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02


前もってクリスマスの予定を決めていたとしても、俺は仕事を優先するだろう。会社としての立場上、簡単に投げ出してしまえるほどの地位に席を置いていない。偉そうにするには、それなりの責任が付きまとってくる。

完全に拗ねてしまった愛姫は、いつものように泣くんじゃなく雑誌をジッと睨みながら、声をかけても反応をしない。拗ねているというよりも、珍しくかなりご立腹のようだ。
この状況で、頬を膨らましている顔も可愛いなんて思っている俺も、どうかしているとは思うが。

「日曜ならいくらでもつきあってやるけど」
「イブがいいんだもん」
「休日なら好きなだけ時間をくれてやる」
「じゃあクリスマスがいい」
「だから無理だっつってんだろ」

溜め息混じりに絶対無理だと駄目押しすると、静かに立ち上がり目の前にまで迫られた。背伸びをして、何を思ったのか今度は椅子を持ってきて、その上に立った。

「何してんだ、降りろ危ねぇ」

心配してやってんのにわざわざフンッだ、と声に出して顔を横に向ける。
いいから降りろ、と二の腕を支えると振り払われ、大きく息を吸い込み拳を握りしめた。

「……ハルの馬鹿! 馬鹿! バカー!」

鼓膜が破れそうになるほどの声が頭上から降ってきた。

「うるせ……」

不意をつかれたとでも言うのか、反抗的な目をして引き下がらずに俺を怒鳴りつけるとは……少しばかり面食らった。
思いきり大声を出したせいか息を切らして睨みつけ、ぴょんと飛び降り、もう一度バカと叫んで寝室に走って行く。
誰に向かってそんな口をきいている。
価値があると言う日は仕事なんだよ。……しょうがねぇじゃねぇか。話聞いてんのか? 休日にはいくらでも時間を割いてやるって言ってんだろうが。

どんだけ話しかけても、頭からすっぽりと布団に潜り込み、完全シカトでいつまでも拗ねている。
この俺がこんだけ謝って、妥協案を出してやってんのにそんなにも不服か。
……もうてめぇなんか知らねーよ。勝手にしろ。




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