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「もうすぐクリスマスだ!」

待ちきれないとか楽しみだとか、そんな空気を隠しきれねぇ愛姫が、いろんな雑誌を広げては目を輝かせている。
コーヒーを飲みながら頭上から覗いてみると、お決まりのイルミネーション事情やディナーの特集、クリスマスデートにお勧めのファッションだのと、どうでもいいことで埋め尽くされていた。

「諦めろ」
「! どうして!?」
「その日な、社外で交渉事が入ってる」
「二日間? どっちも?」
「残念ながらな」

愛姫と出会うまで、そんなイベントに興味も感心もなかったのですっかり忘れていた。
今さらながら思い返してみれば、車の外ではどこもかしこもイルミネーションが飾られていた。そしてそれを見た愛姫が綺麗だと喜んでいた。
普段は無機質なビル群がどれだけ着飾ろうが、別に感激を覚えるほどの感受性はねぇし、こういうイベント事にはどうも俺は無頓着だ。さらに言ってしまえば、無駄に溢れかえるカップルが群がるような場所には、足を踏み入れたいとも思わねぇ。
いつもよりもだいぶ高い場所で夜景を見下ろして、喜ぶ顔を眺めながらディナーをするぐらいのことぐらいなら、考えたこともあったが。入ってしまった仕事は社としては重要で、簡単にキャンセルがきくようなものじゃなく、何時に終わるかも分からねぇしディナーの予約は無理だ。

が、キャーキャー騒いでいたさっきの奴とは別人のように、テンションがた落ちの様子に少々参っている……これはさすがにしくじった。

唇を尖らせている愛姫が言うには、イベントというのは当日にやるから価値があるんだそうだ。



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