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ふと目が覚めて、暖かく包まれていることに気がついた。……暖かい腕の持ち主は、幸せをくれる人。

どうしていいか分からなくて吐いてしまった嘘。おかしくなったんじゃないのかと、逃げ回ったあげくに幼稚な嘘をたくさん吐いた。
ちゃんと受け止めてくれて、宝物のように優しくしてくれた眠る前の出来事は、夢なんかじゃない。
好きだと何度も囁きながら、たくさんたくさんキスをされ、恥ずかしいのと痛いのと……口じゃ言い表せないようなあの感覚に、ハルの愛を感じた。

ずっと隠していた想いを、受け止めてくれたことが嬉しくて。
はしたないと思われたらどうしよう、嫌われてしまったら。そんなことばかりを考えていたのに、初めて聞いた愛してるの言葉。嬉しくて愛しくて、途中で羞恥も忘れてしまったあたしは、気がつけばこの腕の中にいた。

泣きすぎて重い瞼をもう一度開けると、目前には大好きな人の顔。鼻と鼻がぶつかりそうな距離にある、穏やかな寝顔にそっとキスをしてみた。……なんだかくすぐったい気持ちだ。
ここに連れてこられた時には、怖くてしかたなかったはずなのに、今は幸せで満たされてるなんて不思議。

喉が渇いていることに気がついて、お水を飲みに行こうと腕の中でもぞもぞと動くと、急に体に痛みが走った。……うそ……動けない……痛い……
くすんと鼻をすすりながら、ふとサイドテーブルを見てみると、小さな時計は午前三時を過ぎたところだった。だけどそんなことよりも目に入ったのは、その横に置いてあるミネラルウォーターのボトル。と、その下にあるメモ。手にとってライトを灯してみると、ぶっきらぼうに書かれたメッセージがあった。
ごめん、ありがとう、と。たったこれだけ。
一言だけの短いメッセージに込められたハルの気持ち。伝わる想いが心に響き、飲み込む水とともに染み渡る。
とくんとくんとくん、穏やかだけど、激しく湧き上がるハルへの好きの気持ち。泣けてくるほどに愛しくて、幸せでまた泣けた。

体の奥に残る鈍い痛みも、恥ずかしい記憶も、優しいハルの言葉も夢なんかじゃない。みんなみんな、幸せな現実だ。

あのね、ありがとう。大好き、だよ。



FIN.
→後書き&オマケ

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