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……体中にキスをして、撫でて。それに応えるように返ってくる反応が可愛く、その声に酔いしれた。
白く柔らかい肌には汗が滲み、繰り返される抽出に漏れる苦痛の呻き。痛みに歪んだ顔や、しがみついてきた時に食い込む爪。───痛いと顔を背けた時でさえ、どうにもならない愛しさに高揚した。
薄暗い中で感じる体温は熱く、自分が愛姫の中にいるという快感に溺れた。

欲しくてたまらなかったものがあった。
手に入れてしまえば、どこかが変わってしまうかもしれない二人の雰囲気や、大切なものを壊してしまうんじゃないかと思い、何度も踏み留まってきたこと。勝手な理由で傷つけたこともあった。
……満たされても満たされない想いの中で、待ち焦がれたお前の体。
快感を抱く俺とは違い、不公平な痛みを負いながら、必死で耐える姿にまた溺れていく意識。

白くフィルターがかかったようにぼやけた脳内、溶けていく思考の中で、僅かに開いた瞳と俺の視線が絡み合った時、今まで見てきたどの表情よりも綺麗に微笑んで、声にならない声で赤い唇が幸せだと描いた。
雷に打たれたように衝撃が走り、愛姫の中にある下半身が、ずくん、と反応し、愛しい女は体が揺れた。
心の底から湧き出るような激情が、崩れゆく意識の中に浮かぶ。
愛しているなんてことを口に出すことは、本当に俺らしくもないことだが、後悔せずにすんだ。
泣き叫びながら俺を受け入れてくれたことも、それを幸せだと感じてくれていることも、嬉しい事実だ。

ありがとう、嬉しい、ごめんな……どれを伝えたらいいのか、迷いながらキスをして、出ない言葉の代わりに抱きしめた。

果てた先の心地良い疲労感に浸りながら、愛姫の髪を梳く。隣で静かに寝息をたてる様子を見ながら、何かが充足されていくような気分だ。

欲しくてたまらないものをやっと手に入れた。
壊れやすく汚れない心を持った、お前への破壊欲に駆られて苦悩に嘆いた日々。そんな日常さえも愛しく思えてくる。
信じて体を開いてくれた愛姫を、行為を終えた今、ほんの数時間前よりも……ずっとずっと愛している。




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