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午前1時に会いましょう 2
僕はさっきからずっと時計を気にしていた。勿論今はバイト中なんだけど。あと10分で1時だ。今日は骸君、来てくれる気がする。


骸君は午前1時にと言ってくれてから、4、5日間隔でコンビニに来てくれていた。相変わらずお客さんは居なくて、僕は2人きりの時間を思い切り楽しむことができた。最初はやっぱり距離があったんだけど、1ヶ月も経つと骸君は楽しそうに話してくれるようになった。これってもしかして、僕に心を許してくれてるってことなのかな?そうだと嬉しいな。


少しずつだけど、確実に骸君との距離が縮まっていく気がしていた。



*****
あれ?10分ってこんなに長かったっけ?僕は再び時計を見たけど、針はほとんど進んではいなかった。普段の生活だとあっという間の時間なのに。骸君に会ったのが5日前だから、絶対今日来てくれるはずなんだ。あぁ、早く会いたいよ。


「こんばんは、白蘭。今日も頑張っているようですね。」


入り口から優しい声が響いて、骸君が店内に入って来た。良かった、今日も会えた。


「骸君、来てくれて嬉しいよ!…今日は何買うの?」

「まだ考えてないので、ゆっくり探しますよ。」


骸君は最初の方は色々なお菓子やスイーツを買っていたけど、最近は1つだけ買うようになっていた。以前気になって尋ねてみたんだけど、彼は1度にたくさん買ってしまうと、そのうち買う物がなくなってしまって、ここに来ることができなくなってしまうと教えてくれた。別にそこには深い意味なんてないのは分かってる。だけど僕に会えなくならないようにって、思ってくれてるんじゃないかって考えてしまった。僕は相当重症なんじゃないかな。今さらだけど骸君に溺れている。


骸君は陳列棚をじっと見つめて何にしようかと真剣に考えている。いつもの大人な顔とは違って、まるで少年のようだ。そんな時、僕の中で彼に対する愛しさが溢れそうになるんだ。


「今日はこれにしました。」


骸君は僕に、1つずつ丁寧に包装されたチョコを4つ差し出した。


「子供の頃、良く食べたんですよね。懐かしくて買ってしまいました。」

「僕も食べたよ。いろんな味があってどれにしようかって良く迷ったもん。あ、ちょっと待っててね。」


僕はそう言ってポケットから1つチョコを取り出して袋の中に入れた。


「明日から発売される、このチョコの新しい味のやつ入れとくね。」

「いつもありがとうございます。」

「気にしなくていいんだよ。僕があげたいだけなんだし。」


僕は休憩中にいつでも食べられるようにと、ポケットの中にチョコや飴やクッキーなんかを忍ばせている。新商品のお菓子をいち早く手にできるのは、コンビニでバイトしている特権だよね。僕はそれを生かしてお菓子を買って、少しだけど骸君にあげるようにしたんだ。最初は骸君も遠慮がちだったけど、今では楽しみにしてくれているみたいで、僕がお菓子を入れると嬉しそうな表情をしてくれる。こんなことしかできないけど、骸君には少しでも喜んで欲しいから。僕ができることは何でもしたいって純粋に思う。


店内はいつものように骸君以外にお客さんは居なかった。骸君はそれを確認して、僕から袋を受け取っても、もう少し話してから帰るみたいだった。


「今締め切りが3本重なってるんですよ。余裕を持ってこなしてたんですが、ちょっとスランプになってしまいましてね。…だけど、今日あなたの顔を見て、また頑張ろうって思えました。あなたの笑顔は僕に元気をくれるんですよ。」


ありがとうございますねと、言って骸君は僕に微笑んで帰っていった。


僕の頭の中はさっきの彼の言葉で一杯になっていた。僕の笑顔が少しでも骸君の力になれているなんて…それは泣きたくなるくらいに嬉しくて、嬉しくて。



午前1時の逢瀬を骸君も少なからず大切にしてくれている。今度はそう思えて仕方がなかったんだ。



もっともっと骸君を支えてあげたい。だって僕は君が好きだから…

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