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13


引き寄せて腕の中に収まった愛姫の温もりを確認したあと、何度も口づけた。
客待ちタクシー、暖簾を下げる居酒屋のオッサンや酔っ払いども、こんな時間とはいえまだ人がいることとか、ここが公道であることとか……そんなことも気にならなかった。

何度も口づけて、苦しさから小さく開かれたその唇に舌を絡めて柔らかいものを追いかける。吐息まじりの声が聞こえて、ますます夢中になり、気がついた時には愛姫の閉じられた瞼の端には雫が光っていた。
口を離すと透明な糸がスッと伸びてぷちんと切れたと同時に、愛姫は崩れるように力が抜けて、俺の胸に倒れこんできた。

「……大丈夫か?」

抱き止めて声をかけると小さく首をふり、全速力で走ったあとのように息をきらしている。

「立てない……どうして……?」

───腰砕け……それが理解できない愛姫を相手にやり過ぎたか……

腕時計を見ると四時を過ぎていて、さすがに帰さなくてはいけないが、この状態では歩くことも無理だろう。
抱き抱えようと膝の裏に手を移動させると、驚いたのかしがみついてきた。

「きゃ……ちょ! ハル! 何?」
「歩けねぇだろ」

そのまま抱き抱えると、ジタバタと力なく暴れて声をあげた。

「だめー! 重いから無理だよ! やだー! おろしておろして!」
「うるせぇな! 暴れんな! 落とすぞコラ」
「やだ!」

余裕……とまではいかずともお前一人ぐらい運べんだよ。つーか何度もやってんだけどな、寝ている間のことで覚えてないのか。

車の前でおろすと、腕にしがみつくようにくっついてきた。

「なに」
「……なんでもない……」

離された手が宙をさまよい、どうにも不安定で虚ろな瞳が気にかかる。どうしたんだ──?




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あきゅろす。
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