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祝福される僕らの恋
隣り合わせの恋 番外編



「いらっしゃいませ。…っ、白蘭!?」

「やっほ〜♪骸君。ふふ、君に会いたくて、とうとう来ちゃった。」



どうしてここに白蘭が?僕、バイトをしていることは彼に話していますが、お店の名前までは確か言ってなかったはずですよね…



僕はニコニコしている白蘭に、ぎこちない営業スマイルを作ることで精一杯だった。



*****
白蘭と僕は色々あったが、きちんと想いを伝え合って恋人同士になった。


彼が僕の恋人になったからといって、特別何かが変わったという訳ではない。だけど、白蘭が隣に居る。ただそれだけで、僕はとても幸せだった。彼もきっとそうだと思う。


僕は相変わらず大学とバイトで忙しいし、白蘭もホストの仕事がある。2人で会うことは以前と同じで、そう頻繁ではなかったが、辛くはなかった。だって、僕と彼の心はちゃんと繋がっているのだから。



*****
僕は、目の前に立っている白蘭をとりあえず席に案内することにした。




パフェやプリンやアイスクリーム、ケーキなどのデザートを専門に扱う店で、僕はバイトをしている。メニューはどれも店のオリジナルの物でとても美味しく、平日でも女性を中心にたくさんの客で賑わう。僕はこの店のチョコレートパフェを、大学の友人である綱吉君と武君に勧められ、一口で気に入り、2人がこの店でバイトをしているということもあって、ここで一緒にバイトをすることにしたのだ。


白蘭は僕がバイトをしていることは勿論知っているけれど、僕は働いている所を見られるのが何となく気恥ずかしくて、結局詳しい話はしてこないまま、今に至っていた。



白蘭を案内する為、1人用の席へと向かっていると後ろから、

「ギャルソン姿の骸君。ギャルソン姿の骸君。ギャルソン姿の骸君…」


白蘭が、ぶつぶつ何かを繰り返し呟いているのが僕の耳に入って来た。



もう10回は呟きましたよね…


白蘭が大人しく席に着いたのを見て、僕は今さらながらに気付いた。彼は仕事用の白いスーツ姿だったのだ。夕方の為か学校帰りの学生も多く、隣のテーブルの女子高生のグループが、彼をちらちらと見ていた。


「あの、白蘭。仕事は…」

「まだ大丈夫だよ。それよりさ、骸君のその姿、後で携帯で撮ってもいいかな?」

「な、何言ってるんです!」

「え〜、駄目?」


白蘭がじっと見つめてくる。段々僕は恥ずかしさで一杯になっていた。ギャルソンという普段とは違う姿であったことも理由だったが、それ以上に彼に見つめられていると、胸がドキドキしてくるのだ。白蘭と恋人になった今でも、彼の真剣な瞳にはなかなか慣れないでいる。うぅ、もう無理です。これ以上は心臓が保たない。


「すみませんっ。」


僕は白蘭に小さく一礼すると、その場から逃げ出して、奥の方に引っ込んだ。





「あれ?骸、オーダーは?」


何もせずに戻って来た僕に、綱吉君が不思議そうに声を掛けてきた。隣には武君も居て、どうしたんだ?と尋ねてきた。


「2人のどちらかにお願いしたいのですが、あの彼のオーダーを僕の代わりに聞いて下さい。」

「骸、さっきまであの人と話してたよな?知り合いじゃないの?」

「彼は僕の…」


僕は綱吉君の問いに一瞬だけ口を噤んでしまった。さすがに今ここで恋人とは言えませんよね…


「アパートの隣人で…そうですね、知り合いです。」

「良く分かんないけど、俺行って来るから、こっちよろしくな。」


そう言って武君は僕に笑うと、白蘭の方に歩いていき、オーダーを聞いてくれた。僕は戻って来た彼に感謝を述べ、2人に代わって裏方の仕事をやることにした。





「なぁ、山本。あの人と話してた時の骸、何だか嬉しそうだったよな。」

「やっぱりツナもそう思ったか、俺もだぜ。」



2人がこんなことを話していたなんて、この時僕は全く気付かなかったのだ。



*****
いつも思うのですが、本当に良く食べますよね。僕はオーダー通りにお皿にケーキを乗せながら、そっと白蘭の様子をうかがった。彼のテーブル席には、フルーツパフェ、チョコレートパフェ、抹茶白玉パフェ、ミルフィーユが並んでいた。甘い物が好きな僕でも、見ているだけで胸焼けしそうだった。先ほど白蘭を見て、頬を赤らめていた女子高生達も驚いた顔をしていた。



あれだけ食べても全然太らないのですから、羨ましいを通り越して恨めしいですよ。白蘭は美味し〜い♪と言いながら、スプーンを口に運んでいた。その顔はとても幸せそうで、見ている僕も無意識に微笑んでしまっていた。


彼は仕事の時間を気にしだしたのか、そのまま次々にパフェを食べていき、席を立って会計を済ませた。店を出る時に店内をきょろきょろしていたので、もしかしたら僕のことを探していたのかもしれなかった。だけど僕はいつまでも恥ずかしさやドキドキした気持ちを抑えられなくて、彼に見付からないようにしたのだった。



*****
後片付けを終えて従業員のロッカールームに入ると、綱吉君達が先に着替えていた。



「お疲れ様、骸。」

「今日もお疲れだな。」

「あの、2人とも色々すみませんでした。」


僕は彼らにもう1度お礼を言ってから着替え始めようとしたが、

「なぁ、骸。さっき山本と話してたんだけど、あの人はお前の大切な人なんだろ?」



綱吉君の言葉に手が止まる。


「ど、どうしてそう思うのです?」

「見てたら分かるよ。俺達、友達だろ。あの人と話してる時の骸、すごく嬉しそうだったから。俺も山本も、お前に大切な人が居てすごく嬉しいんだ。」


僕、そんなに顔に出ていたのでしょうか。白蘭の側に居られる嬉しさが。


「…そう、です。…彼は僕の、大切な恋人です。黙っていてすみません。」

「そっか。骸が幸せならそれでいいよ。でも今度彼が店に来たら、ちゃんともてなすんだよ。」

「ツナの言う通りだぜ。やっぱり恋人ならさ。」


2人は笑顔で僕を見た。あぁ、僕は何て良い友人達に恵まれているのだろう。そう思わずにはいられなかった。



*****
綱吉君達は既に着替え終わっていたので、先に帰っていった。僕も急いで着替えを済ますと、店を出た。入り口を抜けて通りに出ると、店の前の歩道の柵に寄り掛かるようにして白蘭が居た。


「お疲れ様、骸君。」

「あなた、この時間は仕事中じゃ…」

「うん、抜け出してきちゃった♪というか、お店の用事でお遣いした帰りなんだけど、骸君に会いたくなって待ってたんだ。さっきはあんまり話せなかったでしょ。」


待っていたと言われたら、やはり嬉しい。白蘭にさぁ、行こうと言われ、彼の隣を歩き出した。


「そういえば、僕はあなたにバイトの話はしましたが、店までは言ってなかったはずです。どうして分かったのです?」

「勿論そんなの愛の力だよ!」

「真面目に答えてくれますか?」

「え〜、僕はいつでも大真面目なのに。えっと、これかな。」


そう言って白蘭は手に持っていた包みを僕に見せた。


「花ですか?」

「そうだよ。骸君は知らないだろうけど、君が働いているお店のちょっと先に、僕のお店で利用してる花屋さんがあるんだ。ちょっと前のことなんだけど…今日みたいに急にお店に飾る花が足りなくなって、開店前に買いに行ったことがあったんだ。そしてこの通りを通っていた時に、偶然仕事してる骸君を見付けたんだよ。」


そうだったのですか。僕の働いている店は、壁がガラス張りになっているので、確かに外から僕を見付けるのは容易だと思えた。


「骸君さ、あんまりバイトのこと話さなかったでしょ。だから僕からは言わなかったんだ。あの頃はまだ骸君と話せるだけでいいって思ってたし。だけど恋人になったらさ、段々我慢できなくなっちゃって、今日来てしまったんだよね。」


ごめんね、と白蘭は困ったように笑った。


「僕にも謝ることがあります。あなたにバイトのことを詳しく話さなかったのは、あなたに来られると困ると思ったからなんです。あなたがバイト先に来たら、絶対僕はあなたを意識してしまって、あなたのことばかり考えて、仕事に身が入らなくなってしまいますから…」

「骸君っ!」


白蘭は僕が困ると言った辺りで一瞬悲しそうな顔になったが、最後の言葉を聞くと一変して満面の笑みを浮かべた。


「それからもう1つあるんですが、一緒にバイトをしている友人にあなたとの関係がばれてしまいました。」

「僕、言ってないよ。そりゃあ、骸君は僕の自慢の恋人だから、誰にでも言いたくはなるけど。」

「えぇ、あなたではありませんよ。…僕ですから。僕があなたと話している時、嬉しそうに見えたそうです。僕達のことを喜んでくれました。それに今度あなたが来たら、ちゃんともてなしてやれと。」

「骸君、僕と居ると幸せってことだよね。それってすごく嬉しいなぁ。それに骸君の友達は素敵な子だね。」

「そうですね。僕の周りは…あなたもですけど、僕には勿体ないくらい素敵な人達ばかりです。…それと白蘭、あなた、確か今日はお店のおすすめケーキセットは食べていませんでしたよね?あれは本当に美味しいですから、絶対に食べて下さい。」

「骸君、それは…また来てもいいってこと?」

「…はい。」


骸君、大好き!と言って白蘭が急に僕に抱き付いてきた。僕の好きな白蘭の香水の匂いが、すぐ近くで香った。彼の不意打ちな行動には今だ慣れることはないが、僕だけが彼の温もりを感じることができるのだ。それはとてもとても幸せだった。





通りを歩いていたが、やがて白蘭の仕事場とアパートへと続く分かれ道に差しかかった。


「あ〜あ、もうこの道に着いちゃった。もっと骸君と話したかったのに。」

「仕事の途中でしょう?あまり遅いと叱られますよ。」

「は〜い。でも今日は骸君の顔が見れて元気を貰えたから、仕事頑張っちゃうもんね♪」



いってきますと、白蘭は笑顔で僕に手を振った。優しい月の光が彼を照らしていた。


「いってらっしゃい。」


僕もそっと微笑んで、彼に手を振る。



白蘭の姿が見えなくなるまで、僕は彼を見送り続けた。






END






あとがき
隣り合わせの恋の番外編です。


番外編はその後の2人を小ネタで不定期で書いていきたいと思っていますので、恋人状態でお話が進みます(^-^)


今回2人の友人として、ツナと山本君に登場してもらいました。彼らなら普通に白骸のこと応援してくれそうなので^^


ですが骸が彼らのことを名前で呼ぶことに若干の違和感がw だからといって原作みたいにフルネームだと友人設定が…となりますので、ここは捏造しました。


あと骸のギャルソン姿は絶対素敵ですよね!白蘭も多分2回目に遊びに行った時に撮影に成功して、待ち受け設定にすると思います(^^)白蘭、私にその写メ送って!


本編の片思いと思っているのもいいですが、らぶらぶな白骸も美味しいですよね♪



読んで下さって本当にありがとうございました(^▽^)

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