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18


「ハル、ハル! ま、待って!」

引きずるように手を引きながら歩いていると、背後からぎゃあぎゃあ喚きたててくる。
息を切らし始めたので、速度を落としてため息を吐いた。

「勝手に動くなっつったろ」
「……ごめんなさい」
「動くなら動くで連絡ぐらいしろ」
「それ、は! ハルより先に戻るつもりだったから。それに、それ……」
「あー……着たいんなら着れば?」
「お金……払う」
「いらねぇよ」
「でも……」
「うるせーな、いいっつってんだろ」
「だって!」
「あ?」
「……ありがと」

こいつは俺が、必要以上に金を使うことをとにかく嫌がる。今日のように、愛姫が欲しがるものに金を払うと機嫌を損ねるのだ。……安月給のくせにな。
今だって納得はしていないがこれ以上うるさく言うと、俺の機嫌が悪くなるのを察して礼を言ったまで。普通の女なら喜びそうなもんだが。
本当に安上がりな女だ、お前は。

「に、似合う、かな?」
「……知らねぇよ」

何度も言わせるな。お前には似合わねぇよ。……そう分かってんのに買った俺も俺だが。

「おうち帰ったら着てみる」
「そうかよ。……で? もう気はすんだか? だったら帰るぞ」

立ち止まり振りかえると、繋いだ手にぎゅっと力が入った。
まあ……約束は約束だからな。反故にするわけにはいかねぇ、か。

「あーあ、仕方ねぇな」
「え?」
「何でも聞いてやるから全部言え。行きたいとこもしたいことも」
「……本当?」
「愛姫の日だからな」
「やったー!」
「でけぇ声出すな」

単純な奴らしく、落ちるのが早けりゃ浮上するのも早くて助かるのだが。……周りの視線と失笑が痛ぇ。

「じゃあ、じゃあ、次はね、」

嬉しいのは分かったから落ち着いて喋れ。




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