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22


「愛姫……」
「……ふ、は、離して……っく……やだぁ……」
「お前……なんか誤解してんだろ」
「だって、ハル……一緒に……い、いたくないって……」

──やっぱり。
何度となく言葉を詰まらせながら、発せられる声は小さく……震えている。

「そんなわけねぇだろ」
「……ふ、う、ふぇ……うそつ、き……」

抱く腕に少し力を入れると、いっそう泣きに拍車がかかったようで、濡れた服から伝わる熱いものがどんどん広がっていくのが分かる。

「もう……わがまま……言わな、い、から……き、嫌いに……ならないで……」
「そうなれたら……俺も楽なんだろうな」

もしも本当に嫌いになれたり、こいつに向ける気持ちが少しでも違うものだったなら、こんなに悩むことさえなかったのに。
ここにいるお前が、こんなにも望んでしまう相手じゃなかったら……

───どれだけ楽になれるのだろう───

「お前のことばっか考えてんのに……嫌いになれるわけねぇだろ」
「……」
「やっと俺の顔見たな」
「……う、そ……」
「……」

やっと顔を上げたと思ったら、またすぐにうつ向き離れようと暴れ始めた。

「やだ! ハルのうそつき!」
「愛姫! 聞け!」

俺の胸を叩く愛姫の両腕を掴み、怒鳴るように言うと、びくりと体を揺らしておとなしくなった。
固く閉じられているにも関わらず、涙はぼたぼたと落ちている。

「約束したろ? 手放さねぇって」
「……あ……じゃ……じゃあ……」
「覚悟しとけって言ったろ。もう忘れたのかよ?」

何を言っているのかを理解するのに時間がかかったようで、数秒遅れでブンブンと振られた首。

「好きだよ」

好きだと言葉にしたと同時に力が抜けた愛姫の腕を解放すると、それはそのまま俺の首筋に伸びた。




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