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ずっとずっと…
弟白蘭×兄骸(2222HITリクエスト)




今でも良く夢に見るんだ。君と初めて会った日のことを。



あの日のことは、はっきりと覚えてる。幼い僕は父親の背に隠れるようにして、綺麗な女性に連れられて歩いて来る君を見ていた。


「はじめまして、ぼくはむくろといいます。」


君は僕を見てふわりと笑った。だけど僕は恥ずかしくなって、きゅっと目を瞑ると、その場から駆け出そうとした。君はそんな僕の近くに来ると、優しく抱き締めてくれたんだよね。そして僕の頭をそっと撫でてくれた。


「だいじょうぶですよ。こわがらないで。…あなたのなまえは?」

「…びゃく、らん。」

「はじめまして、びゃくらん。ぼくはきょうからあなたのおにいさんになります。これからよろしくおねがいしますね。」


そっと僕の手を握ると、君はもう1度綺麗に笑った。



ーーその時から僕は君のことが大好きになった。君が僕の全てになったんだ。



*****
僕と骸君は1つ年の離れた兄弟だ。でも兄弟といっても血の繋がりはない。僕の父と骸君のお母さんが再婚して、僕達は幼い時に兄弟になったんだ。小学校、中学、高校そして大学まで僕は骸君と同じ学校を選んだ。彼が好きだったから、少しでも一緒に居たくて。勿論この「好き」は、家族に対する親愛なんかじゃない。…僕はもうずっと骸君に恋していた。だけど、この気持ちは絶対に伝えてはいけない。僕がどんなに骸君のことを想っても、彼は僕のことなんて、ただの弟としか見ていないんだから。…僕が骸君に告白したらどうなるかなんて簡単に分かることだった。



「白蘭!ぼ〜っとしてないで、早く朝食食べなさい。あなた今日大学、1限目からでしょう。」


僕は骸君の言葉で我に返った。やばい、考え事してたらすっかり時間が経っちゃってる!


「ありがとう、骸君。すぐ食べるよ。」


骸君が作ってくれたハムエッグとサラダを慌てて頬張ると、彼が用意してくれたお弁当をカバンに詰めて、僕はマンションを出た。



*****
大学生になって先に1人暮らしを始めていた骸君を追い掛けて、僕は同じ大学に入学し、さらには骸君のマンションに転がり込んだんだ。あなたが来てくれて嬉しいなんて、大概僕も兄バカですね、と骸君は僕と2人暮らしをすることをとても喜んでくれた。


僕は理工学部の1年生だけど、骸君は法学部で色々と勉強も忙しいようだったし、僕はバイトもしていたから、高校までみたいに1日中彼と一緒という訳ではなかった。でも僕が部屋に帰ると、骸君はいつでも優しく迎えてくれた。おかえりなさいと微笑んで。そんな風に骸君と2人きりで居られることが僕にはとても嬉しくて、幸せだった。…幸せだったはずなのに。


なのに最近は、骸君と居ることが少しずつ苦しくなってきている。今までずっと胸に隠してきた彼への気持ちが、溢れてしまいそうになっている。このままじゃいつか、骸君を押し倒しちゃうかもしれない。



いつまで自分を抑えていられるのか、僕はもう自信がなくなっていた。



*****
「骸君、ちょっといい?」


夜になって英語の課題のレポートのことをすっかり忘れてしまっていたことに気付いた僕は、骸君に辞書を借りようと彼の部屋のドアを叩いた。


「骸君?部屋だよね?」


返事が返ってこなかったので、僕は心の中で断りを入れると、そっとドアを開けた。骸君は机にうつ伏せになって眠っていた。机の上にはノートや教科書が広げられたままだったので、勉強している途中で寝ちゃったんだろう。起こしてしまわないようにと、静かに骸君の側に近付く。その時1つの写真立てが僕の目に留まった。


そこには幼い僕達が写っていた。タンポポやレンゲの花束を手に持った僕と、黒アゲハの入った虫かごを嬉しそうに抱えている骸君が笑っていた。骸君、こんな昔の写真まだ持っててくれてたんだ…嬉しいな。骸君の部屋に来た本来の目的を忘れそうになり、僕は頭を振ると、机に並べられていた辞書を取ろうと手を伸ばした。すると、すやすやと眠っていた骸君が突然身じろぎをして、うつ伏せになっていた顔が見えた。僕はびっくりして声が出そうになった。とっさに口元を手で押さえて、骸君の様子を窺う。


…良かった、眠ってる。早く部屋を出よう。骸君には後で辞書借りたって言えばいいし。骸君を起こさないように彼から離れようとした。その時、彼が小さく何かを呟いた。



「…びゃく、らん。」


今度こそはっきりと聞こえた。骸君は無意識に寝言で僕の名前を呼んでいた。僕は堪らなくなって机に両手を付くと、そのまま覆い被さるようにして骸君に口付けた。もう我慢なんてできなかったのだ。だけど衝動的に骸君に口付けてしまったことが段々怖くなってきて、僕は部屋を飛び出すと、自分の部屋のベッドに潜り込んだ。



胸が苦しい。息ができないよ。課題のことなどもう意識の外で、僕はベッドの中で丸くなったままだった。





あれからじっとしていたけど、激しい動揺のせいか、喉がからからに渇いていた。水でも飲んで、ちょっと落ち着こうと僕はリビングに向かった。ドアを開けて後悔する。お風呂上がりの骸君がソファーで寛いでいたからだ。髪はしっとりと濡れていて、白い肌もほんのりと薔薇色に染まっていた。


僕は骸君から思い切り目を逸らした。さっきのことを鮮明に思い出してしまって、彼の顔を見ることができなかった。どうしよう、どうしようとそれだけがぐるぐると頭の中を駆け巡っていた。骸君は突っ立ったままでいる僕に気付くと、優しく話し掛けてきた。


「勉強のキリがついて、今お風呂から上がったんです。もしかして起こしてしまいましたか?」

「ううん、大丈夫だよ。……ちょっとコンビニにでも行こうかなって。」

「もう随分夜も遅いですけど…」


僕は骸君の視線から逃れるように下を向いたまま、玄関に向かった。コンビニなんて行く気はなかったけど、あの場に居たくなくて嘘をついた。僕は外に出ると、ドアに体を預けるようにずるずるとしゃがみ込んでしまった。



骸君。僕は、僕はー―



*****
骸君にキスしてしまったあの日から、僕は彼にどう接していいのか分からなくなっていた。もう自分の気持ちを心の奥に隠して、「弟」を演じられそうになかったんだ。だから僕は朝も早く出るようにし、バイトも夜遅くまでのシフトに変えてもらって、なるべく骸君と話さなくて良い状況を意図的に作り出した。



そんな状態が2週間以上続いたある日の夜。僕がバイトから帰って来ると、玄関に骸君が立っていた。彼は怒ったような悲しそうな複雑な表情で僕を見ていた。


「…おかえりなさい。あなたに話があるので、リビングに来て下さい。」


僕を逃がさないというようにじっと見つめられれば、大人しく彼について行くしかなかった。骸君と距離を取ってソファーに座った。


「白蘭、あなた最近僕のこと避けてますよね?僕、もうずっとまともにあなたと喋っていませんし。」

「そ、そんなことないよ。」


僕は慌てて否定した。だけど骸君を避けているのは事実だった。


「……僕と住むのが嫌になったのでしたら、はっきり言ってくれて構いません。新しい部屋を探しても良いですし、僕がこの部屋を出ても…」


何それ?そんな訳ないよ!違うんだよ、骸君。


「…違うよ。」


僕は小さく小さく呟くのが精一杯だった。


「じゃあどうして僕を避けるんです!」


僕は口を開く代わりに骸君をソファーに押し倒した。突然のことに彼は驚いたように目を見開いていた。


「…こんなことしない為だよ。…弟が兄にこんな感情抱いてるって知ったら、怖いし気持ち悪いでしょ。だから…」


僕はすぐ近くにある骸君の顔を見つめてそう言った。骸君もじっと僕を見ていたが、ふっと表情を和らげた。


「やっぱりあれは夢ではなかったんですね。」

「え?」

「夢だと思っていました。あなたにキスされたこと。こんなこと言うのおかしいのですが……嫌じゃありませんでした。むしろあなたの温もりが心地良かった。だからあなたに避けられるのは悲しかったんですよ。」

「骸君…それって、それって…」

「僕達は血の繋がりはありませんし、兄弟といっても所詮は書類上のことです。まぁ男同士ですから、問題も起きることだってないと思いますし。これからずっと一緒に居られるじゃありませんか。」


「……骸君、君のことがずっとずっと好きだった。これからも僕の気持ちは変わらない。」

「ありがとう、ございます、白蘭。僕も…僕もいつの間にかあなたが弟以上の大切な存在になっていたみたいです。…あの時の約束、守ってくれますか?」

「骸君、君の側でずっとずっと君を守るって誓うよ。」



僕は骸君に微笑んで、彼の体をぎゅっと抱き締めた。



*****
今でも良く夢に見るんだ。君と初めて会った日のことを。


だけどあの夢にはまだ続きがあったんだ。



骸君に手を握られた僕は、大切な宝物に触れるようにそっと彼の手を握り返した。そして1つの決意を口にした。


「ぼく、おおきくなったらすごくかっこいいおとこになって、むくろくんのそばでずっとずっとむくろくんをまもるよ。」

「うれしいですね。じゃあ、そのやくそくぜったいにまもってもらいますからね。」

「うん!」



僕達はにっこり笑って、2人だけの約束を交わしたんだ。



*****
「おはようございます。朝食作ってくれたんですね。助かります。」

「おはよう。今日は早起きしちゃったから一杯作ったよ。食べて食べて♪」


僕の言葉で椅子に座ろうとした骸君が、テーブルを見てこの写真…と呟いた。


「うん。小学生の時に僕と骸君でお互いの似顔絵を描いた時の写真だよ。部屋を片付けてて偶然見付けちゃったから、飾ろうかなぁって。」

「あなたこの頃から何でもできてましたから、絵も上手いですねぇ。……こうして兄弟になれたから、あなたと出会えたんですよね。」


骸君はそっと呟いた。


「これからも骸君が僕の兄なのは変わらない。…だけど僕にとって、それ以上に大切な人であることも変わらないんだ。」

「そうですね。僕も同じ気持ちです。」





僕は初めて骸君に会った時から、兄とか弟なんて気にせずに君を好きになった。だけどその想いを胸に秘めて、君の隣で過ごしてきた。ずっとこのままなんだろうと思ってた。だけど君は僕と同じ気持ちでいてくれていた。お互いが大切な存在になっていたんだ。



骸君、僕は君がとても大切だから、ずっとずっと守っていく。



この気持ちはずっと変わらないよ。今も、そしてこれからもね。僕の大切な大切なこの気持ちは。






END






あとがき
このお話は、2222のキリ番を踏んで頂いた楓屋様の白骸兄弟パロのリクエストで書かせてもらったものです^^


素敵なリクエストを頂いたのですが、こちらの方で好き勝手にやってしまいました;ジャンピング土下座したい気分ですorz少しでもお気に召して頂けると嬉しいのですが(^^;)


私は2人の愛には兄弟なんてものは障害にはならないと思ってます←可哀想な頭なんです。


兄弟設定は子供同士や年が離れていたりと他にも色々考えられて、本当に美味しいですよね(´∀`)



この度は、リクエスト本当にありがとうございました!

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