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大好きな人と歩く。
大きな歩幅の彼が、そうではないあたしに合わせ、いつもよりもゆっくり進んでくれてることが嬉しい。
隣じゃなく、わずかに遅れて背中を見て歩いていることに気づいて舌打ちをひとつ、振り向いて差し出される手。不機嫌な表情とは裏腹に、繋がった手から伝わる優しさが嬉しい。
いつも車道側に彼がいてくれていることも。
お喋りなあたしが話すくだらない日常を、そんなに笑いはしないけど、いつもは鋭い目を、細めながら聞いてくれることが嬉しい。
恋人の部屋に帰りつき、そっと包んでくれる腕や優しく触れる唇とか。彼が与えてくれるどれもが、本当に幸せ。
なのにどうしてだろう、どんどん欲張りになっている。
眠れる耳に
そそぐ嘘
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