10
つくっていた卵粥を温め直して寝室に戻る。
「愛姫、起きれるか?」
「う……?」
もぞっと顔を出した愛姫の上半身だけ起こし、腰にクッションを当て、卵粥をトレーごとベッドに乗せる。
「熱いから気をつけろよ」
「はい。……いただきます」
鼻がつまっているせいで、少々苦しそうに息を吹きかけて冷まし、はふはふと口を動かしている。見かねて食わせてやろうかと言ってみたが、大丈夫だと。……そうは見えねぇから言ったんだが。
もともと食うのは遅いが、いつも以上に時間をかけてなんとか完食した。
「こら、何してる」
空になった食器を片付けていると、愛姫がベッドから降りた。
「ちょっと」
「風呂は駄目だっつったろ」
「違うもん」
「何だ、薬なら今から」
「おトイレ……」
「ああ……行ってこい」
もごもごと小さな声で言われ、そりゃそうだと納得をして、よたよたと歩く後ろ姿を見送る。
美味しい、ありがとうと笑みを浮かべたのを思い返し、一息ついた。
少量でも飯は食えたし、ふらつきながらも動けるようになった。油断はできないだろうが、回復は近いというところか。
愛姫に薬を飲ませて寝室に戻すと、しばらくは大人しくしていたが、そのうちぶちぶちと文句を言い始めた。つまんないだの眠くないだのとグズっている。
「いいから寝とけ」
「も、平気……だよ」
「息を切らしてか」
「だいじょ……っごほっ」
言うこと聞けよクソガキ。
「うるせーんだよ」
「むぐっ」
体温計を口に突っ込み黙らせる。
静かになった部屋に電子音が響き確認すると、表示は“38、03°”
「見ろ、結構な高熱だ」
「いじわる……」
ぼんやりと体温計を見たあと、ゆっくりと視線を俺に移し、ぼそりと言った。
……誰がだこら。
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