学園の王子様と優等生 2
PLAYER:骸
ゲームを始めますか?
→はい
いいえ
始めるしか選択肢などないのでしょう?僕は勝手に巻き込まれた。本当に良い迷惑ですよ。
プレーヤーの名前を入力して下さい。
『六道骸』
まさか僕がチョイスの相手に指名されるなど思ってもいませんでした。できれば目立ちたくはなかったのに。静かで平穏な高校生活を送りたかったのに。
相手の名前を入力して下さい。
『白蘭』
不本意ですが、了承した以上彼のゲームに付き合うしかありません。ですが、たったの1ヶ月です。それくらいなら僕だって我慢できますよ。
それではチョイスを始めます。スタートボタンを押して下さい。
たった1ヶ月。1ヶ月経てば、また普段の生活に戻れるのだから。
*****
席に座っている僕の目の前に王子様と呼ばれ、全校生徒の誰もが知っている人物が楽しそうに笑って立っていた。
「君、六道骸君だよね?…ねぇ、僕とチョイスしない?たった1ヶ月でいいんだよ。」
「チョイス…?」
僕は頭の中でその単語を反芻しながら、そういえばクラスの女子生徒達がその話題で騒いでいたことを思い出した。この学園の生徒会長である白蘭が、気まぐれに相手を選択して1ヶ月間限定で恋愛を楽しむという何とも自分勝手なゲームだった気がする。そんな下らないゲームに付き合う理由などありません。僕は本から視線を外すことなく、結構ですと断った。僕は白蘭を無視してそのまま読書を続けようとしたが、彼が僕の机から離れることはなかった。
「もう1回言うけど、たった1ヶ月でいいんだよ。その間は僕も君も楽しく過ごせるんだ。…ね?いいでしょ?」
そんな風に白蘭は食い下がった。全くいい加減にして欲しい。僕はそのまま活字を目で追い続けた。だが僕の無言の抵抗など彼の前では無意味なようだった。このまま断り続けたら、はいと言うまで毎日追い掛けられるかもしれない。そう考えたら、1ヶ月間我慢する方がまだましなのではないだろうかと思えた。1ヶ月間我慢して適当にあしらえば、もう白蘭に関わるようなこともない。そうすれば、僕はまた平穏に暮らせる。ここで波風を立てて後々困るようなことは避けるべきだと僕は結論付けた。
「……分かりました。このまま断り続けても、埒があかないので、チョイスですか?…そのゲームをやりますよ。」
結局僕は、白蘭と1ヶ月間限定の恋愛ゲームをしなければならなくなった。こうなったら、もう仕方がない。
「ふふ、良かった♪」
何を思ったのか、白蘭はありがとうと、僕の手を取ると突然ぎゅっと握り締めたのだ。僕は驚いて思わずその手を振り払った。昔の記憶が不意に脳裏に蘇る。高校生になった今でも、やはり他人との近すぎる触れ合いは僕には無理だった。白蘭は僕が手を振りほどいたことを特に咎めるようなこともなく、満面の笑みを残して、じゃあまたね、と騒がしい教室を出て行った。
「…どうしてこんなことになってしまったんですかね。」
明日から1ヶ月間、僕は不本意ながら白蘭と疑似恋愛をすることになってしまった。けれども彼は友達の延長で良いと言っていた。そうであるならば、僕も気楽に彼と過ごしましょう。そうですよ、たった1ヶ月なんですからね。
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