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隣り合わせの恋 1
ホスト白蘭×大学生骸




「ねぇ、君さぁ、この定期券落としたんじゃない?」


僕は背後から聞こえたその声に振り返る。



目の前には真っ白な彼が居た。



*****
僕は急いでいた。このままではバイトに遅れてしまいそうだったからだ。仕方がない、近道をしようと、いつもは通ることのない駅の裏道へと足を向ける。その通りはクラブやらバーなどが建ち並ぶ、所謂歓楽街の様相であったので、実はあまり好きではなかった。バイトのことも頭にあって、僕は少しだけ足早になる。もう少しで通りを抜けるという所で、彼に声を掛けられたのだ。


僕は我に返ってジャケットのポケットを探る。確かに入れたはずなのに、そこには何も入っていなかった。


「すみません、ありがとうございます。」


僕は定期券を拾ってくれた男を見つめた。彼はとても整った容姿をしていると思った。光に透けてキラキラ光って見える白い髪、紫水晶のように艶めく瞳。白いスーツを上品に着こなしていて、全身が真っ白なのに、それが彼に酷く似合っているのだ。


僕は目の前の彼から定期券を受け取ろうとしたが、彼は僕をじっと見た後、手に持っていた定期券に目をやり、

「六道…骸君かぁ。」

「ねぇねぇ、骸君!僕、君に一目惚れしちゃったみたい。君、僕のタイプなんだよね〜。すっごい美人さんだし!ねぇ、僕の恋人にならない?」

「あ、あの…」

「あ、自己紹介がまだだった!僕は白蘭。この通りのホストクラブ、ミルフィオーレで働いてるんだ〜。」

「…僕、一応男なんですけど。」

「うん、大丈夫、見れば分かるよ〜。もしかして骸君って、そういうの気にする方なの?」

「…恋愛は、個人の自由だとは、思いますけど。」

「良かった〜。じゃあさ…「すみません!僕、これからバイトに行かなければならないので。」


僕は白蘭の言葉を遮るようにして、彼から定期券を無理矢理奪うと全速力で走りだした。


「あっ、骸君!僕、友達からでも全然いいよ〜。頑張って君を振り向かせてみせるから。」


後ろから白蘭の叫ぶ声が聞こえたが、僕はそれに振り返ることなく走り続けた。



*****
何なんですか、あの男!僕の頭は混乱していた。あのまま彼と話していたら、大変なことになっていたかもしれない。走り続けて乱れた息を整える。


今日は本当についていない。近道なんかするものではありませんね。僕は先程の白い男のことを思い返した。ホストと言っていたし、あれは冗談か何かではないだろうか。そう自分を納得させ、僕はバイト先へと向かった。



もう、あの道を通るのはやめよう。そうすれば、白蘭に会うようなこともないはずだ。



この時僕は、これから白蘭が自分に深く関わることになるなんて、全く思ってなどいなかった。

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