会いたくて 激しく乙女思考な骸です;; 「今日のデート、ちょー楽しかったね!」 「ええ、そうですね。僕も、楽しかったです。素敵な時間をありがとうございました、白蘭。」 「ふふ、どういたしまして♪あ、着いたよ、骸君。」 白蘭は骸を見つめながらブレーキを踏むと、骸の家の前で車を停めた。そしてそのまま運転席から降りて反対側の助手席の前まで移動すると、ゆっくりとドアを開けた。彼は助手席に座っていた骸に優しく微笑み掛けて、流れるような動きで恭しく骸の右手を取った。 「足元に気を付けてね、僕のお姫様。」 「白蘭…」 お姫様と呼ばれることに骸は少しの気恥ずかしさを感じたが、白蘭と一緒に過ごせた幸福感で今は心がふわりと満たされていたので、優しい温もりに促されるままに彼の愛車から降りた。 「ほんとさー、僕の方こそありがとう、だよ。僕、楽しそうな君を見ていてね、すっごく幸せだったんだから。」 「白、蘭。」 2人で海辺をドライブして、その後に綺麗な夜景を楽しめるリストランテで真鯛のポワレや牛フィレ肉のステーキ赤ワインソース添えからなるチェーナを心行くまで味わって。白蘭に言った通りにとても楽しくて素敵な時間を過ごすことができた。骸は白蘭と過ごす時にはいつも彼が自分の幸せを一番に考えていて、自分のことを一番に想ってくれていると感じるのだ。大切にしてくれている。それが何よりも嬉しかった。そして酷くくすぐったかった。 「骸君。」 「白蘭…」 整った顔がゆっくりと近付いてくる。腰に腕が回されて、宵闇の中、恋人の体温をさらに近くに感じた。抱き寄せられて目を閉じる瞬間、白蘭の肩越しに瞬く星々が見えた。今夜は綺麗な星空だと思うよりも早く、骸の頭は白蘭との口付けの甘さで一杯になった。 「骸、くん。」 「ん…びゃく、ら…」 白蘭は骸を強く抱き締めると口付けを深くして、愛してるよと全身で伝えてくるようだった。骸も白蘭の愛を受け止めようと、彼の首にそっと両腕を回した。お互いの愛を確かめ合うような長い長いキスと抱擁が終わり、白蘭は夜の帳の中でもはっきりと分かるくらいの幸せそうな顔で骸を見つめた。 「骸君、今日は本当にありがとう。またすぐにデートしようね!」 「そうですね、楽しみにしていますよ。」 「うん!……ほんとはすごく名残り惜しいけど、僕も君も明日は仕事で早いし……骸君。」 「白蘭…?……っ、」 不意に耳元で響いた小さなリップ音と共に骸の頬にキスが落とされた。最後まで自分と離れがたい姿を見せる恋人に胸がきゅっと締め付けられる。彼のことが愛おしくて仕方なかった。 「じゃあね。おやすみ、骸クン♪」 「おやすみなさい、白蘭。」 別れ際に笑顔で手を振る白蘭に応えるように骸はそっと微笑みを返した。 ささやかな花々に囲まれた玄関先で白蘭と別れた後、骸はスーツから部屋着に着替えることもせずに2階の寝室のベッドに仰向けになっていた。 「白蘭…」 骸は白蘭と過ごす時にはいつも彼が自分の幸せを一番に考えていて、自分のことを一番に想ってくれていると感じていた。彼は自分のことをとても大切にしてくれていると。だからそれが何よりも嬉しくて堪らないのだ。 「…会いたいです。」 でも、だからこそ、会いたくて会いたくて堪らなかった。抱き締め合って口付けを交わしてからまだそれほど長い時間は経っていないというのに。さっき会ったばかりなのに、もう会いたいと思っていた。骸は自分の心がよく分からなかったが、今日は何故か強くそう思ってしまったのだ。今この瞬間、すぐ側に白蘭を感じられないことがこんなにも苦しかった。冷たいベッドに1人分だけの体温はこんなにも心が寂しかった。幸せそうな顔で名前を呼んで抱き寄せてくれる腕が今ここにないことがこんなにも切なかった。 「白蘭…」 今すぐ顔が見たくて。今すぐ声が聴きたくて。今すぐその腕の温もりを感じたくて。今すぐ彼に会いに行きたくてどうしようもなかった。 「……ならば、会いに行けば、いいんですよ。」 言葉にしたら、もうそれしかないのだと思えた。骸は弾かれたようにベッドから起き上がると、近くのローテーブルに無造作に置いていた携帯端末を手に取った。骸の家から白蘭のマンションまでは車で20分ほどであるので、白蘭は既に自分の部屋に帰っているであろう。骸は腕時計に視線を向けた。この時間ならばまだ交通機関は動いているので白蘭のマンションまで行くことは十分可能であり、仮に渋滞などに引っ掛かって白蘭の帰りが遅くなっていたとしても、彼の部屋の合鍵は持っているので何も問題はなかった。骸は急いで寝室のドアを開けると、早足で2階の廊下を進みながら大切な人の番号を呼び出した。 「もしもし、僕です。」 『骸君?あっれー、君から電話なんて珍しいね。どうしたの?何かあった?』 「…先ほど会ったばかりだということは、分かっているんです。」 『骸君…?』 「ですが、どうしても今会いたいんです。今すぐあなたの顔が見たい。」 『骸君…』 「ですから、会いに行きます。」 『え?ちょっ…』 「これからあなたの部屋に行きます。待っていて下さい。」 骸は白蘭からの返事も待たずに端末を操作して一方的に通話を終わらせると、1階へとつながる階段を駆け下りた。靴を履く僅かな時間すらもどかしかった。自分でも酷く馬鹿だとは思うけれど、早く会いたい。白蘭の顔を思い浮かべたら、ますます会いたい気持ちが募ってしまった。彼はどんな顔をして出迎えてくれるのだろうか。そんなことを考えながら勢い良く玄関のドアを開けて、骸は驚きに大きく目を見開いて立ち止まってしまった。 「えへへ。えーと、見つかっちゃった♪」 「白…蘭…!?」 骸の視線の先には今まさに会いに行こうとしていた恋人の姿があった。自分の部屋に戻っているはずの白蘭は、骸の家のすぐ前の細い道に停車させてある白い愛車のボンネットに片手をついて、その上に腰掛けていたのだ。先ほど別れた時と変わらない場所に居る白蘭に骸は驚くしかなかった。骸と目が合うと白蘭は困ったように笑い、すぐ横に置いていた携帯端末を白のスラックスのポケットにしまい込んで骸に近付いた。 「白蘭、何故ここに…?」 「君の部屋の灯りが消えるまで、ここでこうして…君のことを想っていようかなって。」 「……っ、」 あなたはあれからずっとこの場所で僕のことを考えていたというのですか。それこそ僕が眠るまで1人でここに居るつもりだったのですか。全くの予想外の光景に骸の心は様々な感情で溢れ出しそうだった。そんな骸の気持ちが分かり過ぎるほどに分かってしまったのだろう、驚かせてごめんね、と白蘭は目を伏せた。 「…この際だから白状しちゃうけどさ、骸君とデートして君を家まで送った後、僕はいつもここから君の部屋の灯りを見上げてた。どうしてもすぐには帰れなくて。その淡い色を見ながらさ、君のことをずっと感じてたんだ。」 「どうして、そのような…」 骸の問い掛けに白蘭は複雑そうな微苦笑を返した。 「僕は君が大好きだから。僕達付き合ってる訳だけど、でも、今以上にがっついたりなんかして君に嫌われたくなかったんだ。…それだけは、絶対に嫌だから。それにここでこうしてるだけでもさ、十分幸せな気持ちになれるからね。」 「白蘭…」 「今まで黙っててごめんね。それと、さっき骸君から会いたいって電話くれて、死んじゃうかもって思うくらい嬉しかった!…君も僕と離れたくないと思ってくれたんだよね?」 嬉しいと口にするのに泣きそうな表情になった白蘭の手を包み込むように握ると、骸はそっと吐息を零した。 「あなたは仕事はできるのに、時々本当に馬鹿ですよね。」 「何それひどい!」 「…嫌いになど、もう、なれませんよ。」 「骸、くん…」 「僕のことが大好きだと言うのでしたら、それくらいのことは察しなさい。だからあなたは馬鹿なんです。手に負えませんよ、まったく。」 「骸クン!」 僕もあなたのことに関しては大概なところがあると認めていますけど、やはりあなたの方が馬鹿な男でしたね。心の中で満足そうに呟くと、骸は白蘭の手を強く引いて、そのまま自分から口付けた。赤と青のその瞳に楽しそうな色を浮かべながら、目の前にある藤色の瞳を見つめてみる。普段は余裕たっぷりなのに明らかに動揺を見せる恋人が可愛らしくて、骸はくすりと小さく笑みを零すと、白蘭の背中にゆっくり腕を回した。 「僕はあなたにまたすぐに会いたくなってしまって、あなたの部屋に行こうとしました。白蘭、あなたも僕と離れがたくてずっとこの場所で僕のことを考えていた。…分かりますよね、白蘭?」 白蘭は幸せ一杯の笑顔で大きく頷いた。彼のことが愛しくて、これから先ももう離れられそうにない。 「愛してるよ、骸君。」 「そうですね。僕も、あなたと同じですよ。」 同じ想いだからこそ、いつでもすぐにまた会いたくなってしまうのだから。静かに輝く月の光に照らされながら、骸は白蘭から与えられる口付けに目を細めた。 END あとがき この後は骸の寝室のベッドの上でデートの続きですね(*^^*)骸を家に送った後もこっそり骸の部屋を見上げて骸のことを想う白蘭ってロマンチックなシチュじゃないかなと思ったんですけど、あれ?これただのstkでしたね。 このお話はとにかく骸にデレてもらってらぶらぶな白骸が書きたくて書いたのですが、骸が終始乙女ですみませんでした( ´△`)骸のキャラ崩壊が酷いですね;骸は白蘭にこんなに優しくないと思います^^ 骸の家を一軒家の設定で妄想したので、骸に2階の窓を開けてもらってロミオとジュリエットごっこさせれば良かったかも´`でもそうするとギャグになってしまいますね。 たまには白蘭に無意識ではなくはっきりデレる骸も可愛くていいんじゃないかと思いますv読んで下さいましてありがとうございました^^ [*前へ][次へ#] [戻る] |