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君といつまでも 1
未来編終了後の原作捏造
色々無理矢理設定です




君と――

あなたと――

いつまでも。



*****
戦いは全て終わった。喜びで抱き合うボンゴレファミリーを骸は、感情のない瞳で見つめていた。



『骸君は、もう僕と一緒に居たらいけないよ。これからどんどん戦いは激しくなる。骸君を巻き込みたくないんだよ。…大切だから。』


ね?お願いと、そう言って苦しそうに微笑みながら、白蘭は骸に別れを告げた。


かつて骸は白蘭の能力を暴く為、ミルフィオーレファミリーの本拠地へ単身乗り込み、結果として彼に敗れた。このまま彼に殺されてしまうものだと思った。なのに白蘭は骸のことを気に入ったと言って、自ら傷の手当てをしたのだ。さらには豪華な部屋を骸に与え、敵の捕虜にするとは思えないほどのもてなしをした。


始めは警戒していた骸も、まるで大空のように自分を包み込む白蘭の笑顔に、次第に絆されていった。彼に想いを告げられた時も、彼は自分と相対する敵だと分かっていたはずなのに、その想いを受け入れていた。いつか離れなければならない日が必ず、来る。だけどそれまではつかの間でもいい。彼の側に居たい。


だが、骸の願いも空しく、ささやかな時間は無情にも、あっという間に終わりを迎えた。最後の戦いを前にして、白蘭は骸に2人の終わりを告げたのだ。


分かっていたはずだ。この日が来ることを。白蘭の気持ちが痛いほど骸には分かる。彼がどれだけ自分のことを想ってくれているのかも。だから、離れた。彼が好きだからこそ。



2人はそれぞれ居るべき場所へと戻った。



*****
骸は戦いが終わったことをようやく理解した。子供達の喜ぶ顔。どこまでも広がる綺麗な大空。なのに彼だけが居ない。白蘭だけが。白蘭はもう居ないのだ。ここに居る意味はもうない。骸は、喜び合うボンゴレ守護者達から目を背けるように、その場を後にした。





骸は闇の世界に舞い戻った。暗殺や情報収集などの依頼を請け負い、あちこちを渡り歩いていた。もともと自分はこちら側の人間なのだ。もうボンゴレには関わりたくない。


ここ1ヶ月ほどは、骸はある国のホテルを滞在先にしていた。もちろん彼を訪ねて来る者などはいなかった。今日も仕事を終えてホテルに戻って来ると、骸宛ての手紙を渡された。手紙には死炎印があった。沢田綱吉、ボンゴレ10代目。彼には自分の居場所など教えてはいない。やはり超直感とは厄介なものだ。


骸は封筒から手紙を取り出した。手紙には自分に任せたい仕事があるから、イタリアの本部に来るように記されていた。手紙の最後にはこの仕事を受けてくれれば、会いたい人物に会えるともあった。もうボンゴレには関わりたくない気持ちは変わらなかったが、文面の最後が少しだけ気になった。骸は手紙を握り締めると、ホテルを発つ準備をした。


だけど、自分が会いたいのは彼だけーー



*****
骸は豪奢な扉の前に立っていた。ここはイタリアのボンゴレ本部だ。ミルフィオーレファミリーとの戦いが終わり、10年前の綱吉達が元の時代へと帰ったことで、この時代の本来の彼らが戻っていた。


骸が扉をノックしようとする前に部屋の中から自分を呼ぶ声が聞こえ、中に入るように促された。強い意志を秘めた茶色の瞳が、懐かしそうに自分を見ていた。綱吉は執務机から立ち上がって骸に近付いた。


「骸、久しぶりだな。今日はわざわざ来てもらってすまないな。」

「手紙は見ました。僕に任せたい仕事とは何です?くだらない仕事ならお断りですよ。」

「まぁ、話を聞いてくれ。お前にある施設で監視をして欲しいんだ。お前今、碌な仕事してないだろ。心配なんだ。こんなこと言うと嫌かもしれないが、俺はお前はずっと俺達の仲間だと思っている。」


真剣な瞳が自分を案じていることを強く訴えていた。骸だって分かっている。現実から目を背けるように闇に生きても、何も生まれない。それに白蘭が居たら、こんな自分をどう思うだろうか。骸は目を閉じて息を吐くと綱吉に向き直り、

「…分かりました。その仕事、やりましょう。」


綱吉はお前ならそう言うと思った、と嬉しそうにした。そして骸に1枚の紙を手渡した。


「ここに書かれた場所が、お前の新しい仕事場だ。早速今から行ってくれ。…骸、俺達はお前には笑ってて欲しいんだよ。」

「それはどういう…?」

「そこに行けば分かる。」


綱吉はどこか楽しそうに優しく微笑んでいた。



*****
綱吉から渡された地図を頼りに骸は目的の場所へとたどり着いた。ボンゴレ本部から郊外へと進んだ森の中にその施設はあった。さらに先に行くと海が臨める場所であり、都会の喧騒からはかけ離れていた。


入り口の門をくぐり、守衛に用件を伝える。彼らもボンゴレに関わる者である為、骸はすぐに施設の責任者へと案内された。その人物は黒いスーツに身を包んだ穏やか雰囲気の初老の男性で、骸に丁寧にこの施設の説明を始めた。ここはボンゴレに危害を加えた者やその危険性がある者達を監視したり、収容している所であった。だからといって、尋問や拷問を加えるようなことはせず、自分の過ちを見つめ直す場所なのだという。ここを訪れた綱吉と話をして心を入れ替え、出て行った者達も居るらしい。相変わらず沢田綱吉はお人好しです。だが彼には、確かに人を救う何かがあるのだ。





骸は責任者の男性と共に、自分が担当する収容者の部屋へと向かった。廊下を抜けて、収容者達の部屋が並ぶ階を歩く。ちらりと部屋の中を覗いてみた。ドアの向こうは鉄格子などではなかったが、ガラス張りになっていた。中にはベッドと机が置かれ、本棚にはそれぞれ個人が好きな本が並べられている。日当たりも良く、一見ここがそういった場所であるとは思えなかった。


部屋の前を歩く骸の耳に、時折楽しそうな話し声や鼻歌が聴こえ、ここは他のファミリーの収容所とは違い、絶望する場所ではなく、希望を持てる場所なのだと感じた。綱吉のボスとしての器が表れているようだ。


「着きましたよ。私はここまでですので、あとはよろしくお願いしますね。」


責任者の老人に案内され、骸は1番奥の部屋へと入った。その瞬間、驚きに目を見開く。信じられない光景が目の前に広がっていた。


骸が1番会いたくて、でももう会えることなどできないと思っていた彼がそこに居た。これは僕の都合の良い夢なのでしょうか。頬を抓ってみた方が良いのだろうかと、本気で骸が考えていると、ガラスの向こう側に居た白蘭も、信じられないという顔してゆっくりと近付いてきた。


「骸君。骸君。会いたかった。」

「白…蘭ですよね?本当にあなたですよね?どうしてここに…」

「自分でもよく分からないんだ…気が付いたら手当てされた状態でここに居た。僕、自分でも助からないって思ったのに。もう骸君に会えることなんてないって。だけど、僕はまた骸君に会えた。骸君…。」


白蘭は静かに涙を流していた。そんな彼を見て骸も泣きそうになっていた。僕は神など信じてはいない。だけど今回は感謝せずにはいられなかった。あなたが起こしてくれた気まぐれな奇跡を。


骸は白蘭の側に行き、ガラスに張り付いている彼の手に、そっと自分の手を合わせた。ガラス1枚隔てた向こうに白蘭は居るのに、自分達の間にあるこの距離がもどかしかった。今すぐにでも彼を抱き締めたいし、彼に抱き締めて欲しかった。


「僕、あなたの監視を沢田綱吉から任されたんです。ですから、あなたからもう離れません。あの時みたいに別れを告げたって無駄です。」

「そっか、綱吉君が。彼には本当に感謝してるよ。」


白蘭は一旦言葉を切って笑顔になった。


「僕も、骸君とは離れたくない。もう能力を失っちゃったみたいで、力なんてないけど、もう1度骸君と歩いていきたいんだ。」


骸が見たかった笑顔が輝いていた。白蘭と一緒に過ごしていた時、いつも自分を癒やしてくれていたあの笑顔。もう見ることなんてできないと思っていたのに。骸は白蘭の笑顔に包まれながら、幸せを噛みしめていた。

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