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これ以上ないほど抱きしめて、苦しいと訴えられても、その力を緩めることすらできなかった。

「何だよ、早く言えよ馬鹿。何なんだよお前……」

好きな女にここまで言われて、平気なわけがない。

「愛姫……好きだ」

焼けつくように喉の奥に熱を感じる。ありったけの想いを、苦労して声にのせた。
何度も何度も口づけたが足りず、舌を入れて中の熱さまで味わう。途端、愛姫の体からみるみる力が抜けていき、ガクンと下がる首と腰を支え、角度を変えてはまた口づけた。
唇の端から透明なものが流れ出し、白い首筋にまで落ちた。引き寄せられるように吸いつくと、わずかに震えた愛姫からは、吐息と声が混ざり合うように漏れた。

「……やっぱ今日は帰せねぇ……」

脱力しきった姿。乱れた息と、覚えのない表情が視界に入ってきた瞬間、渇いた喉はさらに熱くなり、焦燥感に襲われた。

「愛姫……」

力なく伸びてきた右手が、差し出した俺の手にゆっくりと添えられた。引き上げて耳元に口を寄せる。

「ごめん……」
「……ふ、あ……」

吹きかかる息に反応して漏れた声には、いつもとは違う艶が混じっている。

「好きだ……」

ゆっくりとベッドに下ろし、仰向けにそっと寝かせた。顔の両側に腕をついて視線を絡ませる。
泣き崩れた顔は決して綺麗だとは言えねぇが、それでもたまらなく可愛いと思ってしまうのは……愛姫の想いを知ってしまったからだろうか。

───これからしようとしていることの意味を、お前はどれだけ知っているのか……きっとまた泣くんだろう。それでも俺は信じている。
今お前の望むものがそこにある───




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