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年が明けて貴重な休日も残り二日。
狭い空間に押し込まれるのがたまらなく嫌で、快適に大学に通う為に無理してまで車を買った俺が 、その嫌で嫌でたまらない電車で揺られている。
先日してしまった約束、それが今日だからだ。
ただ、どこで何をしたいのかは秘密、なんだそうだ。

「お迎えはいらない」
「お前がこっち来んのか?」
「駅で待ち合わせしたいの」
「あーじゃあそっちに」
「違う! ハルも電車で来て! ください……」
「嫌。面倒くせぇし電車には乗りたくねぇ」
「だって……約束……した、でしょ……」

そうだ、あのクソガキ約束を盾に……あーくそ。
とりあえず他の望みは聞いていないが、早くも後悔している。
そうこうしているうちに到着し、改札を抜けて着いたことをメールすると、外で待ってるとの返事。

「ハル!」
「よお」
「大丈夫だった?」
「こっちの台詞だ」
「こっちの台詞だ!」
「あ?」
「楽しい」

どんなテンションだ。どんだけ嬉しそうにしてんだよ。

「にやにやしてんじゃねーよ。ほら行くぞ」
「そっちじゃないよ! こっちー!」

コートの裾を引っ張られ、進行方向を修正された。……方向音痴のくせに偉そうに。

「どこ行くんだよ」
「お買い物!」

俺の手を引きながら、ずんずんと歩く愛姫の行くままに進ませていると、向かっているのはどうやら、先月オープンしたばかりのショッピングモールらしい。
そういや一緒に行きたいっつってたな。それであの駅だったのか。

「まだ人すげぇだろ。あんま行きたくねぇな」
「愛姫の言うことは何でも……」
「あー、分かった分かった」

自分が発した言葉のせいで、俺は今日、終日振り回されることになる。




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