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確かにそれは
能力を使いすぎてダウンする白蘭と調子が悪い白蘭に調子が狂う骸というネタ被りなお話です; 

そして白骸がナチュラルに一緒に住んでいます




「あー、骸クン。おはよう、っていうか、こんにちは?」

「もう昼過ぎですよ。一体いつまで寝て…」


読んでいた雑誌を閉じて背後を振り返った骸は驚いて僅かに目を見開いた。背中越しに聞えた声の主である白蘭が頭から毛布を被り、残りの部分を体に巻き付けて立っていたからだった。彼のふわふわな髪も好んで着ているシンプルな部屋着もすっかり毛布の中に隠されてしまっている。まるで小さな子供のおばけごっこのような格好だった。何をふざけたことをしているのかと注意しようとして、骸は白蘭がつらそうに浅い呼吸を繰り返していることに気が付いた。


「病気になるイメージが全くと言っていいほどありませんでしたが、あなたでも風邪を引くんですね。」

「なんか棘のある言い方だね。んー、でもね、これは風邪じゃないよ。最近パラレルワールドを覗きすぎちゃったせいか、その反動でさ。」

「そう、なんですか…」


成り行きで側に居ることになって結構な時間が経っているが、その事実を骸は今日初めて知った。骸とて白蘭に話していないことなどそれこそたくさんあるのだが、白蘭もそうであったことが何となく釈然としなかった。そのようなことを考えていたら変な顔になってしまっていたのか、白蘭は骸に向けて大丈夫だよとへらりと笑ってみせた。だがその足取りはいつもと違って頼りない物だった。


「大丈夫、なんだけど、今までこんなにしんどくなることなんてなかったのにな。」

「クフフ、年齢のせいではありませんか?」


もう!酷いよ、骸君は。僕まだ20代だから!普段ならばそんな風に言い返してくるはずなのに、白蘭は毛布をきゅっと掴んで黙ったままだった。いつもの余裕たっぷりで小憎らしい白蘭ではない。弱りきった彼の姿に骸は複雑な気持ちを覚えた。そのまま黙り込んでしまった骸に白蘭が訝しげな視線を向ける。大丈夫だと言うくせにその瞳には弱りきった色がはっきりと浮かんでおり、骸は自分の心が揺れ動くのを感じずにはいられなかった。


「……僕を閉じ込めたあなたが、そんな風では…」

「そうだね、今なら…逃げられるよ?」


毛布を引きずりながら白蘭がソファーにゆっくりと近付く。ここは白蘭のプライベートな空間であり、その白い部屋に今は骸と白蘭の2人きりだけだ。そして彼の私室には特殊な結界など一切張られてはいなかった。確かに彼の言う通り、今ならこの部屋を出て行くことは可能だ。


「そうですね。」


だが骸はソファーから立ち上がることはなかった。


「骸君?」


自分自身でもどうしてそのようになってしまったのか説明することができないが、いつの間にか居心地が良いと思ってしまっていた。ここで白蘭と過ごす日々が。この気持にまだ明確な名前を付けることはできないが、白蘭の隣は骸が今までに感じたことのない心地良さをくれたのだ。


「いいからもう黙って大人しくしていなさい。」


骸は自由へと繋がるドアに向かう代わりに白蘭の腕を掴んで引っ張った。普段の彼ならばこれくらいのことではびくともしないのだ。だが、能力を使いすぎたという今の彼は引っ張られるままに骸の方に寄り掛かってきた。


「わ、ちょ…いきなり何?」

「病人は黙ってなさい。」


骸は白い髪を隠している毛布を剥いで白蘭の頭に両手を添えると、有無を言わせないように力を込めてそのまま自分の太ももへと乗せた。体勢を崩した白蘭は一瞬何が起きたのか理解できない表情になった。だが、骸に膝枕をされたのだと気付くと、驚きと嬉しさが混じり合ったような顔になった。


「む、骸クン!…これって、膝枕だよね!?僕、君に膝枕されてるんだよね!?あーもうどうしよう何か僕もう色々…」

「クフフ、この程度で動揺するとは。いつも傲岸不遜なあなたが。おかしくて堪りませんね。」

「だってそんなの、」


明らかに照れた表情になって大人しくなってしまった白蘭を見るのは少しだけ気分が良かった。彼のこんな姿を見ることができるのは自分だけであり、また彼をこんな風にできるのも自分だけなのだ。もしかしたら自分は自分でも思っている以上にこの男に執着しているのかもしれない。骸はそんなことを思ってしまった。


「…でもさ、骸君。何で君、僕に膝枕してくれたの?いつも僕が触ろうとすると、鬱陶しいですって言って怒るのに、君からなんて…」


思わぬ反撃を食らってしまって骸は言葉に詰まった。


「ねぇ、なんで?」


薄紫色の2つの瞳が何かを期待するように切なげに揺れる。骸は黙って白蘭を見下ろしていたが、逃れようのないこの状況を作ったのは他ならぬ自分自身であるのだからと諦めたように小さく息を吐いた。


「…それ、は…あなたをベッドまで運ぶのが面倒だっただけです。それだけです。別に、他意などありませんよ。」

「本当に?」

「…っ、そうですよ。」

「素直になりなよ。ね?」


命令口調ではあったが、それはまるで懇願のようで。困ったようにそれでいて優しく笑う白蘭から目が離せなかった。もう認めるしかないのかもしれない。ゆっくりと伸ばされた手がそっと後頭部に添えられ、少しだけ強引に引き寄せられても骸は抵抗しなかった。もうする気はなかった。


「骸、くん。」

「白蘭…ん…」


白蘭は骸の咥内を味わいながら幸せそうに目を細めていた。まるで自分から仕掛けたような格好のキスに羞恥心が生まれない訳ではなかったが、今は心地良い気分の方が勝っていた。


「ん、君の髪がほっぺに当たって、くすぐったいよ♪」 

「それならば、このようなこと、もう…やめればいいではないですか。」

「やだよ。やめない。骸君とキスしてたら元気になれるからね。初めからこうすれば良かったのかな。」

「白蘭。」


唇を覆う柔らかな感触とじんわりと温かい手の温もりを再び感じながら、骸はその心地良さに目を閉じた。もう、認めてしまおう。弱った彼に何かしてあげたいと思ってしまったくらいには彼が自分の心の中を占めているのだと。


確かにそれは、恋心。






END






あとがき
何番煎じなお話で申し訳ないですが、原作の雰囲気な恋人未満の白骸です。原作のダウンしてる白蘭がいつもと違う可愛らしさだったので、骸もうっかり自分の恋心に気付いちゃったりしたら可愛いなと思いまして(*^v^*)元気になったらさらに白蘭の骸に対する想いが爆発しそうですよね^^骸、お幸せに!


読んでくださいましてありがとうございましたv

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