19 あんなホテルじゃ洗濯できたのは下着だけで、出社したままの格好の為、着替えを買いにとりあえず入ったデパートで物色していた途中にメールが入り、愛姫の家の番号が分かった。 当然すぐにかけてみたが、やはりというか。 何度かけても留守電につながるばかりだ。 くそ、いい加減本気で腹がたってきた。土地勘のない場所では探しようもねぇ。 手当たり次第に探したところで時間の無駄だ。 あいつの言う通りいっそ帰ってしまうかと、支払いをすませてパーキングへと向かう。途中に見つけたカフェに入った。 ……そういえば昨日の昼以降、何も食ってねぇ。アイスコーヒーとパスタを注文したあと、タバコに火をつけて一息ついていると、後ろから肩を捕まれた。 「おい!」 こんな知り合いもいねぇ場所で、誰かと思えば高橋だった。 「あ?……何してんだお前」 「俺にあんなこと言ったアンタが何泣かしてんだ!」 「会ったのか? あいつ今どこにいる?」 「……みどりの家で泣きじゃくってる」 ああ、昨日の酔いつぶれてた奴か。 「おい、そこ連れてけ」 「は? 無理だから」 「だったら調べて勝手に行くまでだ」 「は? あ、オイ! それ俺の!」 胸ポケットに入っていた携帯を抜き取りアドレス帳を開くと、惚れているというだけあって、探すまでもなく一番最初に名前はあった。 「これか」 「勝手に見てんじゃねぇぞコラ!」 慌てて俺の手から奪い返し、今度はしっかりと持っていた鞄の中に携帯を入れた。 「ご丁寧に住所も入れててくれて助かったよ」 「最低だな。こんなこと許されっと思ってんのか!」 「さあ?」 腹ごしらえなんかしてる場合じゃねぇだろ。 *←→# |