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07


今日は昨日の資料をまとめる為に、土曜の休日出勤だ。いつもよりも早くセットしていたアラームに、腕を伸ばして音を消す。
小さく身じろぎをした愛姫の柔らかい髪が、さらりと流れて頬にかかった。傷みのない細いそれをかき分け、寝顔を覗きながら考える。嬉しいからいらないとは言っていたが一応……やり直す為に何をするか。
ああ、そういえば一番大切なことを忘れていた。プレゼントだ。……どうするかを考えていたというのに、もめてからというもの、今の今まで頭の中からすっぽりと抜け落ちていたのだ。───馬鹿か、俺は。
『イベントというのは当日にやるから価値がある』、唇を尖らせていたのを思い出し、じわりと罪悪感が増幅された。

前髪をかき分け、現れた額に唇を落とし、起こさないようにベッドからそっと足を抜く。サイドにあるタバコをくわえ、火をつけて寝室を出た。煙を吹かしながら、コーヒーを沸かしてトーストのスイッチを入れる。その間に洗顔を済ませて戻ると、目を擦りながら愛姫がドアから出てきた。

「もう起きたのか」
「……んー……お仕事?」
「逢坂のボケが偉そうに俺を駆り出すんだと」
「待っててもいい?」
「ああ、ゆっくり寝とけ。……お前も食うか?」
「ううん」

いらないと言う割に俺の前に座り、両手で頬杖をついてこっちを見ている。

「何だよ」
「え?」
「見過ぎだろ」
「だって嬉しい。いつものハルだ」
「アホか」

ぼんやりと寝ぼけた目のままのくせに、にこにこと嬉しそうに見つめてくる。まあこうして一緒に朝を迎え向かい合っているのは、確かに悪くない気分ではあるんだが。

歯を磨いて着替えていると、後ろからシャツの裾をつんつんと引っ張られ、振り返るとうつむいたまま早く帰ってきてね、ぽつりと言った。

「そうだな。とっとと終わらせて帰る」
「うん」

まだ眠そうにとろんとした目を擦りながら、微笑んだ。

「危ねぇから誰か来ても鍵開けるなよ」
「うん」
「じゃあな、行ってくる」

ベッドに連れて行き、頬に口づけて出社した。




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