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君といつまでも 2
白蘭の監視を任されてから1ヶ月ほどが経ち、骸も監視の仕事に慣れてきた。しかし監視といっても白蘭の部屋に入り、彼と話をしたり、食事をする彼を眺めたり。はっきり言って監視とはほど遠い内容だった。さらにガラス越しではなく、彼の隣に座って、彼に触れることもできた。



白蘭との再開を果たした後、骸は白蘭の部屋の鍵を渡された。責任者の老人は静かに微笑んで、ガラス越しなどではなく、彼の側で話を聞いて欲しいと言った。ここに来た頃、白蘭はただ生きているだけのようだったという。生きる目的を失ってしまったような。そして眠っている時に骸の名を切なそうに呼ぶこともあったようだ。だけど骸が来てからは、良く笑うようになったのだという。骸にはその申し出は願ってもないことだったので、すぐに了承した。


そして次に白蘭のもとを訪れた時、彼をぎゅっと抱きしめた。彼と居た時には自分からは恥ずかしくて、こんなことなどできなかったが。白蘭は骸の行動に驚いていたが、話を聞いて、骸君をまた抱きしめていいんだと、素直に喜んだのだった。



*****
今日は骸はボンゴレの本部に居た。白蘭の報告をする為だ。部屋に入ってきた骸を見て、綱吉はやはり彼を白蘭に会わせて良かったと思った。彼に白蘭を任せる為、ここに呼んだ時とは別人のように生き生きとして幸せそうだ。骸は今では裏の仕事からも手を引き、ボンゴレの仕事も手伝うようになってくれていた。


「お前、最近楽しそうだな。本当に良かったよ。」

「はい、本当にあなたのおかげですよ。僕はあなたには救われてばかりですね。」


そう言って骸は綺麗に笑った。綱吉はいつまでもそんな風に笑っていて欲しいと願った。



*****
ボンゴレの仕事を手伝うようになってから、そう毎日白蘭を訪ねることはできなくなってしまったが、彼は落ち込むことなく、いつも嬉しそうに骸を出迎えた。


「そういえば、明日は1日外出が許される日ですね。白蘭、どこか行きたい所はありますか?」


この施設の者達は、月に1度だけ外出を許されていた。もちろん監視付きだが、この日は好きな所に出掛けたり、家族と過ごすことができた。白蘭は骸の足に頭を乗せてくつろいでいたが、骸の問いにう〜んと考え始めた。


「そうだね…海かなぁ。もうすぐ夏だし、ここからだとそんなに遠くないしさ。」

「海ですか。海辺をのんびり散歩するのもいいかもしれませんね。」

「うん。明日が楽しみだよ。」



*****
骸が車を運転して、2人は収容所からそれほど離れていない海へとやって来た。 まだ初夏の為泳ぎに訪れる者もなく、海辺には自分達しか居なかった。


「わ〜、海だぁ。骸君、まだ水はちょっと冷たいけど気持ちいいよ。」


白蘭は子供のように波と戯れている。骸もその姿を嬉しそうに見ていた。その時、砂浜を駆ける白蘭の右足にある足枷が目に入った。ボンゴレファミリーの紋章が刻まれた、罪の証。


部屋に居る時は気になることなどなかった。だけど、こうして太陽の下で笑っている白蘭を見ると、急に現実を突き付けられたようだった。真っ白い質素な服を着て、足枷をはめている彼を見れば、誰もが罪人だと思うはずだ。確かに彼は許されないことをした。だけど今は目を背けずに、それを受け入れている。それは隣りに居る骸が1番分かっていた。



白蘭はずっとこのままなのだろうか。あの収容所で。



段々自分の気持ちが沈んでいくのが分かった。こんなこと考えてはいけないと、自分を戒めたが、1度生まれた思いは骸の中に留まり続けた。



*****
骸が1人で悩んでいる間にも白蘭は海で一通り楽しんだらしく、夕方には2人は施設に戻ってきた。


白蘭の部屋に入って骸は1つのことを考えていた。白蘭をここから連れ出せればどんなにいいだろう。もしかしたら彼はここで一生を終えることになってしまうかもしれない。彼には光の中で笑っていて欲しい。僕なら彼をここから出すことができる。骸が黙って白蘭の隣にいると、彼はじっと骸の顔を覗き込んだ。


「骸君、今変なこと考えてたでしょ。僕のこと心配して、ここから連れ出してあげようとか…」

「な、何を言ってるんです。そんなことは…」


いきなり確信をつかれ、骸は動揺を隠せなかった。


「分かるよ、骸君のことなら。そんな風に思ってくれて、僕すごく嬉しいよ。でもね、僕の為に骸君が犠牲になんてなって欲しくない。」

「僕さ、骸君と会うまではずっと世界に違和感を感じてた。色のない世界でただ何となく生きてた。だけど骸君に出会って、君からたくさんの気持ちを貰って、初めて世界が綺麗に見えたんだ。そして自分のしたことを後悔した。だから今度こそは間違いたくないんだ。僕の気持ち、君に分かって欲しい。」


白蘭は真剣な瞳で骸を見た。僕は何を弱気になっていたのだろう。彼はちゃんと自分の足で立ち上がって前を見つめて進もうとしている。骸は白蘭の思いに応えるように頷くと、そっと寄り添った。


「すみません。ちょっと馬鹿なことを考えてしまいました。もう大丈夫ですよ。」

「良かった。ありがとう、骸君。」


白蘭は骸の手をそっと握った。骸も優しく握り返す。彼を今度こそ僕が支える。いつまでも一緒に居たいから。


骸は心の中でそっと呟いたのだった。

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あきゅろす。
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