に小さく微笑むと、平気だと言っていますが無理だけはしないで下さいよと心の中で呟いた。


「僕、自分は結構強い方だと思ってたんだけどなぁ。未来でもゲームのラスボスみたいに強かったでしょ?だから骸君と一緒に楽しんで戦えるってわくわくしてた。でもさ、やっぱり世界って広いんだね。」

「僕もあなたもまだまだ強くなれますよ。」

「うん、それには僕も賛成♪でもね、全部終わった今だからこそ、酷い怪我をして入院して良かったとも思うんだ。」

「どうして、そのようなことを…」


骸は驚いて目を見開いた。一歩間違えれば今ここに居なかったかもしれないのだ。それなのに全くそんな風に思っていないだろう嬉しそうな顔で、白蘭はそれはね、と言葉を紡いだ。


「骸君とこんな風に1日中一緒に居られるからだよ。僕、すっごく幸せだもん、今。だから痛い思いもしたけど、代理戦争に参加して良かったよ♪」

「白蘭…」


ユニや仲間の為に戦ったはずであるというのに、最後にはここを選んでくれるのだ、彼は。自分の隣に居ることを。白蘭の想いが痛いくらいに真っすぐ伝わって来たが、骸は自分の中にある大切な想いを言葉にできずにいた。いつか必ず伝えなければならないと思っているのに。骸のそのような心の葛藤を知らないであろう白蘭は、骸を見つめたまま話を続けた。


「…それにしてもさ、入院してからずっと思ってたことがあるんだけど。」

「何です?」

「僕と骸君は病室が近いっていうのに、何で全然いちゃいちゃできないのさ!」

「な、何を…」


何を言い出すのですか。悪い冗談はよしなさい。白蘭にそう言おうとしたのに、骸は酷く狼狽えてしまって後の言葉が続かなかった。慌ててしまった骸に対して白蘭はといえば、僕は本気だよと真剣そのものだった。


「せっかく骸君の側に居られるのにさ、皆が毎日毎日お見舞いに来て長く居座るせいで、骸君との時間をゆっくり過ごせないんだもん。僕はもっともっと2人で居たいのに。」


壁に穴が開いたからさ、わーい、大部屋だー♪骸君の隣に陣取っちゃおうって思ったのに、結局別の個室に移されちゃったし。まあ骸君の部屋と近いからいいんだけど。でも皆が邪魔するからほんと嫌になっちゃうと、白蘭は子供のようにむぅと頬を膨らませた。


「白蘭、あなた… 」

「あ、そういえば、お見舞いで思い出したんだけど、昨日リンゴ君が君のお見舞いに来てたよね?」

「リンゴ…フランですか?ええ、昨日は一丁前に1人で僕に会いに来ましたね。」

「その子が帰る時に僕の病室を覗きに来たんだよ。一瞬だったけど、思いっ切り目が合っちゃって。でさ、何でか分かんないんだけどね、可哀想っていうか憐れみの目で見られたんだけど!」

「……」


色々頑張って下さいーとかも言われちゃったんだよ!ねぇねぇ骸君、これってどういうことだと思う?僕、あの子とそんなに仲良くないんだけど。寧ろブルーベルの方が仲良しになれそうだよね?白蘭は骸に詰め寄ったが、骸は何と答えれば良いのだろうかと焦ってしまった。フランは、骸の白蘭に対する想いを知っている。だから白蘭をからかってみることで、結果的に骸を慌てさせることができたら面白いだろうと思ったに違いない。幼いながらに優秀で捻くれた弟子のやりそうなことだと骸は溜め息を吐いた。昨日耳元で言われてしまったのだ。せっかくのチャンスなんですよー、何か手を打たなきゃ勿体ないですー、と。骸自身も分かっている。分かり過ぎるほどに分かっていた。白蘭がこんなにもすぐ近くに居るのだ。このままで良い訳がない。それなのにいざ自分の想いを伝えようとすると、どうしても伝えたい言葉を音に乗せることができなかった。


「骸クン…?」

「あっ、すみません。その、少し考え事を……フランのことは申し訳ない。後できつく言っておきますから。」


小さい子だし別に叱らなくても大丈夫だからね、と白蘭は微苦笑を浮かべたが、骸の言葉に納得したようだった。骸は分かりましたと白蘭に頷き返したが、頭の中はこのままではいけないという思いで一杯だった。ほんの少し、少しで良いから伝えなければと、骸は決意をしたように小さく息を吐いて白蘭を見つめた。


「…あなたとこんな風に過ごすことは…悪くないと思っています。」

「骸くん…」

「思っていますが、僕はあのファミリーレストランで過ごす方が楽しい。ですから…退院したら、また僕を連れて行きなさい、良いですね?」

「うん!約束する!僕、絶対骸君と一緒に行く♪」


ぱあっと目を輝かせて喜ぶ白蘭を見て、骸は嬉しくて堪らなかった。白蘭は自分の精一杯にきちんと応えてくれる。骸は白蘭を眩しく見つめながら、胸に込み上げる幸せを感じていた。



*****
黒曜ランドの近くにあるそのファミリーレストランは、何度か白蘭と過ごした大切な場所だった。簡単な食事と会話を楽しんだ後、白蘭と骸はレストランの裏手にある高台へと向かっていた。2人で会いたいと約束をしたのは実は白蘭ではなく、骸だった。骸から白蘭を誘ったのだ。傷が癒えて病院を退院した後、骸はずっと考えていた。自分と白蘭のこれからのことを。だから今日、自分から白蘭を連れ出したのだった。


街を見渡せる高台への道はいつかの日のように白蘭の翼を使って飛んでは行かず、時間を掛けて歩いて移動した。骸だけではなく白蘭も何か考え事をしていたのか、いつも良く動くはずの唇はキュッと引き結ばれていた。それでも隣を歩く自分を気遣うように微笑んでくれるから、高台に着くまでの間、骸の心は様々な感情で揺れ動いていた。




「僕、もうすぐしたらイタリアに帰らなくちゃいけなくなったんだ。元々監視中の身だったしね。って言ってもまぁ今は自由になったんだけど。」

「それは…」


いつもより空が近いこの場所には骸と白蘭の2人だけだった。静かに紡がれた白蘭の声は遮る物もなく、透き通るように真っすぐ骸へと届いた。始まれば必ず終わりが来ることは分かっていた。代理戦争が終わった今、自分達もそれぞれの日常に戻らなければならないのだ。骸は決意を固めるように両の手のひらに力を込めてグッと拳を作ると、真っすぐに白蘭を見つめ返した。


「骸君と初めて会った時、君を迎えに行くって約束したけど…ごめんね、それはもう少し先になりそうなんだ。でもね、骸君、僕は君を…」

「白蘭。」

「骸くん?」


骸が今までになく真剣な瞳をしていたからだろうか、白蘭は続けようとしていた言葉を切って僅かに目を見開いた。骸は距離を縮める為に白蘭に一歩近付くと、立ち止まってフッと穏やかに微笑んだ。


「僕は、好きな人のことはずっとずっと待っていられるんです。ですから、白蘭、あなたのことを待っていますから。」

「そっか、骸君って好きな人と離れてもずっと待っててくれるんだね。で、僕のことも待っててくれると……え?ちょっ、待って…む、骸クン!?」

「何を赤くなっているのですか。茹でだこみたいになっていますよ。」

「だって!好きな人って、骸君の…骸君が…僕のこと待ってて、それって…好きだからで、僕が好きって…」

「動揺し過ぎ、ですよ。」

「骸君のそんな顔見たら動揺するに決まってるよ!」


気が付けば骸は強く強く抱き締められていた。白蘭の体温が心地良く骸の全身に広がっていく。白蘭が包み込むように抱き締めてくれたことは骸にとって好都合だった。耳まで赤くなっている所を見られなくて済んだのだから。


「嬉しいよ。僕、どうしたらいいの!」

「白、蘭。」

「…もしかしたら骸君も僕のことを好きなのかもしれないってちょっぴりだけ思ったこともあったりしたよ。でも…それはあくまで僕の願望だったから。だからすっごく嬉しい。君が、僕が好きだから待っててくれるって。」

「待っていてあげますよ。」


骸は白蘭の胸に顔を寄せて頷いた。素直に好きだと言葉にできない自分は、こんな風にしか想いを伝えることができなくて。けれどもちゃんと白蘭に分かってもらえたのだ。好きだというこの気持ちを。骸は今この瞬間、何物にも代え難い幸せは確かにあるのだと感じた。


「ありがとう、骸君。僕、君に会いに来て良かったよ。一緒にファミレスで過ごして良かった。君と夕空を飛んで良かった。少しだったけど君と一緒に戦えて良かった。君を好きになって、本当に良かった。」


同じだった。白蘭と会って良かった。一緒にファミリーレストランで過ごして良かった。彼と夕空を飛ぶことができて良かった。お見舞いに行って良かった。少しの間だったが、彼と一緒に戦えて良かった。彼を好きになって、本当に良かった。骸も白蘭と同じだった。


「君が大好きだよ。」

「僕も、です。」


お互いにまだうっすらと赤い顔のままであり、骸と白蘭は2人で小さく笑い合った。目に映る空はどこまでも青く輝いていて。自分達の想いが1つになった日に相応しいくらいに青く輝いていた。骸はどこまでも広がる空を見上げながら、これからもずっとずっとこの空の青さを忘れないだろうと思った。絶対に忘れないだろうと。






END





あとがき
原作に〜のシリーズを何とか終わらせることができて良かったです。読み返してみると何ともチグハグな流れになってしまいましたが(´`;)本編のコマとコマの隙間で白骸がこんな風に絡んでいたらいいなぁという妄想の産物です。その為に無理矢理設定も入れてしまって申し訳ない感じです。


このお話を上げた2012年11月12日で残念ながら原作は終了した訳ですが、虹の呪い編を本誌を読んでいる時は白骸で共闘してくれないかなとずっと期待していました。ですが、白蘭は早々にリタイアするわボスチームで戦った時も負傷するわ骸も最後には病院行きになってしまったので、2人の絡みが上手く妄想できず、強引に終わらせてしまうことに(T△T)前話から随分と間が空いてしまった上に無理矢理終わらせた感が満載ですが、自分なりの白骸妄想補完ができて、満足ですv代理戦争が終わってもその先もずっと白骸でらぶらぶしていれば良いと思います^^


最後までお付き合い下さいまして、本当にありがとうございました!

[*前へ][次へ#]

50/123ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!