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座ってはいるが力なく両腕を投げ出して上を向き、声をあげてわんわん泣き続けている様子は、まるで小さな子供のようだ。
ゆっくりと近づき後ろから抱きしめると、よほど驚いたのか体を揺らし、泣き声も止まった。

「なに一人で泣いてんだよ」
「……は……る……ど、して……」

声をかけるとゆっくりとこっちを見て、目が合ったとたんに涙が溢れた。
熱を帯び赤くなっている頬と鼻。腫れているせいで一重になり、いつもの半分ほどしかない目が、どれだけ泣いていたかを映し出していた。

「ちょっとあんた! 何勝手に人の……え……?」

ドタドタと足音を響かせて、怒鳴りながら戻ってきたみどりという女が、愛姫を抱きしめる俺を見て足を止めた。

「……! 愛姫に何してんのよ!」
「待てみどり!」
「何よ! 離せ!」
「あ−、噂の彼氏だよ。これ」
「え……じゃあ……」

背後から聞こえてくる声にため息を吐いていると、愛姫がするりと腕の中から抜け出して、走り出そうとしたところを腕を掴んで止める。

「逃がすわけねぇだろ」
「は、は離してー! やだー!」
「座れ」
「やだ! やだー!」
「……愛姫」

暴れる愛姫の名前を呼び、軽く睨むと怯えたように肩を竦めておとなしくなり、すとんとその場に腰を落とした。

「高橋」
「なに?」
「ちょっと外せ」
「……分かった」
「そっちのあんたも」
「嫌よ。何で? ここあたしの部屋」
「5分でいい」
「……それ以上泣かしたら許さないから」
「覚えておく」

二人が出て行き、足音が消えたのを確認して愛姫を見ると、抱えた膝に顔を埋めて泣き続けている。
腕をとり引き寄せてそのまま抱きしめる。




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あきゅろす。
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