04 「よお」 「あ……え……? ハル……?」 「何だよ」 「本物?」 「あ?」 どんだけ驚いてんのか知らねぇけどな、いくら何でもそうくるとは思わなかったぞ。 「だって、だってまだ……きゃっ!」 顔がわずかに見える程度にしか開けていないドアを、強引に開いて愛姫の肩をトンと押して中に入った。 「嬉しくねぇのかよ?」 立ち尽くしている愛姫に目線を合わせる為、腰を落として問いかける。 「嬉しい! おかえりなさい!」 「おう、ただいま」 でっけぇ目にはあっという間に水膜が張り、予想通りにすぐに涙は溢れた。 「だったら泣くな」 手を伸ばして涙を拭った時だ。 ……これは予想外だった。 「やっ!」 ……は? 触れたと同時に振り払われたのだ。 「あ……ち、違うの! 嫌、じゃなくて……」 「……」 「う、う、嬉しいけど! ででででも! 触っちゃだめ!」 真っ赤になった頬に両手を当てて、部屋の中へと走って行った。……何だ? あれ。触っちゃだめ? どういうことだ。 後を追って進んで行くと、目に飛び込んできたのは、ガタガタと震えている姿。 ……な、に? 「愛姫」 「あ……」 膝を抱えて埋められた顔が上がった時、我目を疑った。……何だその顔色と目は。 震える体と涙を浮かべて俺を見るその瞳は、どう見ても怯えからくるものとは違っていた。 「おい」 腕をとって立たせようとすると、面白いほど全身が跳ねた。 「ハル……」 「何だよ?」 「ハル……お願い……」 「何がだ」 「お願、いだから……さ、さ、さ、触らないで!」 立ち上がって俺の手から腕を抜き、後退りながら叫んだ。汗をだらだらと流しながら。 *←→# |