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鼻先にあるつむじにそっと口づけた。
頬をすりよせて、くすぐったいと笑う姿が愛しい。
好きだ、好きだ、好きだ。
激流のように流れ出す想いのまま、顔を上げさせて親指を下唇にかける。軽く開いたそこに唇を重ねた。
……と、
「ちょっとあんた! もう15分過ぎてるんだけど!」
───チッ、愛姫がやっと落ち着いておとなしく体を預けてんだよ。
「ちょっとぐらい待てねぇのか」
怒鳴り込んできたみどりという女は、視線を送るまでもなく目の前に立っていた。
……こんなとこ見たら普通は遠慮すんだろが。
「今いいとこなんだよ」
「約束は5分! ここはあたしの部屋!」
「みどり! お前はもうちょっと耐えるってことを覚えろ!」
玄関から顔を覗かせる高橋は遠慮したらしく、そこから先は入ってこねぇようだ。
「うるさい! ……愛姫?」
俺の腕を押し退けて愛姫の顔を覗き込む。
「……あらら」
泣き疲れたのか、寝息をたてている。
腰を下ろして愛姫の目元を拭い、髪を撫でたあと、女の目線が上を向いた。
「愛姫は大事な大事な友達なの。どんな理由があっても二度とこんな風に泣かせないで」
「……泣かせねぇ約束はできねぇが覚えてはおく」
「偉そうな男」
「だよなー! 森下何でこんな男選んでんだ」
「うるせぇ。偉そうじゃなく偉いんだよ」
人のことを好き勝手に言い合っている二人を後目に、そっと愛姫を寝かした。
「そこの女」
「みどりって名前あるんだけど」
「迷惑かけたな。あと頼んだ」
「「は?」」
「目ぇ覚めるまで一緒にいてやって」
起こさないように頬に口づけて立ち上がる。
「連れて帰んねぇの?」
「そうよ! それは彼氏の役目でしょうが」
「……おい」
いい大人二人に足にすがりつかれるって、いったいどういう状況だ。
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