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08


男のくせにペチャクチャと、くだらねぇ話ばかりをするボケ主任と違い、分担した仕事をそつなくきっちりとこなす逢坂のおかげで、思っていた時間よりも早く終わった。
まあ、本来こいつが一人であげる仕事なんだが。

「お疲れさまでしたー! これで月曜の会議は余裕っすね」
「契約書にもう一度目を通しておけ。数字の確認は?」
「大丈夫です。あとは俺やっとくんで帰ってください」
「資料室に戻すだけだろ」
「だって森下待たせてんでしょ。早く帰ってやんなきゃまた泣きますよ」
「うるせー滅びろ。そんなこと気ぃ使うぐらいなら呼び出すな」
「いってぇ! いちいち暴力……ッ!」

裏拳を飛ばしてコートを羽織り、帰り支度をしながら携帯を開くと、愛姫からの着信が一件残っていた。
かけ直してみたが、寝ているのか出なかったので、一応今から帰るとメールを入れて、帰路についた。

マンションのエントランスを通り抜け腕時計を確認すると、12:47PMの表示。午後からは、あいつが喜ぶようなとこにでも連れてってやるか。
そんなことを考えながら部屋に帰った。
リビングを覗くと、床に座りソファに突っ伏している愛姫がいた。またこんなとこでこの馬鹿は……
たかが昼寝程度でも、ちゃんとベッドへ行けっつってんのに、毎度毎度こいつは言うことを聞かねぇ女だ。
とりあえず着ていたコートをかけようと近づいて、異変に気づく。息は荒く、ぐっしょりと汗をかいている。
慌てて抱き起こすと、全身が火傷しそうなほどに熱くなっていた。

「愛姫! お前……」
「あ、ハル……」

うっすらと開いた目を細め、おかえりなさいと抱きついてくる。首にかかった腕には力は入っていなかった。

「病院行くぞ」
「……! や、だ!」
「うるせぇ」
「や! お医者さん、嫌い」

息を切らしながら、嫌だと言うのをかまわず抱き上げると、ジタバタと暴れて泣き叫んだ。

「やー! やだ! や、嫌だ!」

あまりに暴れるせいで危うく落としてしまいそうになり、仕方なく降ろしてソファに寝かす。

「ふ、う、やだ……」
「お前な、熱あんだよ」
「ち、注射……」
「いくつだテメェ! ふざけんな!」

毛布にくるんで病院へと急いだ。




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あきゅろす。
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