02
今離れるのは嫌だと言う。
「どうした」
「……何でもない」
───今度は何を不安がっているのか。
方膝をつき目線を下げる。
「何かあったのか?」
「ううん……」
しばらく待ってみたが理由は聞けなかった。
「……一緒に食いに行くか」
「……! うん!」
「この時間に行くんだからな、いいもん食えると思うなよ」
結局ファミレスに行き、機嫌がなおった愛姫をよそにサラダに箸を伸ばす。
「ふふ、ハルとファミレス」
「あー?」
「似合わない」
「文句あんのか」
「んーん、楽しい」
美味くもないオムライスごときでか。
「ふ、安上がりな奴」
「だめなこと……?」
「いや、気にしなくていい」
何か特別なことをしたわけでも言ったわけでもなく、安い食事をしただけでやけに浮かれていたのが、おかしかったと言えばそうかもしれねぇ。
と思う反面、些細なことで喜ぶのが愛姫という女だというのも、それはそういうもんだと納得したりもして。
むしろ家での態度の方がやはり変だったか。
ドリンクバーの為、自分でつくったアップルティーに、息を吹きかけ冷ましている姿はいつもの光景そのままだ。
「ハルがいれてくれた方が美味しい」
「当然」
こんな会話をしながら、確か一時間ぐらいで店を出た。
それから少しドライブをして、家に送り届けた時には満足そうな顔をしていたせいで、聞きそびれた。
明らかに様子はおかしかったというのに。
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