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05


毛布の隙間からのぞく腕を引いてそっと抱きしめると、やっと温まってきた室内に比例せず、愛姫の体温はまだ冷えたままだった。
何年ぶりかに降ると言っていた昨夜のニュース。ホワイトクリスマスになるかもしれない、恋人達への贈り物だとかなんとか、頭の悪そうな女子アナが嘘くせぇ笑顔で言っていたのを思い出した。

「待たせて悪かった」

つむじに唇を落として呟くと、顔をあげてもう怒ってないの? と、小さな声が返ってきた。

「怒ってる」

自分自身にもな。……もっと気をまわしておくべきだった。愛姫が熱を出しでもしようものなら、もはやこれは俺の失態だ。予想の範疇内だったはずなのだ。愛姫が馬鹿だっつうことを知ってんだからな。

「ごめんなさい」
「お互いにな」
「……どうしてもハルに会いたかったの。会ってちゃんと……仲直りしたかった……」

ああ、本当にこいつは……どうしてこうも俺を揺さぶることが上手いのか。どこでどう覚えたのか知らねぇが、そういう意味では本当によくできた女だ。
今にも零れ落ちそうなほどの水膜を纏う瞳、無意識の上目づかいはまるで兵器のようだ。それも恐ろしく強力な。
……そんなもんを使われちゃ、白旗掲げて降参するしかねぇだろが。

「やり直すか? 日付変わっちっまったけどな」
「そんなのいらないもん」
「なーんだよ、まだ拗ねてんのか?」

抱きしめていた愛姫を放して顔を覗き込むと、違うと首を振った。

「今ね、あの、その……とっても嬉しいからもう充分」

だからお前はどれだけ安上がりだって話だろ。

「夜景やイルミネーション見に行くぐらいならできるぞ」
「いらない。それより……ハルと二人で、い、たい」
「そうか」

足の間に座らせて後ろから抱いて耳に口づけると、肩に巻きついている俺の腕に手がかかり、ぎゅっと力が入った。うなじに首にと唇を移動させていくと、肩をすくめて吐息とともに漏れる声が静かな空間に響く。
歯止めがきかなくなる前に止めておこうと解放すると、驚いたように振り返った。




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あきゅろす。
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