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17


こんな群集の中にいると、疲れるうえに息が詰まる。フードコートから離れて喫煙室に行ったのだが、ここにも相変わらず人間が多く、仕方なく外にまで出てきた。
外気を吸い込んで、溜め息混じりに吐き出す。
正直今すぐにでも帰りたいが、愛姫の様子だとまだまだ時間がかかりそうだ。―――望みを全部叶えてやるとは言ったが……どうにも今日は手がかかるというか、いつも以上に面倒だというか。
他に何を企んでんのか知らねぇが、今日のあいつはとにかく浮き足立っていて、つないでいる手をぶんぶんと揺らしながら歩くし、多少の浮き沈みはあるものの、楽しそうで落ち着きもない。
そういやさっき何か言ってたな。……大人計画って何だ?
あーまあ、今に始まったことじゃないけどな。よく分かんねぇことを言い出すのは。

タバコを吸い終わり、少々寄り道をして戻ってみると、あるはずの姿がなかった。……あ? どこに行きやがった。
便所にでも行ったかと、10分ほど待ってみたが戻ってきやしねぇ。かけてみた電話は留守電につながった。
くそ、勝手に動くなっつったろうが。

探しに動こうにも入れ違いになると面倒なので、連絡しろとメールを入れてとりあえず待ってみることにしたのだが。
30分たっても連絡はないし本人も帰ってこねえ。
あー、本当に俺の女は手のかかる奴だ。

初めて来たアホほど広い場所で、とにかく愛姫が行きそうな場所を片っ端から探し歩きながら、思い出した。さっきの似合わねぇショップでの愛姫。くそ、あそこか。
体を反転させて足早にそこに戻ってみると、両手に服をぶら下げ眉をひそめている姿があった。
……いやがった。

「どっちも似合わねぇよ」
「……え、あ、あれ? ハル、あれ?」
「行くぞ」

腕をとって連れて行こうとしたが、ちょっとだけ待ってと駄々をこねる。

「ハル、これ、どっちが」
「似合わねぇっつってんだろ」
「じゃああれは?」
「あー面倒くせぇ」

持っていた二着と指差したワンピース、最初に来た時に試着していたスカートやジャケットを持ってレジに向かった。

「ちょ、ちょっとハル!」
「面倒くせぇんだよ馬鹿」
「お買い上げありがとうございます」
「ボサッとしてんじゃねぇよ。行くぞほら」

商品を受け取り店を出た。




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