20 喧騒から逃れて外のベンチでタバコを吸いながら、買ってきたカフェモカに息を吹きかける愛姫を眺めていると、ふ、と頭に疑問が浮かんだ。 「愛姫」 「なーに?」 「大人計画って何だ?」 「あっ!」 自分が口走ったくせに隠しておくつもりだったのか、実に分かりやすくしまった、という顔をした。 「何だよ」 「聞かなかったことにして」 「あ?」 「だっ! だってハルには秘密の計画だから。そ、それにまだ……準備できてないし……だから内緒」 ……秘密だ内緒だと言うんなら、もっと上手く隠すなりかわすなりしてみろ。 「何を企んでる」 「秘密計画は秘密だから秘密なんです!」 「……あっそ」 「実行はもうすぐ!」 「そりゃ楽しみだな」 一服して中に戻り、ふわりふわりと機嫌良くきょろきょろと何かを探し歩く愛姫が、俺の顔を見てにこりと笑い、ちょっと待っててと言って走って行った。今度は何だと視線で追うと、行き着いた先は行列の最後尾。……俺からすれば実にアホらしく時間の無駄なんだが、どうも俺の女はそうは考えねぇようだ。 15分ほど待たされた後、両手でしっかりとコーンを持ち、満面の笑みで戻ってきた。ああマジで……可愛く笑っちゃいるが、殴り飛ばしてやりたくなるほど馬鹿だ、こいつは。 「食えるわけねぇだろうが」 「食べれる、よ!」 「どんだけ頭悪いんだテメェ」 「あーん」 「いらねぇ!」 どぎつい色した三段重ねのアイスは、すでに溶け出している。せめてカップにしとけ。つーか学習能力はねぇのか。 「シェイクを飲まされた俺は何つった?」 「……二度と飲むか」 「で、それは何をさせようとしてんだ」 「……でもこれ、ハルも食べれるやつにした! ……よ?」 よ? と、上目で様子を伺うように手を伸ばしてきたので仕方なく一口食べると、ラム酒の香りが鼻に抜けた。……何だこいつ、最初から自分で食う気ねぇじゃねぇか。 「次から自分が責任持って食えるもんにしろ」 一番上のラムレーズンを食い終え、残った二段を返すと、嬉しそうに夢が一つ叶ったと、歌うように声を弾ませた。 「俺にアイスを食わせることか」 「三段のをね、こ、こ……」 「こ?」 「こ!恋人と一緒に食べること!」 なるほど……数ある小さな夢のうちの一つか。 そりゃ良かった。が、俺がレーズン嫌いだってのを忘れてんのは頂けねぇ。 *←→# |