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膝立ちになって抱きついてきた愛姫を受け止めて、やっと返ってきた弱い力と体温を確認するように抱きしめた。

「うわあぁぁぁあー……は、ハル……ハル……だい、すき……」
「知ってる」

すきすきだいすきと、いつもは恥ずかしがるばかりで、追いつめてやっと聞き出すような言葉を、さっきとは違う涙を流しながら次々に紡ぎ出す唇を塞いだ。
両手を頬に当て、目元の雫を吸いとって、頬に、額に、また唇にキスを落とす。
唇を離してみると、いつもとは違いジッと見据えていて、思わず息を飲んだ。

「好き……?」
「ああ」
「本当?」
「ああ」
「たくさん?」
「ああ」
「……ハル……ふぇ……好き……?」
「ああ」

愛姫がぶつける大好きと言う単語だけは、どれだけ必死になってみても口に出すことはできやしないが……その分は、抱く腕と髪を撫でる指に気持ちを入れた。

「忘れねぇようにもう一度言っておく」
「……?」
「これから先、お前がどれだけ嫌がろうが、そんなこと俺は知らねぇ」
「……え……?」
「お前だけは手放してやるつもりなんかねぇんだよ」
「あ……」
「ご愁傷様」

ざまーみろと笑うと、愛姫は真っ赤な目を細めた。

───可愛い、可愛い、どうしようもなく……ただ愛しい───

喉まで上がってきているそんな想いを言葉にのせて伝える。そんなことはやっぱりできそうにないが、それでも。

「お前は俺を信じてればいいから」
「……はい」

小さなすれ違いや、同じようなことがこれから先も起こるんだろうが、それでも。

「お前は俺を好きなままでいればいいんだよ」

それだけ、と言ってしまうにはあまりにもでかいことかもしれないが。

もう一度伸びた腕が俺の首にかかり、良かった嬉しいを繰り返す。
うなじから背中のラインに手を滑らせて、心地よく響いてくる愛姫の心音が、安心感をくれた。




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